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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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秘密の会話

 何故玄関を開けたらグロウフェレスがいるのか。

噂をするとその人が来たりするとか良くあるとは言うけれど……


「レースさん、お話したい事があるので家に上がらせて頂いてもよろしいでしょうか」

「え?あぁ……えっと」

「レースどうしたの?」


 反応に困っていると、玄関から帰ってこないぼくを心配したダートがお腹を支えながら様子を見に来る。


「初めまして、私……レースさんと同じ学園で教師として働いているキューと申します」

「……キューじゃなくて、グロウフェレスでしょ?さっきレースから聞いたよ?」

「ふふ、それなら話がスムーズに進みそうですね、レースさん身重の女性をいつまでも立たせておくのは良くないですよ」

「確かにいつまでも玄関で話してるのも良くないし、中で話そうか」

「おや?先程の反応と違い友好的ですね、では……お邪魔させて頂きます」


 何故敵対関係にある彼に、ダートの事を心配されなければいけないのか。

そう思いながらグロウフェレスを家に入れると、さっきまで二人でゆっくりとくつろいでいたリビングへと通す。


「私、お客さんにお茶を用意してくるね?」

「いえ、急に連絡も無くお邪魔してしまったのでそのようなお気遣いをなさらなくても大丈夫ですよ、それにお腹が大きくなってきた女性に無理をさせて働かせたとなったら、旦那様であるレースさんに怒られてしまいます」

「え、あぁ……ありがとうございます」

「いえいえ、私も長く生きる中で伴侶を持ち、子を生した事があるので色々とその時期の大変さは少しは理解しているつもりです、とはいえ全てを理解しているのかと言われたら男性なので無理ですけどね」


 彼はソファーにゆっくりと腰を下ろすと、袖口に手を入れて一枚の紙を取り出しテーブルの上に置くと


「……さて、お詫びと言ってはなんですがこちらをお受け取りください」

「これは?」

「マスカレイドが潜伏している場所の地図です」

「……どうしてこれをぼくに?」

「あなたに渡せば栄花騎士団の元に情報が行くでしょう?」


 何故そのような重要な情報を彼の敵であるぼく達に渡そうとするのか。

その行動の意味を考えては見るけれど、思い当たるような事が一つも浮かばない。

こういう時は本人に直接聞いてしまった方がいいだろう。


「確かにそうかもしれないけど……、これを渡してどうしたいの?」

「あなた達と敵対している身である私が言えた義理ではないと重々承知の上でなのですが、彼の討伐を依頼したいのです」

「依頼って、レースはともかく、私はお腹の中に子供がいるから戦うとか無理だよ?」

「それも承知してます、ダートさんはお身体を大事にするべきでしょう」


 ストラフィリアで戦った時と違い、今の彼はとても友好的に見える。

けどそれが演技で、油断した瞬間に態度が豹変し襲い掛かって来るのではないか。

その可能性がある以上、警戒を解くわけにはいかない。


「……ダートへの気遣いは嬉しいけど、依頼をしたいってどういうこと?」

「えぇ、それに関してもお話致します、現在私達はマスカレイドと敵対関係にあります……理由はあなたもご存じだとは思いますが、ケイスニルが彼に殺害された事、そして……」

「そして?」

「ケイスニルから自分に何かがあったら、あなたの治癒術の効果で人族からマンティコアへと変容し、自分の魔力と血を分け息子になったルードの面倒を見てくれと手紙を受け取りまして」


 ケイスニルがそんな手紙を……?

確かに当時の行動を考えると、自分の子供として認識していたし……ルードの髪に愛おし気に触れる姿は、本当に自分の子を愛している親のように感じた。

そんな彼が。グロウフェレスに手紙を送ったという事は……、少なからずあの戦争に参加した際に自身が死ぬ可能性がある事を理解していたのかもしれない。

実際は戦いに参加参加する事は無かったけど、マリステラに協力する事になったとかでマスカレイドと戦い彼に殺されてしまった。


「そして今現在、私は亡き友の為に主人であるシャルネ様と別行動をとっており、ルードの確保の為に動いているのですが」

「……それならルードが捕らえられてる栄花に直接行った方が良くない?」

「若い頃の私なら単身で乗り込む事も出来たでしょう、けど……私は老い全盛期の実力の半分も出す事が出来なくなってしまいましたからね、現にストラフィリアであなた達と戦い負けた時もそうですが、老いを技術で補ったとしても限界はあるものなんですよ」


……そう言って悲しそうに笑うグロウフェレスを見ると、見た目はぼく達と比べたら一回り年上に見える。

エルフ族のように一定の年齢で体の成長が止まったりする種族なのだろうかと、一瞬考えたけど、幻術を使える彼の事だから、今の姿もぼく達では分からない位の高度な術で、獣人族特有の獣の耳と尾を隠しているのだろう。

彼等の頭には疑耳と呼ばれる人族の耳と、似た形をしただけで聴力の無い部位とそれぞれの種族によって形が異なる獣の耳があるから、耳と尾をう隠されたらぼく達と同じ人族にしか見えなくなる人もいる。

そう思うと……グロウフェレスの本来の姿とはいったいどのような感じなのだろうかと、若干好奇心が芽生えてしまうけど、今は彼の話を聞く事を優先するべきだと気を強く持つのだった。

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