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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第九章 戦いの中で

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圧倒する獣

 大戦斧を大剣で受けると不壊の効果がある筈なのに、大剣が軋むような音がする。

それと同時に衝撃のあった箇所から魔力が爆ぜて小さな爆発が起きたかと思うと、爆風で身体が持ち上げられてしまうが武器の重さのお陰で体制を崩さずに済む。


「なるほど、武器が壊れなかったら攻撃時の衝撃が爆発になるわけだね」

「そんな嬉しそうに言われても辛いんだけど……」

「辛いってあんた男だろ?これくらい気合いで耐えなよ!」

「そんな無茶ぶりをされても困るよ……」

「心器を使っても文句は言わないでおいてあげるからさ!長杖と長剣を使いなよ、あれを雪のゴーレムにするんだろ?」


 似たようなものだけど能力で生み出してるから違う気がする。

でも……以前雪で作ったゴーレムを使った事があるけど、狼の方はぼくの意思とは違って自由に動くから正直使いづらい気がする。


「じゃあ使うけど……」


 壁に弾き飛ばされたままになっていた大剣と背中の長杖に魔力の糸を通すと、長剣の能力【氷雪狼】を使い二匹の狼を生み出す。

ここ最近の戦闘訓練のおかげで、雪を周囲に展開しなくても周囲の魔力を使って作り出せるようになった。

それに……何とか二体まで出せるようになったのも大きいと思う、ただ問題は言う事を聞いてくれないで自由に動く事かな……。


「へぇ、ハスから聞いてはいたけど二体まで出せるんだねぇ」

「でも言う事聞いてくれないんだけどね……」

「そこは制御出来ないみたいだね、能力は使えば使う程練度が上がるからもっと試してみるといいかな、……これは栄花騎士団の資料庫にある情報で表にはあんまり出しちゃいけないんだけどね、使い込むと最終的には心器を顕現させなくても使えるようになるみたいだよ」


 そう言いながら飛び掛かってきた大剣を核にして生まれた狼を大戦斧で薙ぎ払うと、上から振り下ろして首を叩き切ろうとする。

けど心器に阻まれて途中で止まってしまうが、同時に魔力が爆ぜて周囲の雪を弾き飛ばしてしまう。


「んー、あんたの能力は強いけど耐久性に問題があるねぇ、いくら強くても指示を聞いてくれないなら持ち腐れだよ」

「でもぼくが指示をしなくても自分の意思で動いてくれるのって便利じゃない?」

「そうかもしれないけどさ、これじゃあ折角本気を出して戦おうとしてんのに味気ないじゃないか、もう一体何てあんたの守るように周囲を歩いてて攻めて来る気無いみたいだしつまんないから試しに指示してみな」

「えっと……、じゃあ」


 多分だけど、守ってくれてる狼の方はぼくの安全が確保出来なければ動こうとしないだろう。

そんな気がするから、大剣の能力である【大雪原】を使って訓練場の床を雪で覆うと長杖に魔力を集中して、武骨な見た目のゴーレムを複数体作り出して守りを固めると、頭の中で前に出るように指示を出す。

何度か心配そうな仕草をしてこっちを見ると、小さく鳴いて【怪力】の能力を発動させる時に起きる赤い魔力を全身に纏うとトキへと向かっていく。


「へぇ、これは強そうだ……ぐえっ!?」

「トキさん!?」

「な、何て威力してるんだいこの狼は!」


 飛び掛かると同時に作られた氷の長杖を口に咥えると、それを横振りにして大戦斧に何度も叩きつける。

その度にトキから苦しそうな声が出るが、彼女が圧される何ていったいあの攻撃にはどれくらいの威力があるのだろうか……。


「あの大剣を核にされた図体だけで、ぐえ、奴より強いじゃないかい!この!あ、ごめん無理!レース能力を解いてくれ!」


 トキの焦ったような声を聞いて急いで能力を解こうとすると、いつの間にか狼が加えている長杖の先に【魔力暴走】を使っているのか、雪の結晶が何個も連なるように重なって展開されている。


「いや、これは本当にヤバいから!」

「今解いてるから少しだけ待ってて!」

「は、はや……ぐえっ!」


 狼が反転して赤くなった氷で覆われた尻尾を薙ぎ払うと、金属に当たったとは思えない程に重い音がしたかと思うと壁まで飛ばされてしまう。

そして長杖に展開されていた雪の結晶が狼の後ろに広がり、そこから先端が螺旋状に尖った氷の槍が精製されたところで解除が間に合い魔力に戻ると、氷の槍だけがその場に落ちて地面を揺らす。


「……死ぬかと思った」

「何ていうかごめん」


 まだ起き上がれないのか、全身から汗をかいて座っているトキが大戦斧を床に置いてお腹を抑えている。


「いや、あたいがやれって言ったんだからいいよ、でも……あたいはSランク相当の実力があった筈なんだけどね、自信が無くなりそうだよ」

「能力が限界に達したらSランクじゃないの?」

「それなら条件次第では誰でもなれるし、あんたも限界に達した時点でSランクだよ……、あれはね限界の先にいる本物の化け物だよ、決して本気を出させちゃいけない連中さ」

「それってどういう……?」

「これは能力が限界に達した事が無いと分からないと思うんだけどね……、二つ目の魔力特性が手に入るのは知ってると思うんだけど、ここから言う事は世界の禁忌に触れるからちょっと魔導具を使わせてもらうよ」


……トキがポーチから鈴のような形をした魔導具を取り出すと数回鳴らす。

すると一回目で周囲の音が消え、2回目で空気が静まり、3回目で視界が消えて『これはね、隠蔽の魔導具と言ってね鳴らす回数で効果が変わるんだよ……、じゃあ話すけど、限界のその先にある物が何かだけどね』と真剣な顔をして語るのだった。

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