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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第九章 戦いの中で

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書庫の奥へと……

 書庫の奥に向かう道中でランが、絵の描かれた本を読んでいる姿が見える。

人が沢山書かれて文字が描かれているけどあれは何だろうか……。


「ん?あれが気になるのじゃ?」

「うん、見た事無い本だなって……」

「あれはマンガというものでのぅ、遥か昔に転移して来た物が広めようとしたんじゃが……技術的な問題で廃れた本なのじゃよ」

「それがどうしてここにあるの?」

「そりゃあ、ここには全世界の情報が揃っておるからのぅ……、書庫の中央にある大きな本があるじゃろ?あれは複数の本の精霊の集合体で過去から今に至るまで誰かが作成した本を複製し続けているのじゃよ」


 あの本って精霊だったのか、でも複製された物はどうなんだろう。

手に取った時は材質はぼくの知っているのと変わらなかったけど、もしあれが精霊だった場合見分けがつかない気がする。


「という事はここの本も精霊なの?」

「そうじゃな、自ら人に見える程に強力な能力を持った精霊達じゃが……何分こ奴らは自ら本になる事を望んだ物好き達じゃからなぁ、しかも内容は様々な国の国家機密まである以上こうやって書庫で管理するしかないのじゃよ」

「……という事はもしかして、ぼくが作った治癒術を纏めたノートとかもあるの?」

「それはどうじゃろうなぁ、本ではなくノートに書いた内容なのじゃろ?まぁ……こ奴らが興味を持ったら本棚の何処かにあるとは思うが、この莫大な量の中から探せと言うのは無理があると思うのじゃよ」


 確かに壁一面が本棚になっているし、室内も読書スペース以外は所狭しと並んでいる。

この中で探すとなったら一体何日かかるのだろうか。


「しかも、ここには空間を司る精霊もおるからのぅ……、この近辺はジャンル別に許可された職員の手で分けられておるが、奥の方……余等が向かっている場所になると酷い事になっておるぞ?なんせ精霊達は本が完成したら適当に本棚に突っ込むからな」

「説明は良いけどよぉ、さっさと奥に行こうぜ?」

「そんなせくでないダリアよ、レースはここに来るのは初めてなのじゃよ?このような状況とはいえ観光位はさせてやりたいのじゃよ」

「……気持ちは嬉しいけど、観光よりも今は直ぐにダート達に会いたいかな」

「なんじゃつまらんのぅ、取り合えずこのまま待つ直ぐ進めば目的の場所に着くのじゃよ、そろそろ周りの風景が変わるから驚くでないぞ?」


 風景が変わる?雰囲気じゃなくて……?、そう思いながら歩いていると明るい書庫の室内がいきなり薄暗くなり、本が乱雑に山積みにされた場所に変わる。

埃をかぶった本棚に、古い本独特の匂いが喉を刺激して軽く咳き込みそうになるけど……


「この古本の匂い……嫌いじゃないかも」

「そうかぁ?俺は埃まみれであんまし良い気持ちしねぇけどな……」

「書庫の奥は王族しか入れないせいで、掃除の手も届かずにこのありさまじゃからのぅ、嫌な思いをさせて申し訳ないのじゃよ」

「別に嫌な思いはしてないけど、掃除の精霊とかっていないの?」

「いたら良いのじゃけどなぁ……あ奴らに掃除という概念は無いからのぅ、まぁ例外が無くも無いのじゃが」


 例外という事は何らかの方法を使う事で、掃除が出来る精霊とかが産まれたりするのだろうか。


「……例外?」

「うむ、精霊とはメイディの環境と自然に存在する魔力から産まれる事が多いのじゃが、別に条件さえ整えれば何処の国でも発生するのじゃよ、ただのぅそれ以外にも方法があってな?長く生きたエルフ族が正しく寿命を迎えた場合、体はその地に根付き大樹となり、魂は精霊へと昇華するのじゃが……この世界では数える程しか起きておらんからのぅ」

「数える程って事は……何体かいたりするの?」

「あぁ、おるぞ?おぬしも会った事ある人物で言うと【滅尽】焔の炎姫、アナイス・アナイアレイトの精霊【焔美】、こやつはとても嫉妬深い奴でのぅ……自身よりも強い精霊の存在を許せない面倒な奴じゃ、変わりにアナイスが認めた相手には自身の身体を分けて生み出した高位精霊を与えたりと面倒見が良い所もあるのぅ」

「……ガイストの使役している精霊が確かそうだった気がする」


 ガイストが全身に纏っていた精霊がそうだった記憶があるけど、ストラフィリアに居た時からかなり時が経っているせいでかなりうろ覚えだ。

でも【神器開放】を行い、その身をストラフィリアの神【ディザスティア】に変えたヴォルフガング・ストラフィリアを一撃で葬り去る一撃を放った辺り、かなりの力を持っているのは分かる。

あれが分体という事は本体である精霊、確か以前ダリアから聞いた時は神霊という特別な存在……少し前に実際に森を一瞬で滅ぼした姿をこの目で見ているから理解出来るけど、ぼく達ではどうやっても勝ち目がないだろう。


「そうじゃな……、後は他には父が使役している大樹の精霊がおるが、こやつはこの首都となっている神の身体に寄生する形で産まれたからのぅ、簡易的ではあるがこの首都その物を動かす事が出来るという意味では本物の化け物じゃな」

「へぇ……」

「なんじゃ興味がなさそうじゃな、まぁ良いが……とりあえず目的の場所に着いたのじゃよ」


……メイメイが一つの本棚の前に立ち止まると、ゆっくりとした動作で床に落ちている本を拾い開いているスペースへと押し込む。

すると……ゆっくりと本棚が床へと沈んでいき、ぼく達の目の前に古びた鉄の扉が現れるのだった。

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