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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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倫理観の欠如

 敵であるマスカレイドにとって、一時期母親のように接してくれたらしい大事な人。

メイディの元薬王ショウソク・メイディの実母であり、現薬王メイメイ・メイディの祖母にあたる人物が一方的に破壊されてしまった。

ぼくは彼女がどんな人物かは知らないけれど、三人にとっては特別な存在であった人を壊す何て、何を考えているのか。


「分かる?意思が無いって事は、抵抗も出来ないの……愚かよねぇ、可愛そうよねぇ、折角蘇って自分のやりたい事を出来る機会を再び得たのに、無駄にして馬鹿よねぇ」

「……レティシアーナ、あなたその性格は魔導兵器になっても変わらないのね」

「ん?何よあなた、さっきから遠くで座り込んで何もしないくせに、私を知ってるかのような事を言うのね」

「知ってるも何も、会った事あるもの……あの頃は確か、あなたがストラフィリアで実父を殺害して、ディザスティアをその身に封じて暫くたった頃だったかしら……」

「あら、偉い長生きなのね……、あの頃の私は素晴らしかったでしょう?偉大なるディザスティア様をこの身に宿して、力の限り正しい事をすることが出来たもの」


 ストラフィリアという国は、妹であるミュラッカが新たな覇王になった今でこそ、新しい形へと変わろうしているけど、それまではレティシアーナのような王が普通だったのかもしれない。

そう思うと、ぼくには理解をしてあげる事が出来ないけれど、力が正義という発想は先祖である彼女からしたら常識なのだろう。


「……そう、なら私からはもう話す事は無いわ」

「ふぅん、そうやって逃げるんだ?」

「逃げるも何も、あなたを倒すのは私が育てた自慢の息子だもの、あなたが馬鹿にした相手に惨めに負けるがいいわ」

「言うじゃない、なら私がこの三人を殺したら、次はあなたをいたぶってあげる!泣いて謝っても許してあげないんだから!」

「……という事だから、三人共後は任せたわよ」


 母さんが疲れたような顔をしてうつむくと、ゆっくりと眼を閉じる。

レティシアーナがつまらなそうな仕草をすると大槌を構えた後、魔術で床を雪で覆い尽くす。


「み、皆様方、避けてですわぁ!?」

「……え?」

「……は?」


 雪の上でバランスを崩した蒸気機関の大蛇が初代賢王を下敷きにして、凄い速度で滑って来る。

咄嗟に後ろに飛びのいて何とか避ける事が出来たけど、レティシアーナはぼく達に気を取られていたようで、反応すら出来ずに巻き込まれて勢いよく壁に衝突した。


「うっわ……綺麗に自爆してんじゃねぇかよ」

「偉そうに言ってた割に、後先考えずに行動するから……こうなるんですよ」

「それ、ソフィアが言える?」

「わ、私はいいんですぅ!魔王様だからいいんですぅ!」

「……戦闘中に騒ぐんじゃねぇよ、集中しろって!」


 集中しろって言われても、大蛇に潰された以上レティシアーナは無事では無いだろう。

そう思うと戦いの終わりは呆気ないというか……


「レース様!大丈夫ですの!?」

「教えてくれたおかげで助かったよ、ありがとうミオラーム」

「そんな……当然の事ですわ」


 ミオラームが狼に襟を咥えられた状態で、こっちに向かってくる。


「なんで咥えられてるの……?」

「こっちの方が速い気がしたので、お願いしたのですのよ!ほら、私雪の上を歩いた事ありませんし」

「あぁ……」


 確かにそういう理由なら、この何とも言えない移動方法にも納得が行く。

狼がゆっくりとミオラームを降ろしてその場に座る。


「ミオラーム、初代賢王ヴォルトはどうなったと思う?」

「……バランスを崩した時に、大蛇の下敷きになって潰されてたので壊れたと思いますわ」

「……レティシアーナも巻き込まれたし、倒せたのかな」

「そんな簡単に……私が死ぬわけないでしょ!」


 怒号と共に大蛇が持ち上がると、大蛇の下からレティシアーナが出て来る。

けど……さすがに無事とはいかなかったようで、所々火花が散っており、残っている生身の部分から血液のような液体が流れていて、何とも痛々しい。


「無能が私の脚を引っ張るなんて……許せない」

「おめぇ、仲間が壊されたのに自分勝手過ぎじゃねぇか?」

「自分勝手?私が?父上や私の夫みたいなことを言うのね、なぁに?あなたも……私の夫や臣下のように危険だからと食事に毒を持って殺すのね、そうなんでしょう?」

「……レティシアーナ?」


 何だか様子がおかしい。

まるで記憶が混濁しているようで、眼も焦点があっておらず、激しく左右に揺れている。


「……全て、全て滅ぼしてあげる!私にはディザスティア様の残滓が残ってるの、そして私達の身体には、残滓を増幅させる為の魔導具が組み込まれてるの……その意味が分かる?」

「……レティシアーナ様、あなたまさか」

「あれ?そちらの魔王様は気づいたようね……、恐れおののき、そして喜びなさい、偉大なるストラフィリアの闘神ディザスティア様の権能に触れる幸福を!さぁ、私の身体を使い、今ここに蘇りください!我らが神よ!【神器開放:ディザスティア】!」


……レティシアーナの生身の部分が肥大し成長していく。

機械の身体を破壊しながら天井に届く程の大きさを持つ巨人へと、その姿を変貌させると背中から数えきれない程の腕を生やし、それぞれの手に骨で出来た剣や槍等の武器を持つ化物へと姿を変えるのだった。

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