エルフについて
あれが【薬姫】メイメイ・ティーナ・メイディ、弟のヴィーニ・トゥイスク・ヴォルフガングが一目惚れした相手……、ただなんて言うか彼はもしかしてだけど少女趣味だったのだろうかと思う程に幼い。
「レースさん、凄い顔してますけど大丈夫ですか?」
「あぁ、えっとヴィーニが好意を寄せてあんな後先考えられない行動する事になった相手が凄い幼くて、どう反応すればいいのか分からなくなっただけだよ」
「そういえばどう見てもルミィちゃんと同じ位だよね、でもエルフって凄い長生きするって言うからもしかしたらそれ私達よりも年上かもしれないよ?」
「確かに知らないとそう思いますよね……、ダート姉様の言うように見た目と年齢が合う事は無いのですがメイメイ様は現在10歳で、何でもエルフは個体差に寄りますが一定の年齢で体の成長が止まるらしくそこも個人差があるみたいです、なので既に成長が終わっている可能性もありますね」
ぼくがまだ子供の頃、興味本位でマスカレイドにエルフの事を聞いた時は子供の頃に自然の魔力が豊富な場所で育つかどうかで見た目の年齢が変わると言っていた気がする。
その為子供の頃は基本的に生まれた地域から離れる事無く肉体が成熟するまで大人しくしているらしいけど、どうやらぼくとカエデの知識は違うようだ。
「ぼくが小さい頃マスカレイドに聞いた時は、魔力が豊富な場所で育つかどうかで変わるって聞いたけど……、何でも身体が大人になるまではそこで大人しく過ごすとか言ってた記憶がある」
「そうなんですか……?、でも言われてみればエルフの子供を他の国で見る事が無いですね」
「そもそもエルフ自体他の国で見る事が稀じゃない?私が見た事あるのってマスカレイドやハーフエルフのフィリアさん位だし……」
「一応、メセリーの学園には魔術や治癒術を学びに来るエルフや獣人の人達がいるらしいよ、まぁ……ぼくは会った事無いけど」
「エルフの人からしたらメセリーは、魔力が多い方ですから活動しやすいのかもしれませんね、特に学園では他種族間の争いや差別を防止する為に人族以外の人種には制服に偽装の魔術を付与しているらしいので、そのせいかもしれませんね」
確かにそれなら会った事が無いのに納得出来るけど誰が作ったのだろうか……、マスカレイドがそんな事をするとは思えないし、仮に母さんだったとしてもあの人の場合
「……誰がそんな大掛かりな物を作ったの?」
「何でもウィリアム教授が学園の講師をしていた時に何度か種族の違いで問題が起きた事があったらしく、魔導具の技術から発想を得て開発した魔力を通しやすい繊維で作った制服を着て、着用者の魔力を校章に登録する事で偽装の魔術を発動させる技術だそうですけど、理論が難しすぎて詳しくは分からないです」
「偽装の魔導具は基本的に発動させている時は、空気中にある自然の魔力を使って発動させるから、校章が着用者の魔力を感知したら自動で発動する様になっているのかも」
「あの人正直胡散臭い人だなぁって私思ってたけど……、本当に凄い人だったんだね」
「まぁ確かにめんどくさい人なのは確かですけど、そういう数々の功績が認められて栄花の幹部になったので腕は確かです」
母さんが言っていた『戦う力は無いけど、人の為に頭を使う事が出来る天才』の意味はこういう事だったのかもしれない。
そういう意味では昇格試験の時に見せてくれた技術も納得できる物がある。
魔力ピットは襲われた時に身を守る防衛手段として使えるし、魔力を直接武器の形にするあの筒は襲われた時に身を守る為の護身用の武器として使える筈だ。
多分だけど……ウィリアム教授は最初は戦う力のない人を守る為に開発して、そこから栄花騎士団の団員用に改良を加えたんだと思う。
「ん?あれ、ダリアがメイメイさんと手を繋いでこっちに歩いてくる」
「あ、ほんとだ……、何かこっち指差してるね」
ぼく達が話をしている間に、二人は話が終わったのか歩いてくるけど……何でこっちを指差しているのだろうか。
「おーい、父さん、母さん、カエデ―っ!!暇だったから外に出て散歩してみたら面白そうな奴見つけた!!」
「面白い奴!?ダ、ダリアさんっ!?」
「くふふ、どうも面白い奴なのじゃ!」
「ダリアこの子が誰か分かってるの?」
「誰かって、メイメイって言うらしいぜ?何でもこの街に薬草採取に来た時に、人族を見つけて興味が湧いて話しかけて来たらしんだけどさ、そうしたら意気投合しちまってよぉ年齢も近かったからダチになったんだよ」
……暇だから外に出たって言う事に関して言いたい事があるけど、今はそれ以上に一国の王女様をダチと呼ぶ姿にぼく達は驚きが隠せない。
あまりの事に何て声を掛ければいいのか分からなくなっていると……『ダリア、この方はこの国の王女様、メイメイ・ティーナ・メイディ様だよ?』とダートがメイメイを見ながら恐る恐る口にする。
すると『え?まじ?おめぇ、この国の王女なの?』と恐れる事無くそういうダリアに対して満面の笑みをメイメイが浮かべるのだった。




