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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第九章 戦いの中で

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戦の前の静けさ

 そして以前ケイスニルが言っていた首都を攻める日程になり、首都に滞在している冒険者や傭兵団、そして騎士達が外に出て各々が戦い前に決めた配置についている時だった。


「……なぁレース、森には近づくなって言ってもよ、さすがに人数が多すぎじゃねぇか?」

「多分、大丈夫なんじゃないかな」

「いや、普段ならそうかもしれねぇけど戦いが始まったら俺みたいに頭に血が上る奴もいるかもしれねぇだろ?」

「あんたねぇ……、戦いの時は勇ましい癖に急に日和ってんじゃないよ!あたいを見習いなあたいを!」

「おめぇみたいなのがいるから俺が冷静になろうとしてんじゃねぇかよ」


 二人が何か言い争いを始めてるけど、正直戦い前に仲間割れをするような事はやめて欲しい。


「そういえばレース、ライの形見の短剣はどうした?」

「あれなら部屋に置いてあるよ、ぼくが実戦で使ったら壊れてしまうかもしれないし」

「あぁ……おめぇ、力だけならぶっ飛んでるもんな、じゃあしょうがねぇ」


 実際は魔導具の中から出て、ぼくの部屋で待機しているライさんに返している。

そしてイヤーカフスを通じて状況を確認しつつ、ルードが弱ったり隙を見せたタイミングで参戦して不意を突いて拘束する手筈だ。

以前は討伐対象だったけれど、何故そうなったのかというと……以前のルードなら例え不死王になったとしても、その場で再び倒してしまえば良いという考えだったらしいけど、今の彼を討伐してしまいアンデッドになってしまったら手に負えない可能性があるという理由かららしい。


「あんた達、そろそろ武器を出しな……」

「ん?あぁ、もうすぐ来るのか……俺はそういう気配察知が苦手だからうらやましいわ」

「……あんたはライに頼りすぎだったんだよ、これからは別の人と組む事が増えるだろうから出来る事を増やしな」

「それはっ!……いや、うんその通りだな、レース、お前が一番準備に時間掛かるんだから早くしろよ?」

「……分かってるよ」


 心器の大剣を顕現させると杖と共にそれぞれ地面の離れた位置に突き刺す。

そして周囲に魔術で雪を生成すると、【氷雪狼】を使い心器を核にして二匹の狼を生み出し、続いて小さな土の塊を置くと氷と雪、そして周囲の土を集めて茶色い狼を作り出していく。

これもカエデの能力の応用で、彼女が魔術で作り出した土を置くことで周囲の土を集めて意思のあるゴーレムを作り出す【クリエイトゴーレム】という術があるらしいのだけれど、その意思を生み出す要素を指示で違う信号にして周囲の土だけを集める事に特化させたものだ。

そうすることで、雪と氷だけでは心配だった耐久性を土の硬度で補う事が出来るかもしれないという事で、多少の損傷程度なら周囲の土を吸収して修復出来るらしい。

ただ……問題があるとすれば


「これ……能力を解除したら消えるのかな……」

「いや、あたいに聞かれても困るよ、術者はあんたなんだから」

「……だよね」


 周囲の土を吸収しだした時に何だか変な感じがした。

能力の枠を抜け出してしまい、一つの個体として出来上がってしまったような違和感……多分だけどこの狼、完全に破壊されるとかなければずっと残ってる気がする。

そんな事を考えながら空間収納から【不壊】の効果が付与された武器、トキ曰く不壊シリーズ、略して【不壊の大剣】と【不壊の長杖】を取り出すと左手に大剣、右手に長杖を持ち茶色い狼の背に跨った。


「あんた……もう治癒術師って言うよりも、騎馬兵……いや狼に乗ってるから何て言えばいいんだろうね」

「あ?それなら……きろう、ん?」

「あぁ、騎狼って事かい……いいねその響き、あんたまるでもう騎狼兵みたいだよ……何だっけ?あんたの父ヴォルフガングも良くそうやって戦場を一人で駆け回ってたっていうし、親子って一緒に育ってなくても似るもんなんだねぇ」

「そうなんだ……って、ん?」


 何か大剣を核にした方の狼が、何故か誇らしげな顔をしてぼくの方を見ているけど……いったいどうしたのだろうか。

かと思うと、長杖を核にした方が咥えている武器で器用に顔を小突く、それでハッとしたような顔をしたかと思うと前を向いて雪で大剣を作り出して口に咥える。


「急に変な物を見たような顔をしてどうした?」

「え、あぁ……いや、何でもないよ」

「それならいいけどよ、ダリアからお前の事任されてんだからしっかりしてくれよ?」

「ダリア?あぁ……あんたがレースに喧嘩吹っ掛けて一方的に手に入れた奥さん候補だっけ?……しかしまぁ、ハスがあんな少女趣味だとは思わなかったよ、もしかして栄花であたいに武器の作成を頼みに来た時とか、あたいに対して変な事考えたりしてたんじゃないのかい?ほら、あたいは見た目は幼いからね!」

「いや……少女趣味じゃねぇし、それに体付きは子供なのに胸だけデカいのは俺の好みじゃねぇよ」


……ハスの返答に『なんだって!?あんたもう一度言ってみな!』と、喧嘩腰にトキが詰め寄るけど……何て言うか戦う前なのに緊張感が無い。

ただ、こういう時だからこそ普段通りに振る舞った方が無駄な力が抜けて良いパフォーマンスを維持できるとは言うけど本当にそれでいいんだろうか。

そう思っていると『あれを見ろ!来たぞぉ!』と誰かが声を上げる。

皆が声がした方を見るとそこには【滅尽】アナイス・アナイアレイトが森の上空にいて、その下から悍ましい程に大量のアンデッドが歩いて出て来るのだった。

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