依頼の打ち合わせ
あの後、全員で応接室に移動するとガルシアが意識を失っているネフィーラを空いてるソファの上に寝かせて事の経緯を詳しく説明した。
その際に死絶傭兵団が緊急依頼に参加する事を、カフスに説明すると嬉しそうな顔をして『あの死絶傭兵団の団員を破格な金額で雇えるなんてありがとうございます』お礼を言われたけど……、訓練場を壊してしまった引け目があるおかげで何て反応すればいいのか分からないまま時が過ぎ、今は死絶傭兵団が準備の為に一度メイディの拠点へと帰り、施設内にある会議室で緊急依頼に参加する冒険者達と顔合わせを行っている。
「──以上で、現在今回の依頼に参加する冒険者達は以上となります」
「これってぼくが同席する必要あったのかな」
「勿論ありますとも、今回の件についての立案者はレースさんですからな……栄花騎士団が依頼料を負担するとはいえ、この目でしっかりと相手を見て依頼を受ける冒険者が果たして信頼の置ける人物かどうか確認するのは必要ですからな……して、レースさんから見て彼らはどうでしたかな?」
「獣人族やエルフ族ばかりだったから何とも言えないけど、まさか首都以外からも冒険者が来るなんて思わなかったよ」
「首都の冒険者ギルドが緊急依頼を出す何て事は滅多に無いですからな、きっと興味本位で来たのでしょう、ただ実力はモンスター討伐の依頼を率先して受ける高ランク冒険者なのでおすすめですよ」
お勧めと言われても、死絶傭兵団の人達のように実力を知ってる訳じゃないから、そう言われても説得力がない。
とはいえ……他のギルド所属の【黒縄】ヴォイドと名乗った黒い体毛に全身を包まれ、狼のような頭部を持った狼の獣人、彼はただ敵味方関係なく戦う場所が欲しいという理由だったから今回はいない方がいいだろう。
他にも【霧女】ウィドゥというエルフ族の女性もそうだ……、亡くなった夫の変わりになってくれる男性を捕まえる為に参加したいと言われたけど、 戦場はそんな出会いの場ではないから幾ら強くても、そんな不純な事情で来てほしくない。
それに……全身が白い霧のような物に包まれていて本人がエルフ族とは言っていたけど本当にそうなのか分からないし、退出する時もその場からスーッと姿が薄くなっていき消えてしまったから、モンスター……いや、エルフ族を騙る亜人なんじゃないかなって思ってしまう。
「……確かにお勧めかもしれませんけど、理由が不順だったり危険な人は止めた方がいいかもですね、高ランク冒険者なら信用問題に関して敏感だから問題ないとは思いますがやはり不安は隠せません、それに低ランク冒険者で傭兵団の団員で無い人も止めた方がいいと思います」
「おや、それはどうしてですかな?カエデさん」
「……今回の戦いの相手は、復活した伝説のモンスター【マンティコア】です、高ランク冒険者とはいえ統率を乱す可能性がある人物が参加した場合、捕食され対象の能力を上げてしまう可能性があります」
「……マンティコアについては先程話してる時に教えて頂きましたが、高ランク冒険者を捕食できる実力を持っているのですか、マンティコアの元になった人物がメセリーの元Aランク冒険者【死人使い】ルード・フェレスだとは聞いていましたが……死霊術師はアンデッドを使役するのがメインで本人の戦闘能力はそこまで高くなかった筈では?」
……昔のルードならその認識であっていたと思う。
亡くなった両親の死体を一つの身体として組み合わせたアンデッドを切り札をしていた時は、まだ戦闘に慣れていないぼくでも治癒術を使って何とかすることが出来たけど今のルードならそんな事は無理だろう、それほどまでに実力が変わっている筈だ。
「……その考えは止めた方が良いと思います、彼は栄花騎士団の一部の者のみが使える【心器】と言われる技術を習得していると共に、マンティコアです……この国にはドラゴンと呼ばれるモンスターの頂点に位置するモンスターや、巨人族と呼ばれるドラゴンと敵対している人と同じ知性を持ち条件次第ではドラゴンを討伐し捕食する人型のモンスターがいます、彼がその種族を倒し捕食していた場合……」
「……さすがにそれは無理では無いですか?相手はドラゴンと巨人族ですよ?」
「あり得ると思うよ?現にドラゴンや巨人族をアンデッドにして使役してるのを、この国で遭遇した時に見たし」
「……それは困りましたね、カエデさんにレースさん、貴重なお話をありがとうございます……その情報を元に参加する冒険者を吟味させて頂き、随時首都へと送らせて頂きます」
「えぇ、カフスさんお願いします……ではレースさん、首都に戻りましょう、後私達が出来る事はルード達が攻めて来るまで体調を維持する事だけです」
……そう言ってカエデが立ち上がるとカフスに向かって頭を下げた後にぼくの手を取って歩き出す。
そして会議室を出ると、そのまま冒険者ギルドを出たぼく達は徒歩で首都へと戻るのだった




