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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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エスペランサ

 ダリアと二人で学園に向かうと、徐々に同じ服装を着た人達が増えて行く。

学園の制服なのだろうけどこの中で何人が、無事に卒業して魔術師や治癒術師としての資格を得るのだろうか。

そんな彼らに対してぼくはしっかりと教える事が出来るだろうか、と色々と頭の中で考えてしまう。

師匠から教わった方法で授業をしていいのだろうか、それとも自分なりの方法で試してみる方が良いかも?と色々と考えて見るけど、実際に生徒の前に立ってみないと分からない。


「父さん表情が固いぜ?、そんな気負うなって」

「ダリアだって緊張してるじゃないか」

「うるせぇなぁ……、学園に通うのは初めてだから緊張すんのは当然だろ?」


 確かにその通りかもしれない。

初めての経験で緊張するなという方が無理だ、そう思いながらダリアに声を掛けようとすると……


「あら?あなた……見ない顔ですわね」

「……あ?」


 後ろから誰かの声が聞こえ振り向くとそこには、長い金色の髪を左右に結んだ小さな女の子の姿があった。


「あ?とは何ですの?この私が声を掛けて差し上げていますのよ?あなたは誰なんですの?」

「誰っておめぇ……、こういう時は自分から名乗るもんじゃねぇの?」

「まぁっ!?質問を質問で返す何て何て失礼な方なのかしら、まぁいいですわ……私は高貴な一族ですもの、特別に質問に答えて差し上げます、名前を聞いて驚きなさい!私は栄花騎士団に栄転した偉大なるウァルドリィ・ワイズ・ウイリアムの姪である、エスペランサ・アドリアーナ・ウィリアムですわ!特別にエスペと呼んでも構いませんわよ?」


 ウィリアム……、もしかしてこの子が例の問題を起こしている生徒かもしれない。

けどこうやって心配して声を掛けてくれたという事は、面倒見の良い人かもしれないから、ソフィアが言う程の子じゃない可能性がある。


「長ったらしい名前だな……」

「……初対面からほんと失礼な人ですわね、折角容姿が整っているのに勿体ないですわよ?」

「見た目でとやかく言われたくねぇよ、あぁなんだ?俺はダリアだ、取り合えず今日からこの学園に編入する事になったからよろしくな」

「ダリア様ですわね?それにしても編入……?あぁ、そういえば私のクラスに近い内に編入生が来ると言う噂がありましたわね、ならえっと……隣にいる治癒術師である事を表す白いローブを着用している男性の方は、ダリア様のお父様かしら?これから娘様とご学友になるエスペランサ・アドリアーナ・ウィリアムですわ、宜しくお願い致しますわね?」


 エスペランサは制服のスカートの端を両手で摘まむと、丁寧な仕草で腰を下ろして貴族特有の礼をする。

それを見てぼくも合わせて、メセリーの貴族女性に対してする礼の返し方をすると、感心するような仕草をして手の甲を差し出して来た。

多分……貴族に対して尊敬や敬愛の気持ちを表せという事なのだろうけど


「ごめんね?ぼくには大事な人がいるから、そう言う事はしたくないんだ」

「へぇ……ですけど、貴族に対して敬意を払うのは当然では無くて?これだから最近の大人は嫌ですわね、そういう常識的な事が出来ない人が多すぎて困ってしまいますわね」

「……貴族の常識だか何だか知らねぇけど変な事言ってんじゃねぇよ、父さんは今日からこの学園で教師になるんだぜ?そんな偉そうな態度取っていいのかよ」

「へぇ……この顔だけが良い方が教師に?、どうせあなたも口だけの方でしょうし、早くお辞めになられた方が賢明ですわよ?だってこの学園には私、エスペランサ・アドリアーナ・ウィリアムという最も優秀な生徒がいるのですもの!」


 この子何回自分の名前を言うんだろうなぁと思いながら、黙って聞いてるけど……彼女の叔父であるウィリアム教授と比べたら、性格が違い過ぎてどう反応すればいいのか困ってしまう。

彼はまだ年相応に落ち着いた大人の雰囲気があったけど、エスペランサは自分の優秀さに自身があるのか上から目線が目立つ。

初めは面倒見の良い女の子だと思っていたけど、大人を見下した発言やぼくの対応に対して非常識だと言い出す辺り、一度自分よりも下だと思い込んでしまった相手には冷たいのかもしれない。


「それならぼくが担当する科目の時を楽しみにしてるよ……ぼくはレース・フィリス、この国のSランク冒険者【叡智】カルディア・フィリスの弟子で、この学園で治癒術の教師をすることになったからよろしくね」


 ソフィアが母さんの弟子をブランドのように言ってたのが分かった気がする。

多分だけど、こういうタイプは自分の血筋や所属を大事にするタイプだと思う……だから敢えてこうやって言葉にして、自分が何処の誰か伝える事で相手は何も言えなくなる筈だ。


「カ、カルディア様の……!?、ふ、ふん、Sランク冒険者だか何だか知りませんし、【魔王】ソフィア・メセリー様の師匠だか何だか知りませんけど、その方があなたの師匠ですって!?嘘は良くありませんわよ!?け、けど、それが本当かどうかはこれから見させて頂きますわ!」

「……何かすげぇ奴だなこいつ」

「さぁ、あなた!ここで立ち話してると時間に遅れますわよ?私が学園長室まで送って差し上げますから、行きますわよ!」

「んな!手を掴むな!……俺一人でいけ!父さん、助けろ!ちょっと……力強くねぇかおまえ!」


……顔を真っ赤にしたエスペランサが、ダリアの手を掴むとそのまま学園へと向かって走って行ってしまう。

取り合えずさっきのやり取りで周囲の生徒達からの注目を集めてしまったぼくは、どうしたものかなぁと思いながら学園へと入って行くのだった。

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