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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第八章 戦いの先にある未来

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賢王ミオラームの技術

 転んで尻もちをついたミオラームが、『んもういったいですわっ!なんなんですの!?』と怒りながら立ち上がるけど、今は指輪があった事への安堵感が大きくて反応する余裕が無い。

とはいえ、指輪をダートから受け取ったのはいいけど、義肢でどうやってつければいいのだろうか……、魔導具の上に更に魔導具の指輪を付けてちゃんと効果があるのかと心配な事が多い……


「ミオちゃん大丈夫?」

「お尻が痛い以外は問題ありませんけど……、あの様子を見るに髪の色とその結婚指輪に何らかの繋がりがあるのではなくて?」

「うん、この指輪の中に込められている偽装の魔術の効果でレースは見た目を変えてるの」

「はぇー、こんなに小さい指輪なのに立派な魔導具なんですのねぇ、いったい誰が作ったんですの?レース様」

「んー、ぼくの育ての親で治癒術の師匠でもあるSランク冒険者【叡智】カルディアが、ぼくとダートにって作ってくれたんだ」


 ありきたりな量産品の指輪ではなく世界に一つしかないペアの指輪、左手の薬指にある事が既に当たり前になっていたけど、改めて人に説明するとなるとなんか気恥ずかしい気がする。


「そうなんですの?フィリアのお母様がこれを……、でも何て言えばいいのか雑な作りですわねぇ」

「……雑?一つの指輪に2つの機能がついてるから凄いと思うけど」

「確かにやっている事は凄いとは思いますけど、私ならもう少し改良出来ますわね……ダート様の方の指輪も合わせて私に預けて頂いても宜しくて?、手元にある工具で色々と最適化させて頂きますわ、後義肢の方も必要なので一度外しますわね」

「ミオちゃん……預けるのはいいけど壊さないでね?」

「そんな事は致しませんわっ!これは言わばお世話になったお二人への恩返しですの、それにこれからもあなた達とは良き縁を結びたいですし、これは私からの投資ですの」


 投資ってどういう事だろうかと思うけど、反応する前に義肢を抜かれ左手に持っていた指輪と一緒にテーブルに置くと……


「片すのを忘れていましたわね……、んーこの使わなかった義肢はお二人に御譲り致しますわ、これだけでも価値が分かる人の元へ行けば一つ辺り白金貨50枚になりますから、お二人の結婚祝いとしてお受け取りくださいですわ!」

「白金貨50……、ミオちゃんそんな高価な物貰えないよっ!?」

「だからこれは投資ですの、変わりと言っては何ですが……、もしお二人の間に子供が出来て生まれた子が男性だったら私が婿として貰いたいのですわっ!」

「貰いたいって、男の子が生まれたらストラフィリアに預ける事になってるから、ミュラッカに話を通した方がいいんじゃないかな」

「……あら?レ―ス様、存じておりませんの?覇王ミュラッカ様なら既にご懐妊しておりますのよ?しかも、王家御用達の治癒術師様曰く男の子なそうなので、レース様達の間に男の子が生まれても預ける必要何て無いと思いましてよ?、さぁ事情が理解出来たのなら受け取ってくださいまし」


 妹に子供が出来たという話を聞いて無かったから思わず驚いて思考が一瞬止まってしまう。

その間にミオラームが他の義肢を抱きかかえるようにして持ってダートへと渡すと、彼女の指輪も受け取ってテーブルに戻ると椅子に座り、ゴーグルらしき物を装着すると針のような工具を取り出して義肢と指輪に向かって作業を始める。

すると先端から青い光が発して、バチバチと聞いた事の無いような音がしたかと思うと宙に指輪に刻まれている回路が浮かび上がり、それを見ながら器用に両手を動かす度に回路の線が増えたり減ったりしてるけど何をしているのだろうか。


「ミオラーム、いったい何をしてるの?」

「無駄な部分を消して、新たに魔力が効率良く通る為の回路を作っているんですわ、例えばここですけど、偽装の魔術を発動するのに……あら?私のゴーグル越しにレース様を見ると他にも偽装の魔術が付与された魔導具があるみたいですけど、それも渡して貰っていいかしら?」

「ん?あぁ、うん、そう言えば前まで使ってたのがあったっけ、ごめんダートこれミオラームの所に持って行って貰ってもいい?」

「うん、ミオちゃんこれがどうしたの?」

「……どうしてこんな完成度の高い物があるのに使わないのか不思議に思っただけですわ、ってこれは、この独特な回路の組み方はマスカレイドの作品ですわね、へぇ、なるほど、ちょっとこればらして義肢に組み込んで良いかしら?」


 何をしたいのかは分からないけどミオラームなら多分大丈夫だろう。

そう思って首を縦に振ると……


「ふふ、感謝致しますわ、この魔導具の回路を取り出して義肢の空いたスペースに張り付けて、あぁでもこうしてしまうと余計な魔力の流れが出来てしまいますわね……、ん?でもここを削れば、成程良い子ですわねぇ、と言う事は偽装の魔術を発動させる為の回路を接続部分に張り付けて全体的にずらすようにすれば、あ、出来ましたわこれなら偽装の魔術と義肢の動きが喧嘩しないで動くようになりますわね……、後は薬指の部分に指輪を取り付ける為の溝を作ってそこに指輪を取り付け、指輪と義肢の回路を繋げてしまえば、うんレース様のは出来ましたわぁっ!名付けてミオラーム式魔導義肢カスタムですわぁっ!効果は偽装の魔術に詠唱の補助、そして指輪に込められた偽装の魔術は流石に二つもいらないから取り除いて、ダート様が今何処にいるのかが分かるように探知系の魔術を付与しておきましたわっ!」

「……もはや早口過ぎて何を言ってるのか分からないけど、色々と便利になったのは分かったよありがとう」

「んもう……、分からないのにお礼を言われても困りますわよ?、後で説明書を書いて渡すので読んでくださいまし、後ダート様の指輪も回路を綺麗にしたら余裕が出来たのでレース様の場所が分かるようにしときましたわよ?、後は治癒術の発動に掛かるタイムラグが半分程になりましたし、それに結界の機能も色々と応用が利くようにしておきましたのでこちらも後で説明書を書いてお渡しいたしますわね?、他にも……」


……椅子から降りたミオラームがダートに指輪を渡しながら耳元で何か呟く。

それに一瞬驚いた反応した後に『確かにそれなら安心かも……、ありがとうミオちゃん』とお礼を言うダートに笑顔を向けたミュラッカは、魔導具の義肢を持ってぼくへと近づいて行き『これ接続する時が一番痛いらしいですけど、治癒術が使えるなら問題無いですわよね?』と、ぼくが治癒術を使う前に勢いよく差し込んで来て、思わず今迄出した事の無いような声を出してしまうのだった。

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