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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第八章 戦いの先にある未来

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怪力の威力とぼくの切り札

 母であるスノーホワイトはこの能力を使いこなしていたと、以前妹であるミュラッカから聞いた事がある。

ただこの能力を使うと肉体強化が戦士型から【怪力】に変わってしまうらしく、爆発的に上がった身体能力のせいで力と速さが上がるのは良いと思うけど、やはり自分の体にダメージを負ってしまうのは諸刃の刃だと思う。

本当にどうやって使いこなしていたのだろうか、こういう時母と直接また話す事が出来るなら教えて欲しいと思うけど、既にいない人に助言を求める事は出来ないからどうしようもない。


「驚いたよレース君、君がこんな隠し玉を持っていたなんてね……、それに正直言うと魔術を使えるようになっている事にも驚きはしたが、あのカルディア氏の弟子ならそこは出来て当然だろうと思ったらそれ程でも無かったのだがね」

「……この一撃を耐える何て思わなかったよ」

「いや耐えは出来たが、この魔力ビットでも何回か殴られたら耐えきれないかもしれないね……、それよりもあらぬ方向に曲がっているその大剣を持った腕を治さなくていいのかい?」

「それは今治してるよ」


 ウィリアム教授が言うように大剣を全力で叩きつけた腕は、間接が一つ増えてしまったかのように手首と腕の関節の間で逆方向に曲がっている。

治癒術で少しずつ元の位置に戻して損傷個所を治して行くけど、正直力の配分を間違えたかもしれない。


「……あの状態の腕を即座に修復するとは、本当に君の治癒術の使い方は規格外としか言いようがないね、もしかしてだが限界に至っているのではないかい?」

「だったら良いんだけどね、治癒術はカエデにこの前見て貰ったら治癒術適正8のままだったよ」

「これが才能というものかと思うと私としてはとても悔しい気持ちになるがね、だが私にも意地があるのだよ」


 ウィリアム教授の長杖を持ってる方とは別の手に新たに筒状の物を出現させると、そこから魔力の光が発生し一振りの剣になる。


「これも魔力ビットと同じ金属で出来ていてね、魔力を通す事で使い手が最も得意とする武器の形になってくれるのだよ、しかも魔力が続く限り決して壊れる事はない、ふふ、これはだね心器を武器として使用する最高幹部を見て閃いた物でね、これとトキ君の装備に能力を付与する力を合わせれば簡易的な心器となるとは思わんかね?」

「凄いとは思うけど、手に持ってる筒の部分が破損したらどうなるの?」

「……壊れる」

「あ、壊れるんだ」

「だがこの魔力ビットを盾にすれば守れるだろう?、つまり攻撃と防御を合わせた最高の戦法なのだよ、この通り君に攻撃すれば……なん……だと」


 確かに凄いと思うけどこちら側の攻撃を防ぐという事は、内側からの攻撃も防いでしまうという事で……、ぼくの予想通りウィリアム教授の攻撃は弾かれてしまって届かない。

それよりも何で魔力ビットが展開している障壁を消してから攻撃しようとしないのか……


「教授……、障壁を消してから攻撃した方が良いと思うんだけど」

「お、おぉ……そうだねレース君感謝するよ」

「あ、後その魔力ビットの展開してる障壁でこっちに攻撃するとかって出来ないの?」

「障壁で攻撃……?、あぁ成程3つの障壁が付いている時は無理であるが、それ以外の時に先端の魔力の厚さを薄くするか、細かく振動させる事で切る事が出来るかもしれんな、帰ったら試してみようでは無いか、だがこれはあくまで勝負助言は後にしてくれたまえよ」

「あぁうん……、でも3つが離れたって事は防御力も下がったよね」


 ウィリアム教授の事だからぼくが指摘しなくても魔力ビットの使い方に気付いただろう。

それに身振り手振りを加えて会話を続ける辺り、ぼくの魔力切れを狙っているのは丸わかりで……、そう思うとさっきの内側から攻撃しようとしてきたのも間違いなく演技だ。

本当に掴みどころが無いというか、何を考えているのか分からない。

それに師匠が昔教授の事を、『戦う力は無いけど、人の為に頭を使う事が出来る天才』と評価していたし人の為に動けるという事は、人が嫌がる事も同じ位出来るという事だと思う。

だから……これ以上彼のペースに飲まれる前に一撃で倒してしまった方がいい気がする。

でもここで怪力を使って大剣の刃を立てて切り付けても、今のぼくの魔力では折れた腕を治す事は出来そうにない……、だから出来る事は怪力を解いて大剣から手を放した後に両手で長杖を持ち構えて……


「……ん?大剣から手放してどうしたのかね?」

「ぼくの切り札で一撃で決着をつけようと思って」

「なるほど、治癒術師の最高の武器は長杖だから当然と言えば当然だがね……、私は知っているのだよ、君は長杖を使った近接戦が得意ではない事をねっ!悪いけど試験はこれで終わりにさせてもらう……よ……?って待ちたまえレース君、それはまずい、落ち着くべきだ」

「ぼくは落ち着いてるよ……、だからこうやって切り札を使うんだ」


……長杖の能力【魔力暴走】を使うと、ぼくの残り魔力を長杖が白く輝きながら吸い上げて行く。

そして先端に雪の結晶が作られて後はウィリアム教授に向けて放つだけの状態になった時だった、『レース君、昇格試験はこれで終わりだっ!私は負けを認めよう、エレノア君も止めてくれたまえっ!』と焦ったような声がする。

そして『レースさん終わりなんよっ!その魔術を止めてくださいっ!』という指示が聞こえるけど、魔力暴走を使ったら何処かへ飛ばさないと消す事が出来ないから、ぼくにはどうすればいいのか分からない。

焦ってどうしようかと思っていると……『ばぁっか野郎!父さん制御出来ねぇもん使うんじゃねぇよ!上だ上っ!消せねぇなら上に撃てっ!』というダリアの声が聞こえて咄嗟に上に撃ち出すと……、訓練場の天井が勢いよく吹き飛んで行くのだった。

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