束の間のひと時
あの後部屋に帰ったぼく達は、今日あった事を皆と話してメイメイに見守られながらゆっくりと家族の時間を過ごす。
その最中に……
「余も弟がいたら、家族の時間を過ごせたのかもしれんのじゃなぁ……少しだけあこがれるのじゃ」
「あ?それなら俺が定期的に来て遊んでやるから安心しろよ」
「……ダリア?」
「俺達はもう友達だろ?、何だったらおめぇも暇があったら何時でも来いよ」
「それなら毎月、薬をレースの診療所に届ける約束があるからの、その時は沢山遊ぶのじゃ!」
とダリアとメイメイが楽しそうに話していたけど……、それを見て楽しそうな顔をしているダートが彼女を見て
「メイメイちゃん、それなら子供が産まれたら抱っこしに来る?」
「それは興味あるのじゃ、なら早く大きくなって産まれるような薬を作ろうかのぅ」
「いや、それは止めて欲しいかな……今の妊娠時の症状を抑える薬だけで充分だよ」
「そうかの?ならそれを改良しておくのじゃ、例えば服用する事で効果がある間は魔力の障壁を生成するとかどうじゃ?転倒した際に赤子を守れるのじゃよ……どうじゃ?」
「……それは欲しいかも、だって私達の家って階段が結構あるからもしもの事があったら嫌だし」
……黙って聞いてて思ったけど、確かにあの家は階段が多い気がする。
居住スペースに行くのに外からは階段を上って二回に行かなければいけないし、診療所からもそうだ。
それに……将来子供が出来た時用にと増設した三階部分もそうだし、これはこの仕事が終わってメセリーの家に帰ったら色々と内装に手を加えた方がいいかもしれない。
例えば階段の壁際にも手すりを付けて上り下りしやすくするとか、けどそれだと子供が産まれた時はどうすればいいのだろうか、赤ん坊を抱いて階段を移動するのって手すりがあっても難しい気がする。
躓いたり足を踏み外した場合とかを考えると余りにも危ないと思うし、そこで打ち所が悪かったら母子共に重傷を負ってしまうだろう。
とはいえ直ぐに治癒術を使う事で治す事は出来るだろうけど、小さい子供に使った事が無いから何処まで効果があるのか想像が出来ない。
……こういう時、新生児や小児関係の治癒術を修めといた方が良かったと後悔する。
これも無事に家に帰れたら、母さんに頭を下げて教えて貰うべきだろう、けどそれと同時にメイメイなら何らかの薬を作ってくれるかもしれないから、まずは確認をしてみるべきか。
「……メイメイ、例えばなんだけどさ、小さい子供の身を守る薬とかって作れたりする?」
「身を守る薬じゃと?ちょっと何を言ってるのか分からんのじゃが……」
「ほら、ダートも言ってたけどぼく達の家って階段が多いからさ、一応使用人がいるから大丈夫だとは思うけど、もしもの事があったら嫌だからそういう時の為に便利な薬があったらなぁって」
「確かに余なら作れはすると思うのじゃが、どんな副作用があるか分からんからのぅ、正直お勧めは出来んのじゃよ……さすがに新生児を集めて新薬のテスターをするなんて非人道的な行為を一国の姫がする訳にはいかぬでな」
確かにそうだ、ぼくだって新生児を集めて新薬のテスターをするって言われたら止めるだろうし……実際に既に行われていたりしたら彼女を軽蔑したと思う。
とはいえ昔の彼女ならしていたと思うけど……今のメイメイがやってないのならそれでいい。
「レースさん、それならミオラーム様にお願いしてみたらどうですか?」
「ミオラームに?」
「彼女に専用の魔導具を作って貰うとか……、とはいえ魔力の補充をどうするかですが、怪我をする程の大きな衝撃を受けるような事があったら自動的に守ってくれるのとかどうでしょう」
「……良いとは思うけど、誰が魔導具に魔力の補充をするの?」
「それなら私がやろうかな、ほら子供が産まれたら大きくなるまで遠出出来ないし……その間魔力を使ったりしなかったら、感覚も鈍ってしまうから運動がてらに?」
カエデの提案にダートがそう答えるけど、一人だけに負担を掛ける訳にはいかないからぼくもやるべきだと思う。
だって……二人の子供なのに、片方だけに責任を押し付けるのは違うし、そんな事をしたら父親がいなくても良くなってしまう気がする。
仕事をしてお金を稼ぐのは大事だと思うけど、それだけしかしなくて家族の時間をないがしろにするのは違う筈だ。
「いや、ぼくもやるよ……ダートだけに任せるよりも二人でやりたいし」
「そう?それならお願いね……じゃあ私はどうしようかな」
「んー、コルクの所に行ったりとか、余裕があったら診療所の仕事手伝ってくれたりとか、やりたい事をやっていいと思う……その時はぼくが送り迎えするから一緒に行こうか」
「……ん、ありがと」
……そんなやり取りをしながら一日が終わっていく。
戦いが終わった後の事を言い過ぎるのは良くないとは言うけど、これからの事を考えるのは必要だと思う。
そう思いながら、メイメイにダートの事を任せて一人で部屋に戻り明日に備えて眠るのだった。




