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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第八章 戦いの先にある未来

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薬膳料理と書庫

 あの後、やり取りに関しては先に戻っていたダート達がメイメイとダリアに伝えて置いてくれておかげで、特に何事も無く雑談だけして解散したけど、ダリアの件に対しての事を聞くのを忘れて次の日になっていた。


「……これは困った」


 今はメイメイが用意してくれた客室のベッドで横になっているけれど、何て言うかダートの寝相で悪くて腕がアームロック状態になっているのには慣れたのに、それ以上の事になる何て予想は出来ないというか……、まさかカエデまで寝相が悪い何て思わなかった。

確かに彼女の部屋には色んなサイズの人形があったけど、抱き枕として使われるのは予想外だ。

とは言え同じ部屋で寝るようになってからそんな傾向無かったのに、いったいどうしたのだろう……、何て言うか子供が親に甘えるような仕草でちょっとかわいい気がする。

そんな事を思いながら左腕で彼女の頭を撫でようとするけど……、素材が金属で出来ている以上は痛いだろうから我慢して何とか身体を動かしながらベッドから出ると、メイメイが用意してくれた薬を飲む。


「……暫く栄養を経口摂取で来てなかったからこの薬を飲めって事だけど、森の中で食べたんだよなぁ」


 この薬を飲む事で、食事を取っても身体に負担が掛からなくなるらしいけど……、こんな便利な薬をどうやって作ったのだろうか。

どのように配合したらそのような薬になるのか分からない、薬神メランティーナとしての知識や能力によって出来る物だったりしたら、この時代の人間では再現できないのかもしれない。

とは言え……、そんな彼女から定期的に薬を届けて貰えるようになったのは凄い有難い事で、もしかしたら今の医療技術では対応出来ない症状もメイメイに伝える事で新たな薬を作り出せて、救える患者が増えるかも、そう思うとダリアと仲良くなってくれて良かったと思う。


「とりあえず二人はこのままにしておいて、最上階にあるらしい書庫に行こうかな」


 先程まで横になっていたベッドを見るとカエデが幼い子がするような仕草をしながらダートに抱き着いていて、ダートもそんなカエデを優しく抱きしめているけど……、暫くしたらぼくにしたように関節を締め上げるだろうから、そうなったら勝手に起きるだろう。

それに……テーブルの上に目が覚めたら食べるようにとぼく宛ての手紙と共に、何だかカエデが偶に持ってきてくれる栄花のお菓子で饅頭と呼ばれている物と似ている食べ物が置いてある。

取り合えず食べて見ると……、中には餡子では無く肉汁と共に独特な風味の何て言うか薬のような独特な味がするけど、予想以上に美味しくて驚きが隠せない。

何て言うか食べれば食べる程お腹が空いて来て、手が止められなくなって来る。


「……メイディには薬膳料理と呼ばれる、食べる薬のような物があるって聞いたけどこれがそうなのかな、それに何だか身体が温かくなって来たって言うか不思議な感じがする」


 もっと食べようと思っていたら何時の間にか無くなってしまっていて凄い残念な気持ちになる。

多分だけどメイメイがぼくの体調を考えて特別に作ってくれたんだと思うけど、いったいどうやって作ったのだろうか、ケイスニルの事が終わって時間が出来た時に作り方を教わって作れるようになってみたい……、まぁサリッサに料理してる所がバレたら何か言われそうだけど、その時はこれは治癒術に必要な物だって言えば説得できるだろう。

そう思いながら食器を一つにまとめると、誰もいないのに浮き上がりゆっくりと扉へと飛んで行くと、ゆっくりと扉が開き何処かへと運ばれていく。


「あれが精霊なのかな……、精霊術の才能がある人だと姿が見えるらしいけど、見えない辺りぼくには使えないみたいだ」


 ……そんな事を思いながら部屋を出ると首都の最上階へ向かって歩き出す。

確か謁見の間の近くにある階段を上がって行けばいいらしいけど、大樹の中に螺旋階段を作るって何だか不思議な感じだ。

首都に使われているこの大樹は今も生きて成長を続けているらしいし、最上階となると……天に届く程の高さだったから多分、雲の上に出るのかもしれない。


「……えっと、扉が開いてるって事はここかな?」


 階段を上がっていると優しい光が差し込んで来たかと思ったら、開いた扉が現れ……とりあえず中に入ると……、天井は葉で覆われ太陽の光を隙間から通して幻想的な雰囲気を出しながらも、周囲には人工の壁があり見えない何かが、書庫の中央に置かれた本に何かを書き続けているという不思議な光景があった。

そして壁が本棚になっているのか数えきれない程の本が壁一面にあり、部屋全体にも木で作られた本棚と読む為に用意されているらしいテーブルと椅子、何て言うかこの場所にいればこの世界の全ての知識が手に入るんじゃないか、というそんな思いが浮かび上がる程だ。


「それにしてもこの中からマスカレイドが読んだ本を探すのか……、気が遠くなりそう」


……そう思いながら周囲の本を適当に手に取ろうとしたら、『ん?君は確か……レース君だったね』という声が聞こえる。

ぼく以外には誰もいないと思っていたから、驚いて声のした方を見ると……昨日森で出会った栄花騎士団最高幹部のライさんがいるのだった。


「」

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