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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第八章 戦いの先にある未来

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思い付きの術と切り札

 全力で叩きつけた大剣が二人の間に現れた氷の柱にあたり粉々に砕けたかと思うと、瞬時に再生ぼくの周囲を覆う。

そして逃げ場が無くなった所を氷の刀が壁事串刺しにしようと貫く。

避けれそうにないから武器で受けようとしたら、狼が何を考えたのかぼくに体当たりをして突き飛ばす。

いきなりの事に受け身も取れずに氷と雪に覆われた床に倒れ込むと長杖を使って急いで起き上がり、何が起きたのか確認する……、そして目の前に見えた光景は


「……狼のおかげで命拾いしたな、今の一撃で終わるものかと思っていたのだが」

「っ!」

「何を驚いた顔をしている?まさか本当に命を奪いに来るとは思ってなかったのか?」


 そんな訳はないけど、今の一瞬で分かってしまった事がある。

今のぼくの実力では間違いなくアキラに勝てない、何時魔術を使ったのか分からない程の速さで発動した氷の魔術からのカウンター、そしてそこからの必殺の一撃。

今のは狼が守ってくれたから生きていられたけど、次同じ状況になったらどうしようもないだろう。

ならどうすればいいのか……


「まさかとは思うが、今の一撃で実力差が分かったから勝てない、私を納得させられないというのでは無いだろうな?」

「……そんな事は無いよ、ただどうやって今の反撃に対応すればいいのか考えているだけかな」

「考えている?格上との実戦でか?……愚か者め、実戦では悩み迷いを抱いた者ほど早く死ぬ、そもそも考える余裕や読み合いとはお互いに実力が近いからこそ発生する者だ、自分よりも強い相手に立ち止まって考える時間が生まれるという事は、そいつが貴様の事を格下だと思って油断しているか、そもそも遊ばれている時位だ」

「……じゃあアキラさんは?」

「試練を与える以上、時間を与える余裕位はある……、まぁ格下だと思われていると思え」


 そんな事を言われても今のぼくに出来る事は会話をしながら自分に有利な状況を作って行く事だけ、……こうしている間に使えるようになった大剣の能力、【大雪原】を使って氷に覆われた床を一面雪で覆いつくしたはいいけど、ここで今出来る事はケイとの修業のお陰で使えるようになった武術か、それとも【自動迎撃】を使ったカウンターか……。

これがいいのか、それともあれだとうかと考えるけど、アキラさんの言うように格上との戦闘中にこんなに考える時間なんて相手は与えてくれないだろう。

現にトレーディアスでゴスペルに襲われた時は一瞬で意識を失ってしまったし、グロウフェレスと戦った時は相手がぼくの事を格下だと思っていたからこそ、あの不意打ちが効いた。

では……格上相手に勝利を収める事が出来た時はどんな時だっただろうか、クラウズ王の時は確か新術の雪のゴーレムを使って勝ったけど……ん?思い付き?、心器を核にしたゴーレム、大剣の能力【氷雪狼】で召喚される狼に心器を埋め込んだら?……試してみてもいいかもしれない。


「ほう、何か考え付いたようだな?、だがそれまでの思考時間が長過ぎる次からは止まって考えずに戦いながら冷静に状況を見ながら考えろ、それが出来て初めて一流だ」

「……はい」

「とりあえず話はここまでだ、ここからは確実に殺しに行くぞ」

 

 アキラさんが刀を床に突き刺すと――


【我は終焉にて種の管理を任されし、天の神より作られた六の翼の五】


 以前ジラルド達とアキラさんが戦って時に唱えていた詠唱は、前半が聞き取れないほどに声が小さかったけど今はしっかりと聞こえ、ぼくを覆うように氷の結晶を象った魔法陣が現れると青白い輝きを放ちながら周囲の気温を恐ろしい速度で下げていく。

その光景に身体が恐怖で凍えてしまいそうなり、本能的な恐怖に足がすくみそうになるけど、気力を振り絞り、雪の長杖に魔力の糸を括り付けて床に突き立てると……


【死よりも静謐な氷の安息の元に……】


 周囲の雪が集まって行き、心器を取り込んだ一匹の巨大な狼が生まれ、雪で出来た身体の周囲を氷が徐々に覆い先端が鋭く尖った氷が鎧のようになると遠吠えをしながら、一瞬でぼくの前に現れたかと思うと前脚を使って器用にぼくの背中へと投げて乗せてくれる。

……思い付きでやりはしたけど、もしかして今の移動は長杖の能力【空間移動】に似ているのを見る限り、取り込んだ事で使える力が増えたのかもしれない。

と言う事はもしかしてと思い、心の中で【魔力暴走】を使うように指示して見ると、その場で姿勢を低くして口を大きく開き、周囲の雪を吸い込みながら恐ろしい速度で魔力の光が集まり雪の結晶が作られて行く。


【再び目覚めの時が訪れるまで眠れ、アイスレクイエム】


……それに合わせるかのように詠唱を終えて術名を唱えると、魔法陣から氷の棘が無数に飛び出して立体的な氷の結晶を作り上げていく。

以前見た物とは違い、ぼくを閉じ込めるようにして成長して行く術に対して、このまま何も出来ずにいると確実に死ぬ事になると頭の中で警報が鳴る。

その瞬間何も考えられなくなり、感情に任せて背から飛び降りると同時に狼の口から吐き出された巨大な雪の結晶の形をした魔力の塊の後ろに続いてアキラさんへと向かい走るのだった。

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