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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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精神転移

 振り向いた先には蒼褪めた表情をした母さんがいた。

それだけではなく、なぜかミオラームとダリアまでいて……


「どうしてダリアとミオラームが?」

「カルディア様に私の国で問題が起きてるから着いてくるように言われたのですわ!」

「……ほら、マーシェンスで問題が起きているのに、メイディの人間である私達が不法入国して問題を起こしたら国際問題になるじゃない?それならこの子に着いて来て貰った方がいいと思ってね」

「俺はたまたま、通りがかったカルディアに声を掛けたら、着いてこいって言われただけで……」

「何を言ってるの?私に向かって、エスペランサとスパルナを安全な所に連れて行ってくれって、助けを求めて来たのは誰かしら、その言い方だと私が助けを求めたみたいになってるわよ?」


 母さんの事よりも二人の方が気になったから聞いてみたら、思いの外しっかりとした理由で着いて来たミオラームと困ったような表情をしているダリアがいた。


「……ところでソフィアちゃん」

「えっと、カルディア様?」

「転移した先が他国だと分かったら一度戻るか、連絡用の魔導具を使って私に連絡するべきじゃないかしら?」

「え、あの……その、かっこつけて燃やしちゃいました」

「……え?ソフィア、あなたあれを作るのがどれくらい大変か分かってるでしょう?今の技術であれを作れるのは私とあなただけなのに何を考えてるの?」


 職員室でセイラン達にかっこいい所を見せようとして、燃やしてしまったおかげでその後の連絡が出来なかった。

こればっかりは怒られてもしょうがないだろう。


「……ソフィアちゃん、やってしまったのはしょうがないけど、次は気を付けなさいよ?」

「あれ?カルディア様……怒らないのですか?」

「怒ってるわよ?けどこの状況で頭ごなしに怒るほど、もうろくはしてないわよ、……だってレイドがここまで正気を失って狂気に染まっていたなんて思わなかったんだもの」


 師匠は組み立てられて起動するのを待つだけになった魔導人形を指差して、悲しそうな表情を浮かべる。


「……まさか、こんな姿になって再開する事になるなんて思わなかったわね」

「再開?もしかして母さんは会ったことあるの?」

「えぇ、ソフィアちゃんにしか言った事なかったけど、私は当時から生きてるもの……五大国を治めてきた歴代の王に勿論会ったことあるわ、彼女は二代目ストラフィリアの覇王レティシアーナ・クー・ストラフィリア、老体の方は、初代賢王ヴォルト・レネ・マーシェンス」

「最後のはメイディの初代薬王だよね?あっちでマスカレイドど戦う事になった時に見たから知ってるよ」

「あら、レースちゃんは知ってたのね、それなら戻って来た時にどうして全部教えてくれなかったの?」

「中々言うタイミングがなくてさ」


 帰国して直ぐに呼び出されて、魔導学園の教師の話をされたり、働くために準備をしていたら話す時間が取れなかったけど、それに関しては言い訳だ。

実際、教師としての仕事に慣れて来た後は、時間に余裕が出来たりもしていたから、ただ言うのを忘れていただけ。

それに……見た目は身体を新しいものに交換したばかりだから若いけど、咳き込む事が増えたり、診療所の手伝いに来てくれる回数が減ってきてるところから判断すると、今の身体との相性が悪い事が分かるし、出来る事なら無理をさせたくなかった。


「そう?なら次は気をつけなさい、相手の状況がどうであれ大事な事はしっかりと伝えないとダメよ」

「うん……次からはそうするよ」

「えぇ、お母さんとの約束よ、ダリアちゃんもお父さんがやらかしそうになったら、お母さんに伝えて注意してもらいなさい」

「お、おぅ……、そうするけどばあちゃん大丈夫か?顔色が悪いぞ?」

「ん?大丈夫よ、ちょっと長生きしすぎて体調が悪いだけだから気にしないで?」


 正直、母さんの体調が悪い理由は、ある程度予想が出来ている。

今の身体はダートの遺伝子情報のみで作成したもので、母さんの遺伝子は入っていない。

他者の身体に精神を移す魔術を見たことが無いから、予想と言っても妄想の範囲を出ないけど、臓器の移植で例えれば納得が行く。

移植後、自身の身体がその臓器を自分の物では無いと判断して、免疫細胞が排除しようとする反応をした場合、最初は臓器としての働きをしっかりとしていても、徐々に動きが弱まっていき最後には機能が停止してしまう。

その理屈通りなら、母さんの今の状況は自分の身体に直接攻撃されているようなもので、想像も出来ない程の苦痛に苛まれている可能性がある。


「……カルディア様、本当に大丈夫なんですの?無理ならここは私達に任せて休んでいていいのですのよ?」

「大丈夫よ、だって……ここにいる人達の中でレイドを止める事が出来るのは、実力的に私くらいしかいないでしょう?」

「それは分からねぇだろ?俺達で力を合わせたら倒せるかもしれねぇぞ?ここには、俺と父さん、それに魔王ソフィア・メセリーにまだ子供だけど賢王ミオラーム・マーシェンスがいるんだぜ?」

「……そう?そこまで言うならちょっとだけ休ませて貰うわね、でも少しでも危ないと思ったら助けに入らせて貰うわ」


……母さんは少しだけ離れた場所に移動すると、その場にゆっくりと腰を下ろす。

それと同時に遠くの方で、獣のような咆哮が響く。

音がした方向に振り向いた瞬間、けたたましいサイレンが研究室内に鳴り響いたかと思うと、壁に固定されていた魔導人形達の目が開き、起動するのだった。

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