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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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私達の子だから

 床に落ちた指輪に魔力の光が灯りて宙に浮く。

そして一つの円を描くと、中央に鏡が表れたかと思うと……


「……もしかしてまた、セラフナハシュを呼び出すの?」

「今は無理ですね……、少なからず次に呼べるとしたら私の孫世代くらいかだから「それならソフィアちゃんは早く旦那さんを見つけないと……、国が成り立たなくなるわよ?」


 ならあの鏡は次は何を呼び出すのだろうか。

セラフナハシュの力を借りれない以上、この状況を解決する方法を考えては見るけど……ダリアが持っている心器の能力だと、時空間魔術や心器の能力【空間魔術、呪剣】ではマスカレイドに対して決定だが無い。

前者は心器を所持している間、空間魔術の適正が無くても使えるようになるという強力なものだけど、彼女は元から使えるから実質的に能力が無いのと同じで、後者は切りつけた相手を呪う事で、自身の意思に反して自傷を行ってしまうという強力な力だ。

けど……人の身体を捨てた彼に武器で傷をつけること自体が難しい以上、サポートに徹して貰うしかないだろう。

なら他には、母さんの切り札である【魔導砲】だけど……衰弱している状態で何度も使わせるのはリスクが高すぎる。


「……でもですね、私の理想に合う人がいないのが原因で」

「理想が高すぎて行き遅れるのは恥ずかしいから止めた方がいいんじゃない?」

「話をするのはいいけど早くしてくれない?」


 取り込んだ魔導具や機械を素材に、数えきれない程の肉食獣や小型の鳥の形をした兵器を生み出すと雪崩れのように迫って来る。

……心器を顕現する事無くどうやって、魔科学で生みだされた兵器を生成しているのか少しだけ気になったけれど、メイディでの出来事を思い出して納得が行く。

心器と一体化する事で能力を発動しているのかもしれないけど、何処にあるのだろうか。

マスカレイドを見ても何処にも大筒らしき物が見えない……一応胸に穴が開いてるけど、そこに隠しているとは思えないし可能性は低いだろう。


「大量の魔力を使わなければいけないので、少しだけ時間を稼いで貰えませんか?」「あの物量相手に時間を稼げとかまじかよっ!無理があるぞ!?」

「ダリアちゃんが無理でも、レースちゃんなら大丈夫よ……今のあなたなら怪力の出力を最大にしても耐えられる筈だし、心器の能力で使ってないものがあるでしょ?それを使って見なさい」


 長杖の【空間移動】と大剣の【守護者】、使ったらシャルネに居場所を知られてしまう危険性がある能力と、他の能力が便利だから使って来なかったもの。

これらを使ったらどうなるか分からないけど、母さんの言うように怪力と合わせる事でこの状況を解決する事が出来るのならやる価値はあるだろう。


「……やってみるけど、本当にあの物量に対応できると思う?」

「出来るわ、だってあなたはメセリーで賢者の称号を得た、【叡智】カルディア・フィリスと【黎明】マスカレイド・ハルサーが育てた養子であり、優秀な弟子よ?私が、いえ……私達が出来ると信じたのだから出来るわ」

「そんな理屈が通ったら苦労しな──」

「理屈じゃなくて人の気持ちよ、だからあなたは私達を信じてやってみなさい、出来なかったら私が何とかしてあげるから」

「……分かった」

 

 空間転移を発動させて、兵器達の前に立つと魔力を集中させて【守護者】と【怪力】を発動させる。

守りたい人の数だけ能力が上がる能力と、一部能力を限界以上に強制的に引き出す事で身体能力の限界を突破させる力。

これを合わせたらどうなるのか、気になる事が多いけど……何故だか今の自分なら何でも出来るような不思議な万能感に満たされていて、不思議な感じがする。

その感覚に任せて武器を全力で振ろうとした時、脳裏にディザスティアへと姿を変える前の実父、ヴォルフガング・ストラフィリアの姿が浮かぶ。

彼は最後まで一人で戦い続けたけれど、ぼくには頼る事が出来る仲間がいて、心を許せる友人がいる……、あの人とは歩んで来た人生が違うけれど、最後に見た力強い姿は今でも目に焼き付いていて、彼のように誰かの為に強くなることが出来るだろうか。

そんな事を思いながら雪の魔術で長杖を覆い、レティシアーナが使っていた大槌を想像して作り出すと、機械の群れへと床を破壊しながら走って行く。


「……父さんまじかよ」

「ダリアちゃんは、レースちゃんがあの兵器を壊したら残骸と位置を入れ替えてあげて」

「あぁ、なるほど……つまり父さんには攻撃にだけ集中させろって事だな?」

「その通り、ソフィアちゃんはその間にセラフナハシュの眷属を呼び出してちょうだい……、私はその間、マスカレイドが動かないよう妨害に徹するわ」


……後ろからそんなやり取りが聞こえると同時に大剣で身体を回転させるように兵器をなぎ倒す。

すると、目の前の残骸が一瞬で他の兵器と移り変わり目の前に現れると、流れるように回りながら大槌で側面から叩きつけるのだった。

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