表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

437/576

マーシェンスの特徴

 ミオラームはいったい何をしているのだろうか。

思わずダリアと顔を見合わせてしまうけど、どう見ても精密そうな機械に向かって飛び蹴りを入れている辺り、彼女の中で何かがあったのかもしれない。

そう思いながら声を掛けるべきかどうか悩んでいると……


「この国の素材では満足が行く蒸気機関を作れませんわね……、やはり一度マーシェンスに戻って必要な道具を揃えた方がいいかもですわ」

「戻るなら、一言ソフィアに言ってからにした方がいいんじゃない?」

「そんなの当然ですわ、ソフィア様に保護して貰っているんですもの……ただ帰国した後の事が気になりますわ……ん?あら?」


 眼に付けているゴーグルを頭の上に移動させながら、こちらに振り向くと……驚いた顔をして固まってしまう。


「えっと……ミオラーム?」

「レース様、何時戻って来たのかしら?」

「ついさっきかな」

「そうですの……、って事はここに来たという事はソフィア様が言ってた例の件ですの?」

「例の件?」


 思わず聞き返してしまったけれど、学園にそっくりな建物を指差しながら言う辺り……そう言う事なのだろう。

これで何となく察してしまったけれど、ソフィアはぼくに何かをさせたいのかもしれない。

もしかしてだけど学園に通わせるとか?けど今更学ぶような物は無いし……


「あら?その様子だと何で呼ばれたのか分からないみたいですわね……」

「何となく、あの学園に関しての事かなって気がするけど」

「まぁ合ってますわ、……実は私がここでやってる事もそれが理由でして、他国の文化を取り入れてみようという事で、我がマーシェンスが誇る魔導具と蒸気機関技術を紹介する事になったのですが、全然上手く行きませんの!特に我が国では蒸気を動力源にする事で様々な物を動かしつつ、そこに魔導具で付与した魔術を組み合わせる事で様々な事が出来るようになっているのですけれど、肝心の蒸気機関を動かす為の設備に悩んでおりますのよ」


 手に持ったノートに何かを書きながら、あーでもない、こーでもないと何やら言ってるけど……マーシェンスの蒸気機関とやらに詳しくないから何も言えない。

蒸気機関という物が一体どうやって動いているのかも分からないし、きっと説明されても理解する事は難しいと思う。


「んー、その顔は興味が無さそうですわね、ダリアはどうですの?」

「ん?あぁ、俺か?俺も別に今日はねぇかなぁ……、蒸気機関って言われても全然想像もつかねぇし」

「でしたら……魔導具を使用したペットとかって言ったら興味湧きませんこと?四足歩行の動物を模して造られた機械に、回路を刻んで人工的な知能を生み出し魔力を燃料に動くのですわ、マーシェンスの上流階級では人気なんですのよ?」

「人工的な知能だぁ?凄いんだろうけど何言ってんのか俺には分かんねぇよ」

「……全然興味を持って貰えませんわね」


 人工的な知能を魔導具で生み出す?いったいどうすればそのような発想が生まれるのか。

凄すぎて、全然理解が出来ない……正直人工的に機械の身体で出来た生命体を生み出してるように聞こえるし、もしその知能が感情を持つような事があったらどうなってしまうのだろうか、そう思うと興味が沸いて来る。


「いや、凄いと思うけど、もし感情とかを持つような事があったらどうするの?」

「そこは人工知能を生み出した、マスカレイドの技術を信じるしかありませんわね……一応何度かバラして組み立ててを繰り返して、内部構造の把握や回路の解析して頭には入ってますけれど、到達個体はその瞬間に回路がショートして動作を停止するようになってますわ」

「動作停止って、それってつまり自分の意思を持った瞬間に脳が焼き切れて死んでるって事じゃ……」

「人の身体で例えるとそうですわね、でもしょうがない事ですわ……マスカレイドの論文にもありましたけど『人と機械生命体の共存は、現代では不可能』という内容で締めくくられてましたもの、つまりレース様が考えた感情を持ったらどうなるの答えは過去に出ているのですわ」


 ……けど、マスカレイドは魔導人形を作成し戦場に連れて来ていたし、既に彼の身体自体で魔導具となっている以上、既にその存在は機械生命体だと言える。

特にあの戦いの後、自分の意識のバックアップを外部へと転送したという事は……感情を持つ事になっている訳で、その過去に本人が書いた論文とは矛盾しているだろう。


「って、ソフィア様を待たせてしまってるのを忘れてましたわ……今はここで積もる話をするよりも、後で終わったら改めてお話致しますわよ」

「うん、色々と興味深い話が聞けて楽しかったよ」

「それなら良かったですわ……、あっ!行かれる前に一つなのですけど、レース様達がメセリーを離れている間にミュラッカ様が辺境都市クイストにいらして、色々とお話をしましたわ、その際にダート様のご懐妊とレース様の腕の事を話したら、何時でもいいので一度ストラフィリアに来るようにと伝言を頼まれましてよ」

「……あ、そういえば結婚に関してストラフィリアでやる事があるの忘れてた、まぁ時間が出来た時に行くよ」

「それって行かない人の言葉ですわ……、取り合えず伝える事は伝えましてよ」


……ミュラッカの伝言を聞いてお礼を言った後、館の中に入ると出迎えてくれた使用人にソフィアに呼ばれて来た事を告げると、応接室へと案内される。

そして用意された紅茶とお菓子を美味しそうに食べるダリアを見ながら、ソフィアが来るのを待つのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ