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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第十章 魔導国学園騒動

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故郷への帰還

 メイディに滞在して、気が付いたら一月以上の月日が経過していた。

その間に何をしていたかと言うと、首都にいる小児や産婦人を専門としている治癒術師の元へ行き、お金を渡して教えを請うたりしたりけど……


『これ以上来ないでください、私達が惨めに感じるので』


 という意味の分からない事を言われてしまい、触りの部分しか教えて貰う事が出来なかった。

彼女達がメセリーにいた時、覚えるのに一年以上掛ったのを直ぐに覚える事が出来たのは、教えるのが上手かったからだと思うし、そういう意味でも優秀な人達なんだと思う。

なのにいったい何処が気に入らなかったのだろうか……色々と疑問に思って、本人達に聞こうとはしたけど


『……あなたには凡人の気持ちなんて分からないんでしょうね』


 という言葉が帰って来るだけだった。

だからしょうがなく、メイメイの元へ行き彼女の元でダートに渡している薬の作り方を教えて貰おうとしたけど……


『……今は薬の事よりも、お腹に子供がいるダートの側にいるべきじゃと余は思うぞ?』


 と言われ帰されてしまう。

確かにメイメイの言いたい事は分かるけど、ダートの身の回りの世話に関してはカエデやフランメが率先してやってくれてるし、それに何かあってもいいようにランが護衛に付いているから、特にやることが無い。

とはいえそのまま外をぶらぶらとしている訳にもいかないから、部屋に戻り皆と話したりして過ごしつつ、時折メイメイに呼ばれては、診療所に卸す薬の種類について話し合いをしたり、ダリアがテスターとして協力しているらしい人族向けに調整したらしい薬の効果について、治癒術師という立場からどう判断するかの相談を受ける。

そんな事を繰り返している内に、メセリーに帰る日が決まった。


「もう帰ってしまうとは残念じゃのぅ……、のぅレースよ、ダリアだけでもここに置いて行くとか出来んか?余としては友人が帰ってしまうのが寂しくてのぅ」

「何言ってんだよ、月に一回はメイディに薬を届けに来るんだろ?だったらその時に遊んだりすればいいじゃねぇか」

「……けどのぅ、対等に話し合える相手がこの国にはおらぬのじゃよ」

「アナイスとは対等に話したり出来るんじゃない?」

「奴は余の護衛じゃからな、対等の立場にはなれぬよ……それに」


 首都の外に出て冒険者ギルドへと向かいながら話をしているけど、そういえばアナイスは何処にいるのだろうか。

護衛騎士だというのにメイメイの近くにいないし……、それだと護衛とは到底言えない気がする。


「おぬしも気付いたように、アナイスは近くにはおらぬよ……、護衛騎士を任されはしたが、あやつは己が正義に正直な女じゃからのぅ、何処かで助けを呼ぶ声が聞こえたら直ぐにいなくなるのじゃ」

「それって護衛騎士の意味あるの?」

「まぁ、毎日ちゃんと首都に帰って来るから気にしとらん、それに余としてはやるべき時にしっかりと仕事をして貰えるのならそれで充分じゃよ」


 メイメイがそれでいいなら構わないけど、それで反乱に参加した人達が納得するだろうか。

略全員がアンデッドにされてしまったとはいえ、戦いに参加しなかった人もいるだろう。

その人達の事を考えたら、納得してもらえない気がする。


「……何か凄い不満がありそうな顔をしておるが、おぬしが気にするような事ではないぞ?」

「え?でもさ、反乱を起こした人達がアナイスがメイメイの近くにいない現状に納得出来るの?」

「さぁ、それは余には分からぬよ、民衆の心を察して動けと言うのは無理があるからのぅ……ただ、今まで国内で問題が起きた時に颯爽と駆けつけてくれていたSランク冒険者が護衛騎士になった瞬間、助けに来てくれなくなるよりも、国公認の護衛騎士という肩書を背負い国民を助けに現れるという方が、救国の英雄感があって良いと思うぞ?」

「そういうものなのかな」

「まぁ、そんなもんじゃよ……どんな国でも変化を求め、英雄に憧れ、非日常を夢見る者は一定数おるからな、あやつはそういう意味でも、これから先どんどん目立って貰わねばな」


 何だか凄い難しい話を聞いてしまった気がする。

特に部外者であるぼく達がそれを聞いて良いのだろうか……、もちろん無闇やたらに誰かに話したりなどはしないけど、ふとした時に口から出てしまう時があるかもしれないから、リスクを考えたら話すべきではないと思う。


「……あ、これに関しては別に話しても良いぞ?」

「え?」

「むしろ、そうやって狡猾な事を堂々と出来ると見せた方が良いからのぅ……ほれ、この国には犯罪組織が沢山あるからの、綺麗事ばかりしか言わない王よりも、そういいう姿を見せておいた方が良いのじゃよ……そうした方が、必要とあればおぬしらも道具として使うぞという意思表示になるからな」

「へぇ……」


……そんな話をしている内に冒険者ギルドに何事も無く着いたぼく達は、ここまで送ってくれたメイメイにお礼を言うと、中へと入っていく。

そしてカエデの案内の元、転移の魔導具のある部屋へと向かうと久しぶりの故郷へと帰るのだった。

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