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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第八章 戦いの先にある未来

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新しい腕

 何でここにミオラームがいるのか、彼女は確かあの出来事以降、自身の身の安全を守る為に現在は辺境開拓都市クィストに滞在している【魔王】ソフィア・メセリーの元で保護されて居た筈。

とはいえ、都市内なら自由に行動する事を許されているおかげで、たまに家に来てはルミィの良い遊び相手になってくれていたから、以前とは違い個人的には良い印象の方が増えつつあるけど、他の国に行く事が許可されているとは聞いていない。

もしかしてだけどお忍びとやらだろうか。


「……何でミオラームがここにいるの?」

「なんでって聞いていらっしゃらないので……?」

「えっと、レースはさっき目を覚ましたばかりで……、まだ何も聞いてないの」

「そうなんですの!?……、まぁ一週間も目が冷めなかったらしょうがないのかもしれませんわね」

「一週間……?」


 あの戦いから一週間もの月日が経過していたという事実に驚きを隠せないけど、確かに腕を失った事によるダメージと一度に大量の出血をしたと言う事から冷静に考えると、出血性ショックを起していた筈だ。

ダートが魔導具を使って止血をしてくれた後に、ハスさんという人が傷口を焼いて処置、ならその後は誰がぼくに失った分の血液を輸血してくれたのか。

あの場で治癒術を使いぼくの魔力と波長を合わせる事が出来る人となると、アキラさんだと思うから後でお礼を行っておこう。


「それにしても驚きましたわ?、ソフィア様とお茶を楽しんでいたらいきなりカエデ様が訪ねて来て私にレース様の義肢を作って欲しいと頼み込んで来たのですもの」

「レースが意識を失っている間出来る事が何か無いかと思って、皆で考えてたんだけど……、ケイさんが着けてる魔導具の義肢にミオちゃんが作った技術が使われてるって言ってたから、お願いしてみようって事になったの」

「……なるほど、でもミオラームは良かったの?一国の王が他国にいきなり来たりするのは外交的にも問題になったりとかするんじゃないかな」

「無断で来たなら確かに問題になるかもしれませんけど、今の私はメイメイ様の許可を得て来ているのですわよ?だから大丈夫ですわぁっ!それに見てくださいまし、様々なタイプの義肢を用意致しましたのっ!」


 メイメイの許可を得ているならぼくが心配したような事とかは無いだろうから安心出来るけど、部屋に備え付けられているテーブルの上に様々な義肢を空間収納の効果が付与されているのだろう魔導具のバッグから、大量に取り出して並べて行くのは何て言えばいいのか分からなくなる。

けど、今は個人的には気になる事がある……


「メイメイが許可を出したって事だけど、怪我とかは大丈夫だったの?」

「ぎりぎり後ろに飛んで衝撃を流したとかで全身打撲で済んだみたい、今は治療が済んだらしくて色々と試してるみたい」

「試してる……?」

「うん、レースに渡した薬の効果が本来よりも切れるのが早かったらしくて、その原因がエルフ族用に作っていたせいかもしれないから、人族の冒険者に協力して貰って調整したいらしいの」


 調整したいって言ってもメイディに人族があんまりいなかった筈、探せばいるらしいけどその中で数が少ない人族に頼むと言うのは難しい気がする。


「人族の冒険者って大丈夫なの?、ほらこの国って人族が少ないんでしょ?」

「冒険者なら依頼を出せば、他の国からでも来たりするから報酬額次第では沢山来ると思うし大丈夫だと思うよ?」

「……そうなんだ」

「んもうっ!レース様方っ!?私を無視しないでくださいましっ!」

「え、あぁ、ごめん」


 気になる事を優先しすぎてミオラームの事を忘れていた。

改めて彼女の方を見るとぼくと同じ肌の色をした物や、金属で作られた腕、そして人形に使われる球体関節で付いた特徴的なのとか色んな種類がある。

その中でも特に目を引くのが一つあって……


「その黒い金属で出来た腕は……?」

「レース様、これが気に入りましたの?」

「気に入ったって言うよりも綺麗だなぁって、ダートもそう思わない?」

「確かに綺麗だけど……、何て言うか男の子が好きそうなデザインしてるなぁって思うかな」

「あぁ、確かにそうかもしれない」


 黒い光沢を持った金属で出来た機械の腕が眼から離れない。

何て言うか見た目が凄いかっこいいと感じるのもそうだけど、ダートがテーブルの上から持ってきてくれたのを右腕で持ってみると重さも丁度良い気がする。

まるでぼくに合わせて作られたかのようなそんな気がして不思議だ。


「ミオラーム……、この義肢は?」

「これは私の技術と栄花騎士団最高幹部のトキ様と二人で共同で作った物ですわっ!本来なら人工皮膚を使って本物の腕と変わらない見た目にしようと思ったのですけど、トキ様が男はこういう精錬されたデザインが好きなんだよって言う事でこういう形になりましたの、それに何やら能力を付与したとかでストラフィリアの北部に存在するドワーフ族のみが採掘する事が出来る希少な金属を使う事で【不壊】と言う物が付いたらしいですわよ?」

「……不壊?」

「何でも付けてる間、どんなに雑に使っても壊れる事が無いそうですわ?トキ様曰く、レース様にぴったりの能力だそうですわよ?まぁでも、幾ら壊れないからとは言え長く使っているとネジのゆるみが起きますし、定期的にグリスアップをしたりなどメンテナンスが必要になるので、定期的に義肢専門の魔導具技士等に見せてくださいまし、あぁでも私がメセリーにいる間は無償でメンテナンスの仕方を教えてあげながら色々と調整して差し上げますわよ?」


……そう言って自信満々なミオラームがこちらに近づくと、魔導具の義肢をぼくから受け取り『では今から取り付け作業に入りますので、ダート様はタオルをレース様の口に噛ませたら動けないようにしてくださいですわ?、そしてレース様は神経接続と実際にどのように動くのか反応を見る為に色々と身体をいじるので覚悟を決めて耐えてくださいましね?』と言うと見た事の無い工具をバッグから取り出すのだった。

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