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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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そして今はいつもの日常へ

 最初は意味が分からなかったけど、サリッサが部屋に防音を施してくれた事に関して今は素直にありがたいと思う。

そのおかげで依頼について話が出来るのだけれど……一つだけ問題があって、どうしてぼく達の部屋にカエデがいるのか。

彼女に聞くとダートに呼ばれたらしいけど、お風呂上がりなのか僅かに湿った髪、後ろ姿からでも僅かにに分かる上気した肌が色っぽいというか眼のやり場に困る。

そんな状態の人がダートと部屋で何やら話しているけど、正直どのタイミングで話を切り出せばいいのか分からなくなりそうだ。


「でね?カエデちゃんは今話した事に関して考えてみて欲しいんだけど……、どうかな」

「えっとお姉様、気持ちは嬉しいのですけど、私には私の立場が栄花騎士団副団長としての立場を辞める分けには行かないので……」

「え?何で結婚したら副団長を辞めなきゃ行けなくなるの?、この家から直接栄花騎士団に通えるし、奥さんになるのと辞めるのって違うと思うよ?」

「え?あの……、栄花では結婚する場合仕事を辞めて家庭に入る事が基本なので、私もそうなるのかなぁって」

「……それならアンさんはどうなの?アキラさんと結婚してるのに栄花騎士団の最高幹部を続けてるでしょ?」


 ……だからどうしてぼくの事なのに勝手に話が進んで行くのか。

まぁ、ダートが嫌じゃないなら別にいいけど正直そういうのはちゃんとこっちを通してから話して欲しいなぁ。


「あ、そっか、アンさん残る方法もあるんだ……、お姉様少しだけ通信致しますね?」

「うん、早く話した方がいいもんね」


 座っている位置的にダートはぼくが部屋に入って来た事に気付いているみたいだけど、カエデは背を向ける形になっているから気付いてないんだと思うけど、せめてドアだけは開け閉めする際にある程度音が鳴るようにして欲しかったなぁ。


「うん、お父さん?私なんだけど……急にごめんね?驚かないで欲しいんだけど実は気になる男性がいて……、うん、前に話していた治癒術を教えてくれているカルディア様のお弟子さんかって?、うんそうだよ?あのレースさん、ストラフィリアの元第一王子で現覇王ミュラッカ様の実の兄で、え?お父さん?声が不機嫌だけどどうしたの?、お前が決めた相手なら文句は無いが後でかけ直すって、ちょっとお父さん!?まっ……、お姉様切れちゃいました」

「んー、でもお父さんから許可が出たみたいだから良いんじゃないかな、良かったねカエデちゃん」

「はいっ!……、これであのしょうがなくてほっとけないレースさんと、大好きなダート様とずっと一緒にいられるのですねっ!」


 なんか二人で手を取り合って楽しそうにしているけど、それを見ているぼくは何ていうかこの空気どうしようって言う気持ちしかない。

会話に入るのも何か違う気にするし、正直聞かなかった事にして一度部屋を出てリビングに行った後に少しだけ時間を潰してから戻るのはどうだろう。

そんな事を思っていると、アキラさんから連絡があったら直ぐに反応出来るようにズボンのポケットに入れていた通信端末が鳴り出す。

急いで取り出すと……『1番:栄花騎士団団長キリサキ・ガイ』と表示されていて最高に気まずい。

カエデも驚いた顔をしてこっちを振り向いているし、これはもうしょうがないと諦めて通話に出ると……


『……あのヴォルフガングの息子が俺の娘に手を出すとはな、王族で尚且つカルディアの弟子で無ければ容赦なく殺していた所だが残念な事に身分に申し分が無い、だが俺の前に顔を出す事があるのなら覚悟しておけよ?』


 と一方的に話すとぼくの返答を待つ事無く通信が切れてしまった。

あぁ、何かもうこれは流れ的になるようにしかならない奴だと思うけど、カエデのさっきの嬉しそうな顔とダートの満足した表情を見るとこれはこれでいいと気がしてしまう。

ただぼくが必要となったら、家族を連れて何処かに逃げてしまう事をしったらカエデはどう思うのか、そうなった時に着いて来てくれるならいいけど、そうで無かった場合彼女を置いて行く事になる。


「レ、レースさん?今の通信って、もしかしてお父さん?」

「うん、あぁ……、娘の事を宜しくって言ってたよ」

「……もう、お父さんったらそう言うのはレースさんやダートお姉様、それにダリアさんとご家族を連れて挨拶に行った時に言ってくれたらいいのに、本当に困った人ですね、私が居ないと勘違いされてしまうんですから」

「え?あぁ……、そうだね?」

「そうだねってレースさんもですよ?あなたみたいに困った人、ダート姉様と私が居ないとダメなんですから、これから先は私とお姉様の二人でちゃぁんと面倒見てあげますからね」


 頬を染めながらそう言葉にする彼女の顔は何ていうか大変反応に困る。

何ていうかちゃんと気を引き締めておかないと自分一人では何も出来ない大人にされそうで、多分ダートやサリッサがいるから大丈夫だと思うけど、もしかしたらぼくは好かれてはいけない人に好意を持たれてしまったのかもしれない。


「という事でレース?、これからは私とカエデちゃんの二人で色々と宜しくね?、あ、そういえばお夕飯の後に私に言った話したい事って何?」

「えっと……、カエデの前だと言いづらいというか」

「何?あなたの二人目のお嫁さんに言えない事なの?」

「そうじゃなくて……、アキラさんから近いうちに任務に協力して貰う事になるって言われて――」


 さすがにミコトやシャルネの事、ましてやマリステラに関しては今は話すべきではないと思う。

取り合えず話せる範囲の事を伝えると……


「んー、東の大国のメイディかぁ、一度行ってみたかった良かったかも?任務の協力って形になっちゃうけどダリアやカエデちゃんを連れて一緒に行こ?」

「……私もですか?」

「うん、だってもう家族でしょ?それに栄花最高難易度の依頼って事はカエデちゃんが同行していても違和感はないと思うし、一緒に行こ?」

「……はい、はいっ!」


……その後は何ていうかこれからどうするか色々と話し合いをする中で、アキラさんがこの都市から居なくなってしまった以上戦い方を誰に教わるかという話題になったけど、そこはカエデが大剣の使い方なら最高幹部に一名使い手がいるという事で紹介して貰える流れになった。

その最中でふと、何故彼女の部屋にぼくの失くした筈のカップ等があるのかと聞いてみたら『……それは乙女の秘密です』という謎の言葉で遮られてしまう。

何て言えばいいのか、これ以上は触れては行けない気がする、そんな思いを抱えながらぼく達はいつもの日常へと帰って行く。

ただ今のままではぼくは大事な人達を守れないだろう、だから今よりももっと誰よりもずっと、大切な人達を守る力が欲しいと思い願うのだった。

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