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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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マスカレイドの研究室

 この研究室はなんなのだろうか。

モンスターと人が結合されて、液体に満たされたガラスケースの中をゆっくりと呼吸しているかのように、浮き沈みを繰り返している光景が恐怖心を煽ってくる。

他にはミオラームの護衛依頼、冒険者になって直ぐの頃に受けたものだけど、その時に遭遇した頭部が機械になっている異形の化物が手術台のような物の上で横たわっていて……思わず言葉に詰まってしまう。


「……レースさん、これはもしや以前冒険者ギルドから報告にあった、ミオラームさんの護衛依頼で遭遇したという」

「うん、頭部が機械になっている、マーシェンスの王族のみが扱える技術で生みだされた異常種と似てると思う」

「という事は……ここは、マーシェンスにあったという【黎明】マスカレイドの研究所の可能性がありますね」


 ここがマスカレイドの研究所なのだとしたら、ソフィアの言うように今いる場所は隣国であるマーシェンスの可能性がある。

記憶が間違いで無ければマーシェンスを追い出された後、ミオラームの手で閉鎖されたと聞いていたけど……


「……これは」

「機械で出来た身体?」


 更に進んで行くと、機械が蒸気が噴き出しながら、軋むような音を上げ全身が機械で出来た人の形をしたものを組み立てている場所に出た。

その光景はまるで人工的に機械で作られた人を生み出しているようで、言葉に出来ない恐怖があり、声にならない悲鳴が喉から出そうになる。


「……レースさん、これは見覚えありますか?」

「メイディで、マスカレイドと戦った時に呼び出した魔導人形に似ているけど……」

「魔導人形ですか、詳しく聞いても良いですか?」

「うん……、実は──」


 ソフィアにメイディで起きた事。

各国の王族の死体を過去から掘り起こして、現代に運び魔導兵器という存在に作り上げたマスカレイドの行い。

それをどうしてぼくが、魔導人形と呼んでいるのかという理由も含めて伝えると……


「レースさん、あなたが魔導人形と呼ぶようになった経緯は今は関係ありません、大事なのは、マスカレイドが歴代の王族の亡骸を兵器に作り替えた事です」

「……確かに」

「でしょう?それに……分かりますか?この組み立てられて行く魔導兵器の共通点が」

「いや、特には……」

「どうしてこういう時だけ鈍くなるんですか……、レースさん良く見てください、今組み上げられているのは魔導兵器達は、人の頭部に当たる部分がありませんよね?」


 確かにソフィアが言うように、現在組み立てられている魔導兵器達には頭部が無い。

それだけじゃなく、良く確認してみると何処となく見覚えがあるような気がして……


「もしかして……これって、ぼく達がメイディで戦った……」

「えぇ、レースさんがメイディで遭遇し交戦したという、歴代の王族をベースにした魔導兵器のメンテナンスが現在行われている可能性があります」

「メンテナンスって……どうしてこんなところで」

「それに関しては私も分かりませんが、彼にとって治す価値のあるものなのでしょう」


 確かに、マスカレイドからしたら価値はあると思う。

メィディでの出来事を思い出すと、五大国の王達の体に封印されている神々の器としても機能するらしいから、彼からしたら壊れて動かないままにしておくことは出来なかったのかもしれない。


「レースさん、って少しだけここで様子を見てみましょう、……ロドリゲスの事は気になりますが、メセリーの魔王として今ここで起きてることを把握する必要があります」

「……わかった」


 ソフィアがそういうのなら、考えがあるのだろうから指示に従った方がいいだろう。

すると何となく見覚えのあるものが遠くから流れて来て……


「あれはまさか……」

「レースさん?」

「あの獅子の顔はケイスニルの……、じゃああの毛皮は」


 ケイスニルの顔が組み上げられた機械の体の中央に運ばれたかと思うと、毛皮と共に縫い合わされてマントに姿を変える。

それに続いて、肉の塊が落ちて来たかと思うとそれぞれの部位へと整えられて機械の体に取り付けられると、液体が満たされたガラスケースに入った、歴代の王族達の頭部がゆっくりと降りて来てそれぞれの体と組み合わされて行く。


「……レースさん、この光景を見てどう思いますか?」

「この技術を考えたマスカレイドは、正気じゃない」

「えぇ……生命の尊厳を軽視していますし、何よりも自然の摂理に対する冒涜、そして……死者への愚弄、決して許されるべきものではありません、我が国で【叡智】カルディアと共に、賢者と呼ばれた【黎明】マスカレイドがここまで狂気に飲まれていたとは……レースさん大丈夫ですか?育ての親共言える人がこんな事をしているのを見て辛くないですか?」

「……正直辛くないと言ったら嘘になるけどさ、敵対する事になってからは、ある程度の覚悟できてたよ」

「そう……ですか」


……覚悟は出来ていても、気持ちの整理はやっぱり難しい。

クイストでの再開、ストラフィリアでの交戦、メイディでの衝突、色々とあったし……その度に様々な事を考えたり、思ったりもしたけど、心の何処かでは憎めないでいる自分がいる。

シャルネの【精神汚染】によって、精神が歪んでしまっている可能性を考えると、どうしても、そんな事を考えていると背後から『……レイド、あなたまさかここまで』と声が聞こえ、驚いて振り向くのだった。

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