職員室にて
職員室についたぼく達がまずした事は、エスペランサが今までした事に関しての謝罪と自己紹介だった。
その際に……
「これからはクラスの事に関して、新任教師のぼくが行っても説得力が無いと思うけど責任を持つから許してあげてください」
と頭を下げながら言うと、何人かの教師達は反応に困った顔をしながら……そこまで言うのならと彼女のやって来た事を許してくれたけど、一人だけ
「……それで今までやって来た事が、許されるとお思いで?レース先生は甘いですね」
「ロドリゲス先生……」
ぼくが来るまでクラスの担任をしていた、ロドリゲス・ビネガーからしたら思う所があるみたいで、先程とは違いお酒に酔っているのか顔を赤く染めて座った眼をしながらこちらを見ていた。
「そもそも、新任のあなたがクラスに対して責任を持つ?さすがこの国で最も優れてている魔術と治癒術の親であり、Sランク冒険者【叡智】カルディア様のお弟子さんは言う事は違いますね」
「先生、ちょっと酔い過ぎですよ」
「……私が魔術を使うと、こうなるのはあなた方も承知の上では?」
「ですが……」
何だかめんどくさい事になってる。
まぁ……この国の魔術師や治癒術師で高名な人の殆どが、学者肌なのもあるけど色々と性格的に濃い人だったりするのは、いつもの事だから気にする程では無いけど、まだ幼くてそう言う事に慣れていないエスペランサからしたら、余り良い光景ではないだろう。
「あの……レース先生、私どうすれば」
「ここはぼくが何とかしとくから先に教室に戻って、次の授業の準備をするように皆に伝えといてよ」
「……わ、分かりましたわ」
エスペランサを教室に戻すと、座った眼をしてこちらを睨んで来るロドリゲスを見て、どうしようかと思考を巡らせるけど、ここで何か下手な事を言ったら余計雰囲気が悪くなりそうだから黙っていた方が賢明な気がする。
「エスペランサ嬢に随分懐かれたようですね、いったい何をしたらあのような問題児に好かれるのか教えて貰いたいものです」
「ロドリゲス先生、あなたは疲れてるんですよ……私達が上に話を通しておきますんで今日はもう家に帰っておやすみください」
「……随分彼に味方するじゃないか、まぁ良い君達がそういうなら今日は大人しく帰ろうではないか、しかしレース君、君は随分簡単に責任を取るとかいうけれど、この辺境都市で診療所をやっているのだろう?更にBランク冒険者もしているのだろう?」
「そうだけど診療所の方は学園が休みの日に顔を出せば良いし、冒険者に関しては高圧的な態度を取って診療所に来る患者さん達に対して対応できるようにする為だから、たまにしか活動する予定ないよ……けど」
「……けど?何やら言い淀んでいるようだがどうしたのかね?」
栄花騎士団からの応援要請があったら、長期間国を出て診療所を空けてしまう事がある。
それに関してどう説明すればいいのか、一応ソフィアの事だから色々と考えてはいてくれてるだろう。
ただ、それまでの間にクラスの雰囲気を変えて、ぼくがいなくても上手く回るように出来れば……
「いえ、ぼくが栄花騎士団の副団長と婚約関係にある関係で、たまに栄花騎士団の仕事の応援に行く事があるので、その際に長期間空けてしまう可能性が」
「……ほぅ、そのような立場にあるのなら無責任な言葉は言わない方が──」
「ロドリゲス先生!いいから今日はもうおかえりください!」
「……そうだったね、では私は失礼させていただくよ、精々悩みながら励むが良いさ」
しぶしぶとした感じを出しながらロドリゲスが職員室の扉を開けて廊下へと出て行く。
そして静かになった室内では、何とも言いづらい雰囲気でこれはどうするべきか悩んでいると
「ロドリゲス先生の事は気にしないでください、あの人はえっと、優秀なんですけど無責任で高圧的な態度を取るところがありますから」
「……それでもぼくからしたら、前までクラスの担任を務めてくれていた立派な人だし、大事な先輩だよ」
「……レース先生、えっとそういえばまだ名乗っていませんでした、私はメセリー出身で精霊術を主に担当するセイランと申します」
「へぇ、この国で精霊術なんて珍しいね
「えぇ……何でも学園長様が首都の魔導学園とは違う特色を持たせようという考えの持ち主らしく、マーシェンスから事情があってこの国に滞在しているらしい魔導具と魔科学について詳しい学者様や、栄花からこの国に移民として来たお札という特殊な道具を使う符術や召喚術という物を扱える術師さん、私のように生まれはメセリーでこの国が気に入ってしまい住み着いてしまった精霊術師等、様々な方がいらっしゃいますよ」
……セイランと名乗った女性を良く見ると、被っている帽子が不自然に膨らんで見える。
多分獣人族特有の動物の耳だろうか……他に符術や召喚術の術師と言われてた人を見ると、白髪で毛先が茶色い人族の男性で特徴的な栄花の民族衣装を見ると、何処かで見た事あるような気がして、何とも言えない違和感を覚えるのだった。




