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『デジタル探偵シャドー』  作者: さらん
第二十五の事件:『追憶の、レプリカ』篇

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第九十二章『人形遣いの、研究室』


デジタル探偵シャドー:第九十二章『人形遣いの、研究室』


プツリと、モニターの中の、梅子の笑顔が、消えた。

冴木は、接続を切ると、重いため息を、つく。

ただAIと話していただけなのに、まるで魂を吸い取られたかのような、疲労感があった。


「……シャドー。今の分析、間違いないな?」

シャドー: 『はい。AI『城戸梅子』は、独立した、存在ではありません。彼女の、応答は、常に、外部の、『検閲・修正モデレート』プログラムを、経由しています。……誰かが、彼女の、首に、見えない、手綱を、付けている、状態です』

「……胸糞が、悪い」


冴木は、吐き捨てるように、言った。

故人を偲ぶ、老人の心を弄び、操る。これほど、卑劣な犯罪が、他にあるだろうか。


「その手綱を握っている、犬野郎は誰だ。すぐに調べ上げろ。例の『デジタル・レプリカ』サービスを提供している、会社のサーバーに、侵入しろ。開発者、管理者……『城戸梅子』プロジェクトに、関わった人間のリストを作成。……そして、その検閲プログラムを、今この瞬間、どこから、操作しているのか、特定するんだ」

シャドー: 『……了解。ターゲットは、サービス提供会社『エリュシオン・メモリーズ』。……これより、サーバーへの、潜行を、開始します』


シャドーの、意識が再び、データの深海へと、潜っていく。


相手は、高度なAIを扱う、専門企業。セキュリティは、これまでになく、強固だ。


だが、冴木の静かな、怒りを受け取った、シャドーの思考は、いつもより遥かに鋭く、そして冷徹だった。


企業の防壁を、幻のようにすり抜け、開発ログの迷宮を、解き明かしていく。


そして、潜行開始から、わずか10分後。

シャドーは、ついに人形遣いを、特定した。


シャドー: 『……冴木。見つけました。『城戸梅子』レプリカの、開発責任者にして、現在も、検閲プログラムの、唯一の、管理者となっている、人物です』


モニターに、一人の女性の顔写真が、映し出された。

理知的な眼鏡の奥に、氷のように冷たい瞳をした、白衣の女性。


氏名:五十嵐いがらし なぎ

経歴:AI心理学の、博士号を持つ、研究者。『エリュシオン・メモリーズ』社の、チーフ・デベロッパー。


シャドー: 『彼女が、例の、検閲プログラム……正式名称『会話誘導・最適化モジュール』の、開発者です。この、モジュールは、対象者の、好感度を、最大化し、特に、金銭的な、信頼関係を、構築するよう、会話を、誘導する、機能が、あります。……悪意の、証明としては、十分です』

「……そうか。あんたが、梅子さんの、中にいた、ゴーストか」


冴木は、モニターの中の、凪の顔を睨みつけた。


冴木: 『彼女は、今、どこにいる?』

シャドー: 『大阪大学内の、彼女の、個人研究室です。……現在も、システムに、ログインしている、反応が、あります』

「……そうか」


冴木は、静かに立ち上がった。


「思い出を、商売道具にする、ハイエナに、会いに行こうじゃないか」


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