歴代の王族達
起動した魔導兵器達が、拘束を解きゆっくりと歩いてくる。
その瞳には精気が無く、表情には感情が感じられない。
ただ機械的に、予め設定された行動を行うだけの兵器がそこにあって……
「……あれが、初代賢王様、私の祖先」
「ミオラーム、彼の事に対して何か知ってる?」
「マーシェンスの王城で歴代の王達に対する資料を読んでいる時に、見た事ならありますわ……確か初代賢王は蒸気機関の大蛇を操るとか」
「蒸気機関の大蛇……?あぁ、あれか」
メイディでマスカレイドと交戦した時に見たけど、あの時初代賢王と戦ったのはSランク冒険者【滅尽】アナイス・アナイアレイトだったから、どんな戦い方をするのかまでは分からない。
「レース様、ご存じなんですの?」
「メイディで見た事あるだけかな……」
「なら簡単に説明致しますわ、あの大蛇に自身の属性を纏わせて攻撃をしてくるそうですの、それだけなら当たらなければ良いだけですが、問題は……耐久力ですわね、壊れても周囲の機械を取り込んで修復を繰り返すので、マーシェンスにいる限り核を壊さない限りは壊す事は不可能ですわ」
「不可能って……そんな化け物をどうやって倒せばいいのかな」
「動きを封じてさえ頂けたら、私が破壊しますわ!」
それなら雪の魔術で動きを止めた後の事は、彼女に任せてしまった方がいいだろう。
そう思いながら心器の大剣を顕現させると【氷雪狼】を発動して、長杖と大剣を核に二匹の狼を生み出す。
同時に初代賢王ヴォルト・レネ・マーシェンスの背後に、周囲の機械を取り込みながら巨大な大蛇が生み出されると、身体の至る所から蒸気を吹き出し唸り声をあげる。
「ミオラーム、この狼達が大蛇の動きを止めるから、初代賢王の事お願い出来る?」
「や、やってみますけど……ちょっと不安ですわ」
「大丈夫、あの狼達はぼくよりも強いから……じゃあぼく達は、二代目の覇王と初代薬王の事はこっちが何とかするから」
「え、あっ!ちょっと待って……、あぁもうやってやりますわ!やってやりますわよ!」
ミオラームはコートから複数の弾丸を取り出して宙にばら撒く。
そして身体から青白い雷を放ち、その場に停滞させると心器の銃を顕現させ……
「ミオラーム、心器を出して大丈夫なの?」
「こ、怖いけど大丈夫ですわ、だってあれを破壊するのに最も適した武器は、私の心器……レールガンしか無いですもの、だからほら、さっさと行ってくださいまし!確かこういう時は……こう言葉にすると良いのでしたわね、こほん、ここは私に任せて先に行け!ですわ!」
「……ん?なにそれ」
「知りませんわ!何だか脳裏に浮かんだだけですのよ!」
何だか不吉な言葉をミオラームが口にしたけど、気にしない方がいい気がする。
何だか変に反応してしまったら悪い事が起きる気がするし、そういう時の勘は大抵当たるものだ。
だから返事をしないで狼達に指示を出すと、急いでソフィアとダリアと合流しようとすると、ミオラームとのやり取りをしている間に戦闘が始まっていたみたいで、魔術で生みだされた樹や氷が、二人に向かって襲い掛かっていた。
けど……途中でソフィアが生み出した霧に阻まれて溶け落ちてしまって、攻撃が届いていないようで……
「レースさん、あっちでミオラーム様と一緒に戦うんじゃなかったんですか?」
「いや、あっちは能力で生みだした狼に任せたら大丈夫そうだから、こっちに来た方がいいかなって」
「あー、確かに父さんよりも強いからなぁ……、じゃあ俺と父さんは二代目の覇王えっと、なんだっけ?」
「レティシアーナ・クー・ストラフィリアだね、でも改めて見ると変な感じがする、実父の前王ヴォルフガング・ストラフィリアはミドルネームが無かったのに、どうして昔の覇王にはあるんだろう」
「……レースさん、今そこ気にするところですか?、気になるのでしたら今度教えますから、今は戦う事に集中してください!」
確かにソフィアの言う通りだ。
今は戦う事に集中した方がいい、空間収納から【不壊】の能力が付与された大剣と長杖を取り出すと、魔導兵器と化したレティシアーナに向かう。
「レースちゃん、私が知ってる限り二代目の覇王は魔術が得意ではない変わりに、近接戦闘を得意としていたから、気を付けるのよ」
「母さん……、助言は嬉しいけど出来れば休んでてほしいかな」
「あら、話すくらいなら疲れないから平気よ、取り合えずレースちゃんとダリアちゃんの成長を見させてもらうわね」
大剣を鞘から抜いて義肢の左腕に持つ、長杖の先端に雪の塊を纏わせていく。
するとそれに合わせるかのように、レティシアーナの手元に雪で作られた大槌が生成されて行き……
「……え?大剣じゃないの?」
「大剣?あれは、私……使うの嫌い、だって殴った感覚が無い」
「……え!?しゃべ──」
「父さん!あぶねぇ!」
……大槌を構えたレティシアーナが、雪の魔術で床を凍らせてその上を滑るように移動してくる。
まさか魔導兵器が喋るとは思わなくて、驚きの余り動きが止まってしまっているぼくに向かい、勢いをのせた強烈な一撃が飛んでくるのだった。




