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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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眼が覚めて見える景色

 いったいどれ程の時間眠っていただろうか、そしてここは何処なのだろうか……。

覚めていく意識の中でそんな事を考えながら眼を開けて映る風景は、窓から見える茜色の空に、武骨な金属の壁。


「……ここは?」


 ベッドから身体を起こして周囲を確認してみると、見た事が無い機械が沢山部屋にあって、壁についている魔導具からは何かが回転するような音と共に、不思議と冷たい空気が入ってきている。

これはもしかして、マーシェンスにあるという空調機器というものだろうか。

聞いた範囲でしか知らないけれど、ぼくが住んでいる南西の大国【魔導国家メセリー】の隣国である南東の大国【蒸気機国マーシェンス】、以前ミオラームから聞いた事があるけれど、機械が発展したかわりに自然が破壊されてしまった結果……日中は熱く、夜は寒い。

そんな人が住むには少しばかり不便な環境になってしまった国らしいけれど、その変わり室内には自動で温度を調整してくれる魔導具と、空気を正常に保ってくれる空調機器があるそうだ。


「……ん?あぁ、父さんやっと起きたのかよ」

「え?あ、……あぁ、ダリ、ア?」


 部屋の扉が開くとダリアが入って来る。

その手には、金属製の食器にパンとスープ、そして肉と野菜がバランスよく乗っていて……


「お?もしかしてまだ寝ぼけてんのか?」

「……ぼくは、いったいどれくらい寝ていたの?」

「あぁ、大体一週間くらいだな」

「一週間も?」

「そう、一週間もだ……あの戦いの後いきなり父さんが倒れて意識を失って倒れたからびっくりしたんだぜ?」


 あの出来事から……そんなに時間が経っていたという事に、思わずどう反応すればいいのか分からなくなってしまう。

だって意識を失っている間の事を考えると心配になる事が多くて……、ダートはぼくが帰って来なくて心配してはいないだろうか。

そこから精神面が不安定になってしまい、胎児に影響が出たりしたりしないか……もし影響が出ていた場合、母子共に危険な状態になる可能性上がる。

現状を把握するべきだと分かってはいても、今すぐにでも彼女の元に戻りたいという衝動に駆られて……、勿論それ以外にも生徒のエスペランサやスパルナがどうなったのか、グロウフェレスとミオラームは無事なのか、同僚であるキューやセイランは?敵対したとはいえ、ロドリゲスの安否は?、色々と気になる事ばかりで落ち着かないけど……


「……何ていうかごめん」


 今はぼくの事を心配して顔を覗き込むようにこちらを見ている、ダリアに対して返事をする方が先だろう。 


「ごめんじゃねぇよったくよぉ、……で?調子の方は大丈夫か?ほら、マスカレイドから【黎明】を受け継いだんだろ?」

「大丈夫……だと思うけ……ど?」

「ん?どうした?」

「いや、これは……」


 何かマスカレイドから受け継いだもので使える者が無いかと意識をしてみると、視界に文字が見え始める。


名前:ダリア

性別:女性

心器:有

属性:時空間(闇)

特性:切継(切って継ぎ固定する)

能力値

肉体強化  7

魔術適正  9

治癒術適正 6


力5 魔力10 体力7 敏捷9 器用7 賢さ8


 もしかしてこれは、カエデの使っていた鑑定の魔術を同じものだろうか……、そう思って自分の情報を出す事が出来ないか考えながら意識を集中してみる。

すると見えて来たのは……


名前:レース・フィリス

性別:男性

心器:有

属性:雪(闇、分類火、水、風の複合属性)

特性:固定 液体を任意の位置に固定する事が出来る

   黎明 情報の強制開示、技術及び術を新たに生み出す際に思考が加速

   継承(闘神ディザスティア、智神セラフナハシュ)

能力値

肉体強化  3→8

魔術適正  8→9(10+)

治癒術適正 8→9(10+)


力4→9 魔力8→9 体力6 敏捷4→6 器用5→7(10+) 賢さ9(10+)


 矢印がある方向にある数字が、ディザスティアの力の残滓とセラフナハシュから渡された力の一部によって変化した値だろうか。

それに()の中にある10+が何か分からない……それに……


「父さん、本当にどうしたんだよ……顔色が悪いぞ?」

「え?あ……」

「父さん?」

「あた、まが……い……たい」

「おい、大丈夫かよ!しんどいならまだ寝てろ!」


 急に恐ろしい量の情報が頭の中に入って来たからだろうか。

頭の中から金づちで殴られているような、そんな言葉に出来ない程の痛みに襲われる。

咄嗟に治癒術を使って治療を行おうとするけれど、上手く魔力を扱う事が出来ない。

いったいぼくはどうなってしまったのだろう、身体もまるで自分の物ではないみたいで違和感に襲われて、ぼくがぼくであって、ぼくじゃない、そんな不快感が心を襲う。

まるで気を抜いたら封じられている神の力に飲み込まれそうな気がして……


「これは、やべぇな……、ちょっと横になって安静にしてろ!ソフィアを呼んでくるから!」


……ダリアはそう言うと、金属製の食器をテーブルの上に置いて部屋を飛び出して行く。

そして誰も居なくなると……急に孤独感に襲われてしまう。

この苦しい気持ちは何時まで続くのだろうかと思い不安になっていると、暫くして『レースさん、大丈夫ですか!?』とソフィアと共に『……器になって直ぐは苦しいですもの、しょうがないですわよソフィア様』とミオラームが入って来るのだった。

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