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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第九章 戦いの中で

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冒険者達と合流

 翌日、冒険者ギルドから首都へと送られて来る冒険者達の滞在の許可を得る為に、カエデと共に薬王ショウソクのいるであろう、謁見の間に行くと……何故かアキラさんと大事な話をしていたようで……


「……お前らの好きに知ろ」


 の一言で簡単に許可を得てしまった。

アキラさんは『そちらの事はレース、貴様に任せる……だが死ぬなよ?』と心配してくれるけど、ちゃんと色々と準備をしているから大丈夫な筈だ。

取り合えずそのまま退出すると、昨日カエデと話した心器の能力を使用した……指定された範囲を相手が通ったら身体能力を劣化させる罠を設置しに行くが。


「黒い髪に青い瞳、そして特徴的な左腕……あんたが緊急依頼の書類に書いてあったレースさんかい?」

「……え?」


 爬虫類特有の眼を持った男性が話しかけてくる。

緊急依頼と言う事は多分、冒険者だと思うんだけど……


「えっと……あなたは確か【猛蛇】マダラさんですか?」

「おっとすまねぇ、自己紹介がまだだったな……この娘さんが言うように俺はマダラってんだ、そして向こうにぞろぞろと居るのが同じ依頼を受けた冒険者達だ」

「という事は今回の戦いに参加してくれる、冒険者と傭兵団の?」

「おぅ、そう言う事だな……で?俺達は何処に待機すればいいんだ?カフスの爺さんからはあんたに聞けが分かるって言ってたんだけど?」

「えっとそれなら首都内にある、住民が避難して無人となった家を使っていいと薬王ショウソクに言われてるからそこを使って欲しいかな」


 ぼくがそう答えると、マダラはお礼を言って冒険者達の元へと行くとそのまま首都の中へと入って行く。

そして今度は遠くから、昨日顔を合わせた死絶傭兵団の団員の姿が見え……


「レースの旦那!準備が出来たから来たぞ!」

「ガルシア……、それとネフィーラ」


 ガルシアが笑顔を浮かべて近づいて来たかと思うと、なぜかネフィーラがこちらを睨みつけながら着いてくる。

もしかして何かしてしまったのだろうか……。


「悪いなレースの旦那、ネフィーラがどうしても言いたい事があるって言って聞かなくてよ」

「言いたい事?」

「……あんたはあたしよりも強い!だから依頼は受けてやるよ!でもね!今度やったらあたいが勝つんだから慢心して死ぬんじゃないよ!」

「え?あ、うん」


 そう言うと一人足早に首都へと向かっていく。

更に彼女に続くように子供の獣人族達が走っていくが……


「ダンナー!今度は私と喧嘩しよーねー」

「ぼくがやるー、どれだけ高くジャンプできるか勝負しよー!」

「ぼ、ぼくはかけっこ勝負するー!」

「なら俺は大食い勝負!」


 と各々言いたいことを言葉にしながらあっと言う間に見えなくなってしまった。

それにしてもあんなに小さい子供が戦場に出る、そう思うと何だか申し訳ない気がする。


「……死絶傭兵団、私が知ってる範囲だと荒事が得意だと聞いてましたが、賑やかな人たちが多いんですね」

「まぁな……、俺もガキの頃にカーティスの旦那に拾われて育ったけど笑顔のたえない良い環境だよ」

「それを聞くと、ストラフィリアで皆さんに会った時に敵対しなくて良かったと改めて思いますね……」

「ん?あぁ……、あの時は俺達もいたけど旦那を置いて直ぐに安全な場所に避難したからなぁ、けどおかげでメセリーに新たな拠点を作れたから良かったと思うぞ?」

「確かにそうですね、そのおかげでレースさんがサリアさんと仲良くなって、死絶傭兵団が依頼を受けてくれたのですから……」


 あの時はシャルネに身体を一時的に奪われてしまっていたから、思い出すと申し訳ない気持ちになる。

取り合えず大事な話はカエデに任せておいて、周囲を見渡すけど……他には誰も来てないみたいだから多分、ガルシア達で最後なのだろうか。


「あ、そうだレースの旦那、カフスの旦那から伝言なんだけどよ」

「ん?カフスから?」

「厳選した結果、送る事が出来る人員はこれが限界だってよ……、んじゃ俺は伝える事はちゃんと伝えたから行くぞ?」

「うん……取り合えず死絶傭兵団は首都に入ってすぐの場所にちょっとボロボロになってたり壁に穴が空いてるけど、宿泊施設として使われてた建物があるからそこを使って欲しいかな」

「何で壁に穴が空いてるのか気になるけど……部屋が沢山ありそうだから助かるわ、んじゃ……もういいよな?後は戦いが始まったら活躍させて貰うからレースの旦那、俺達を頼ってくれよな」


……そうしてガルシアと別れた後、カエデと相談しながら目ぼしい場所に魔術を使ってもらい心器の能力で【指示】を出す。

これで今のぼく達に出来る事は終わった……後はハスとトキと話し合ってルードと対峙した時の動きを相談するだけかと思いながら、ぼく達も首都へと帰るとカエデをメイメイの部屋へと送り、二人が待機してくれている訓練場へと向かう。

そして各々の役割を確認すると、来るべき戦いの日へと向けてゆっくりと身体を休めるのだった。

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