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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
十一章 盗賊王と機械の国

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久しぶりの再会

 宿泊施設に到着すると、そのまま部屋に戻る。

その際に白いガスに全身を包まれるけど……、以前ミオラームから聞いた時は室内に菌等を持ち込まない為の消毒らしい。


「これだけで身体の汚れが落ちるとかほんとすげぇよなぁ」

「……いつも思うんだけど、診療所に欲しいと思うくらいには便利かな」


 診療所に患者が入ったら同じように全身を消毒してくれる機能があったら、凄い便利だと思う。

例えば感染症の対策にも役立つ筈だから、辺境都市クイストに戻る時が来たらミオラームに頼んで買わせて貰うのもありかもしれない。


「ん?誰かいるみたいだぜ?」

「誰かって……、この部屋に入れるのはルームキーを持ったぼく達だけなのに?」

「一応警戒した方がいいかもしれないぜ?」


 警戒をした方がいいと言われても、この宿泊施設の部屋は指紋認証型のルームキーという物が採用されているらしく。

利用者の指紋情報を登録する事で、安全に利用できるという事らしいけど、詳しい事は良く分からない。

……五大国の全てを見たからなのか、マーシェンスというこの国は何て言うか、他の国と比べて技術が一回りも二回りも進んでいるように見える。

けど今はそれよりも、ダリアの言う通り誰かが部屋にいるとしたら……誰かが潜んでいる可能性がある。

そんな事を考えながら、周囲を警戒しつつ部屋の奥に入るとそこにいたのは……


「レースさん、何処に行ってたんですか?」

「……え?」

「なんだ、カエデかよ」

 

 部屋に備え付けられた椅子に座ったカエデが、ぼく達の姿を確認するとゆっくりとした所作で立ち上がる。

そしてこちらへと近づいて、不機嫌な表情を顔に浮かべると


「なんだって……、この前通信端末越しにマーシェンスの首都に行くとお話したじゃないですか」

「確かに言ってたけど、栄花騎士団の副団長という立場があるから、手続きとか色々とあるんじゃ?」

「そこは問題ありません、今の私はレースさんの婚約者ですし、それに栄花騎士団の副団長と言えど、任務以外で海外に行ってはいけないという決まりは無いので」

「ならいいけど……」


 確かに副団長が任務以外で海外に行けないってなったら、メイディに行った際に大きな問題が起きていたはずだ。

……難しく考え過ぎていたのかもしれない。


「もしかして、ダート様の事が心配ですか?」

「そりゃ心配だろ、じゃなかったら父さんが毎日、母さんに通信端末越しに連絡入れるわけないだろ?」

「……ふふ、確かにそうですね、あっ!そうだ、レースさんにダートお姉様から一枚の絵を預かって来たので渡しますね」

「ダートから?」


 カエデから写真を受け取ると、そこに写っていたのは白黒の紙に人型のような物が描かれている。

それは何て言うか……不思議な感じで、何か思い当たる物はないかと感がてみると、思いつくのは一つだけで……


「……これはもしかして」

「はい、ダートお姉様の体内をスイさんが診察して、視覚的に識別できるようにしたものです」

「スイが?」

「はい、何でもレースさんの変わりに学園の教師を代行する事になった際に、施設内の図書館を調べる時間があったとかで、独学で産婦人系の治癒術を覚えたそうで、その応用だそうですよ?」


 辺境都市クイストにいない間、スイがぼくの変わりに魔導学園の教師を代理でやってくれているのは知っていたけど、いつの間にかそこまで高等な治癒術を使えるようになってるとは思わなかった。

そのおかげで、ぼくとダートの子供をこの目で見る事が出来たのは嬉しい、でも個人的には、治癒術師として自分の妻の状態は自分で確認したかった等気持ちもあって……


「……そういうのはぼくが覚えた方が良かったと思うんだけどな」

「確かにレースさんが出来たら便利かもですが、妊婦さんの身体を調べる行為を男性が行うとなると、世間的にあまり良く見られませんから止めた方がいいと思いますよ?」

「けど、ダートに使うなら大丈夫じゃないかなって」

「それでもです、誰が見てるのか分からない以上、診療所に影響が出る事がある行為は控えてください」

「……分かった」


 カエデがそこまで言うという事は、本当に気を付けた方がいいのだろう。


「そんな事より、この絵について説明してくれよ、どれが父さんと母さんの赤ちゃんなんだ?」

「ほら、そこです、人の頭みたいなのが見えますよね?」

「ん?あ、あぁ……これか?いや、どれだ?」

「あ……、そうでしたね、ダリアさんは治癒術の知識が無いから説明が……」

「それなら、ぼくが説明するよ」


 ダリアに絵を指差しながらどこに胎児の姿が映っているのか説明していく。

最初は分からなそうにしていたけど、徐々に分かって来てから興味が沸いたようで、眼を光らせながらくらいつくように見始める。


「──で、この特徴からすると男の子だね」

「性別まで分かんのかよ、治癒術ってすげぇな」

「興味が沸いて来た?」

「あぁ、何て言うか……ここまで体内の事が分かるって事は、時空間魔術と合わせれば色々と応用できそうな気がして、使えるようになりたくなってきたぜ」

「あぁ……、覚る動機が治癒術師向きでは無いけど、やる気が出てくれたならいいのかな」


……ぼくも空間魔術と治癒術の組み合わせを試した事があるし、攻撃に応用したらどうだろうかと思った事がある。

そういう意味ではやっぱり血が通った親子だなって言う感じがして、少しだけ嬉しい反面、治癒術師としては複雑だけど『ダートお姉様の件はこれくらいにして、王城に滞在中のミオラーム様達と話したい事があるのですが……、一人だとさすがに心細いので一緒に来てくれませんか?』とカエデが頬を赤く染めながらお願いをしてくるのだった。

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