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リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


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プロローグ

 ここはフォルマ大陸の最北端、スカロード国のさらに北。人々が “迷いの森” と恐れるササロの森を抜け、なおも奥へ奥へと進んだ先。


 そこに息づくのが《リィーネの森》である。リィーネの森は、一つの森に四つの季節を封じ込めた、世界でただひとつの場所。


 リィーネ森の北の森には冬。

 西の森には春。

 東の森には秋。

 そして南の森には夏。


 この森で育つ草は決して枯れず、花は散ることを忘れ、それぞれの森が一年を通して変わらぬ、瑞々しい季節の色をまとっている。


 外界の理から外れたこの森は、永遠の季節を抱いたまま、薬にも毒にもなる稀少な草花を絶やすことなく咲かせ続けていた。


 この不思議な森を治めるのは、燃えるような赤髪と、漆黒の瞳を持つ大魔女リシャン。

 そして、その傍らには長い年月を共にしてきたフェンリルで、使い魔のキョンがいる。


 古きより、魔女は森と共に生き、森と共に老いる、そう語り継がれてきた。


 だが、《リィーネの森》だけは違う。

 ここは、選ばれし魔女だけが“持つ”ことを許された、世界にただひとつの森。


 そして私は、その森の魔女リシャンに仕える弟子。ボワボワの茶色い天パにそばかす、緑の瞳にまんまる眼鏡がトレードマークの、まだ若い魔女のシャーリーである。

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