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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第八章 戦いの先にある未来

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書庫での出会い

 何でここにライさんがいるのだろうか。

書庫の扉を開けておくとは言っていたけど、それって入っていいのはぼくだけだと思っていたけど、もしかし勘違いしていたのかもしれない。


「ん?どうした?」

「いや……、書庫に入れるのはぼくだけだと思ってたから驚いてしまって」

「なるほど、確かにそれなら驚くのもしょうがないな」

「いえ、ぼくが勝手に勘違いしてただけなので……」

「それでも嫌な思いをさせたのは確かだろう、すまないね」


 何故かこちらに向かって謝罪をしたかと思うと本を手に取って椅子に近づくと、ぼくの方を見て椅子を引く。

多分だけど、座って話そうって言う事なのかなと思って椅子に座ると正解だったみたいで、ライさんが正面の椅子に腰を下ろす。


「無理に丁寧な言葉遣いをしないでいいから安心して欲しい、……さて昨日アキラから何があったか聞いてね、ここにマスカレイドが読んで凶行に及ぶ原因になった本を探しに来たのだろう?」

「ありがとうございます……、えっともしかしてだけど探してくれてたの?」

「あぁ、協力要請に応じて貰った以上タダ働きをさせる訳にはいかないからね、早朝から書庫でこうやって探していたのだけれど、さすがにこの本の数に参ってしまったわけさ」


 初めてライさんを会った時みたいに気さくな感じを受けるけど、多分ぼくを安心させる為に砕けた感じを作ってくれているのだろう。

とは言え、早朝から探してくれていたというけど……昨日森で別れた後どうなったのか分からないからどう反応すればいいのか……。

あの後ドラゴンやオーガと呼ばれるモンスター達と戦闘をしていた場合、結構疲れているだろうし、出来れば無理せず休んで貰いたいのだけれど……


「……君はアキラが言っていたように感情が直ぐに顔に出るようだ、何か言いたい事があるのかな」

「あ、えっと、昨日別れた後ってどうなったの?」

「ん?あぁその事か、あの後はハスが満足するまで戦闘に付き合って夜に帰って来た感じかな……、あいつとはまぁ子供の頃からの付き合いなのだが当時から戦う事が好きな奴でね、定期的にあぁやってガス抜きさせてやる必要があるんだよ」

「そうなんだ……、あれ?でも確かハスさんって、以前会ったアキさんのお兄さんじゃなかった?」

「へぇ……良く覚えてるんだな、あの二人は双子でね……当時は大人しくて引っ込み思案なアキと人見知りせずに感情のままに動くハスって感じでまるで正反対だったよ」


 アキって凄い真面目で厳しい人だった記憶があるから、子供の頃の印象と比べると違い過ぎて想像が出来ない。

……何て言うか話していて思うけど精錬された仕草というか、貴族と接している気がする。


「変な事聞くと思うんだけど……、もしかしてライさんって貴族だったりする?」

「ん?あぁ、いきなり何を聞くのかと思ったらそういう事か……、その通り俺は栄花の貴族だがそれがどうかしたのかな?」

「いや……、仕草が精錬されているし、こちらを気遣ってくれるたりと凄い落ち着いた感じの人だなって感じたから、でもカエデみたいに着物は着ないんだね」

「なるほど……、とは言え人から直接印象を言われるのは慣れてないから気恥ずかしいものがあるな、着物はあれは見た目は美しいとは思うけど……俺の好みでは無いからね、このようにマーシェンスやメセリーの貴族が着る紳士服の方が個人的には好ましくてね」

「……栄花の貴族の人って全員着物を着てるのかと思ってたよ」

「基本的にその認識で間違いでは無いから安心していい、さて……休憩も済んだ事だしレース君の探している本を探そうと思うのだけどいいかな?」


 その問いに賛成して、椅子から立ち上がると二人で目当ての本を探し始める。

……とはいえこうやって話してる間にも、書庫の中央で本が作られているようで出来上がった物がどんどん本棚に収まって行くから時間が経つ程探すのが難しくなりそうだ。


「……レース君、これはどうだい?エルフ族の歴史について書かれた本を見つけたのだが」

「ありがとう、ちょっと読んでみるよ」


 受け取って本をその場で読んでみると違和感を感じる。

まるで意図的に内容を改編されたかのようで……、メランフィーナの事を賛美し讃える内容から始まり、最後に滅びた神が信仰を集める事で再び蘇り我らを導くという内容だけど、これではまるで歴史では無く預言書だ。


「……歴史じゃなくて妄想が書きなぐられた変な本だね」

「外れだったか……、とは言えそのような本が何故書庫にあるのか不思議だね」

「それに何だか途中から内容が変わってるのも変だ、本その物が改編されているのかと思ったけど違うし……、何というか偽装の魔導具を使った時と同じような違和感を感じて気持ち悪い」

「偽装の魔導具?成程……レース君その本を貸してくれるかな」

「え?あ、はい」


……言われるがままに本をライさんに渡すと手から雷を発生させる。

いったい何をするのかと思っていると……『やはりか……、レース君の言うようにこの本全体に魔導具に刻むのと同じ回路が組み込まれていて、周囲の魔力を消費する事で内容を偽装するようになっているようだね、一応確認だが思い当たる人物はいるかい?』と聞かれて、脳裏に【黎明】マスカレイド・ハルサーの姿が浮かぶのだった。


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