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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第八章 戦いの先にある未来

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薬草畑と迷子

 転移用の部屋に入ったぼく達はメイディ行きの扉を開けて通る。

そして目の前に広がるのは見覚えのある冒険者ギルドだけど、本当に人族の姿が見えない。

周囲を見るとクロウと同じ狼の耳を持つ人や、マスカレイドと同じ耳が長い人達が受付に並んでいて、まるで異世界に来たような気持になりそうだ。


「……本当に人族がいない」

「初めてくると驚きますよね……、それに冒険者ギルドの内装はレースさんもご存じの通り基本的に統一されているのですが、ここメイディに関しては特別に民間の薬師が常駐しているので、ギルド職員の治癒術師さんがより効率的に治癒術を使えるようになっています、そのおかげで一般の利用者も多いんですよ?」

「私も初めて来たけど凄いんだねぇ……、それにこの国でしか取れない薬草や新しく開発された薬があるだよね、もしかしてメセリーよりも治療に関しては進んでいるんじゃない?」

「んー、確かにそうだと思う、取れる薬草も必要最低限なものしかないし……、それに治癒術と同じ能力を持つ精霊がいるなら既存の術と合わせて独自の治療法が生まれている可能性もあるし」

「治癒術と同じ精霊がいるっていう話は聞いた事が無いですね、それにメイディの新薬はこの国の王【薬王ショウソク・メイディ】の一人娘でSランク冒険者【薬姫】のメイメイ・ティーナ・メイディ、彼女が一人で作り上げているんです……凄いですよね」


 一人娘という事はショウソクには他に子供がいないのだろうか。

ぼくが見て来た王族を見て来た中だとソフィアやミオラームは例外として、子供が沢山いる気がする。

例えばぼくの仲間のコルクは、トレーディアスの商王クラウズの娘で沢山いる兄姉の中で末の子で、スノーフィリアの前王ヴォルフガングはぼくを含めて五人の子がいるし、そういう意味ではこの国の王は珍しいのかもしれない。


「凄いけどこの国の王様って一人しか子供がいないんだね」

「えぇ、でも何時までも冒険者ギルド内に用事もないのに居座るのは良くないですし、外に出ましょうかって……あれ?そういえばダリアさんはどこ行きました?」

「え?あれ、ほんとだ、レース知ってる?」

「いや知らないけど、もしかしてだけど冒険者ギルドの外に出たのかな」

「……周りを見る限りではギルド内にはいないみたいですしその可能性がありますね」


 ぼく達がダリアを探す為に急いで冒険者ギルドから外に出ると、そこには不思議な光景が広がっていた。

国の大半が森に覆われている事はカエデから聞いていたが、外には薬草が植えられた畑がありそれぞれが見た事が半透明な幕に覆われている。

薬草の種類事に分けて栽培に適した環境を作っているんだろうけど、この大きな街の大半が薬草畑と、刈り取った後に乾燥させる設備になっていて思わずダリアを探すつもりが足が止まってしまう。

それに何よりも……


「なんだあれ……」

「うん、凄いね」


 遠くからでも分かる程にとてつもなく巨大な樹が見える。

それは空に浮かんでいる雲に届いており、異様な雰囲気を感じさせ見る物にお伽噺の世界に迷い込んでしまったのではないかという、そんな錯覚を覚えそうになってしまう。


「あぁ、初めて見ると驚きますよね……、遠くに見えるあの大樹はメイディの首都【メランティーナ】です、大昔に存在した神の身体を使った都市であの大樹の中に人々が住んでいます」

「住んでいるって……、それって中をくり抜いてるって事だと思うけど大丈夫なの?」

「何でも魂が無くても身体は生きてるらしいですよ?、しかも本来であれば人が大量に住めるほどにくり抜いたりしてしまったら枯れてしまう筈なのに問題無いらしいです、正直私達の常識では理解が難しい気がしますね」

「神様の身体を利用してるって何か怖いかも……、だって王様の中には神様が封印されているんでしょ?もし封印が解けてしまったら危ないんじゃないかな」

「お姉様もそう思いますよね……、私も初めて来た時そう思って聞いてみたのですが、薬王ショウソク様が言うには『あれは新しい玩具を見つけたから蘇ったとしても問題無い』という事で意味が分かりませんし、それをお父さんに言っても『まぁ、そうだろうな』としか言ってくれなかったのですが、多分数百年も維持されてるのを見ると本当に問題無いのかも……」


 新しい玩具を見つけたってまるで生きているように聞こえるし、蘇っても問題無いという事は、これって既に蘇っている可能性があるわけでだけど、その場合神をその身に封じている王が自らの意志で神の力を外に出さなければいけない。

一応既に蘇っている事と仮定して考えると神の力を解放したショウソク・メイディは既に亡くなってしまっている筈だから、流石に難しく考え過ぎな気がする。


「んー、まぁ問題無いのならいいか……、それよりもダリアを探そう」

「だね、でも何処から探せばいいのかな、私達はこの街詳しくないし……」

「こういう時はぐれた時の合流場所を予め決めといた方が良かったかもしれませんね」


……確かにカエデの言うように予め合流する場所を決めて置けば知らない場所でも、誰かに聞いたりして会う事が出来ただろう。

そんな事を思いながら探して歩きまわっていると、遠くの薬草畑に特徴的なプラチナブロンドを後ろに束ねてポニーテールにしたダリアの姿と、緑色の髪を2つお団子みたいに頭の上で丸めたルミィと年齢が変わらないように見える少女の姿が見える。

何やら楽しそうに話をしているけど新しく来た場所でもう友達が出来たのだろうか、そう思いながら近づくとカエデが『え?何でここにメイメイ様が……!?』と驚いたように声を上げるのだった。

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