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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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暗殺と化物

 血を流して動かなくなった三人とフィリアの死角に隠れたミュカレーが映像に映し出される。

まさか、マスカレイドがこんな簡単に死ぬとは思わなかった。

生きてる以上は頭か心臓を破壊されたら死ぬとは分かっていても、世界の禁忌を犯した人物としてはあっけないと思う。

でも、今はそれよりも気になる事があって、とりあえず地面に寝かせたままのスイを、ダートに手伝って貰いながら背中に担ぐと……


「ミオラーム、フィリアはどうやって距離を詰めたの?」

「それは……、フィーの特性の能力で視界に写ってる範囲ならこの時間帯限定で距離を無視して移動出来ますの、鷹の眼と合わせる事で一度見つかったら最後、絶対に逃げられないのですわよ?」

「ミオラーム様も、狙われた時はそうだったの?」

「えぇ、いきなり背後に現れたので理解が追いつきませんでしたわ」

「確かにあんな一瞬で詰められたら対策のしようがない……」


 仮にぼくがフィリアの暗殺対象になったとしたら長杖の自動迎撃を予め発動させていなければその時点で死ぬ事が確定している。


「ダートは狙われたら逃げれる自信ある……?」

「無理かなぁ……、Sランク冒険者ってそもそも一人で一国を滅ぼせる程の戦闘能力を持っているって事だから、本気を出された瞬間に私なんて一瞬で殺されちゃう」

「……そっか、遠いなぁ」

「遠いなぁって、レースもしかしてSランク冒険者と戦えるようになりたいの?」

「うん、マスカレイドはもう死んでしまったけど、その裏にいる協力者も同じ位強い可能性があるから……、勝てるとまではいかないけど戦えるようにはなりたいかな」


 つまり過去の二回マスカレイドと遭遇し戦闘になった際に見せた戦い方は、本気では無かったという事だ。

その状態でも太刀打ちすら出来なくて、何方かというとぼくの取った行動に関して評価をされたり、この前は味方になれと勧誘をされた。

……間違いなく、今の能力では敵とすら認識されていないと理解出来る行動から思うに、シャルネ・ヘイルーン……、彼女も同じSランク冒険者と言う事は同じ位かそれ以上に強い可能性がある。

仮にマスカレイドよりも強かった場合、もし自ら行動を始めるような事があり、ぼく達に接触をし始めた時点で詰んでもおかしくない。


「あら?Sランク冒険者を相手にするなら、高ランク冒険者の方達を大体十人以上集めれば倒せるのではなくて?」

「そこまでしてやっと一人に勝てる時点で既に強さがおかしい気がするけど……」

「その為に栄花騎士団の幹部と最高幹部がいるのでしょう?幹部級なら十人で、最高幹部なら三人で勝てると聞いた事がありますわよ?」

「……そうなんだ」


 栄花騎士団最高幹部の人達が強いのは一緒に行動した事があるから知ってるけど、そこまで強かったのか……。

という事は彼等の任務に同行する事が増えるようになったらアキラさん以外の人達からも戦いを教わって見るといいかもしれない。


「……レースが強くなりたいなら私も付き合うから一緒に頑張ろ?、それに」

「それにってダートどうしたの?」

「強くなったら私やダリアの事を守ろうとするでしょ?、私は守られるのは嫌だよ?……ただでさえアキラさんと修行したりしてどんどん一人で先に行こうとするんだもん、寂しいしレースだけに負担を掛けるのは対等な関係じゃないと思う」

「……分かった、それなら次からアキラさんの修行に一緒に行こう、それにぼくもダートがアンさんとヒジリさんに教わってる事を知りたいから次から参加してもいいかな」

「うん、後で二人に話しとくね?」


 そんなやり取りをしながら映し出されている映像を見ているけど、ずっと視線がマスカレイドに固定されたまま動かない。

ここは隠れているミュカレーを狙った方がいいと思うんだけど違うのだろうか……。


「ミオラーム様、フィリアさんの視界がマスカレイドから動かないのは何でか分かる?」

「……分かりませんわ?、でもきっとフィーなりの考えがあると思いますの、後今更ですけどレース様の奥様でしたらミオラーム、又はミオとそのまま呼んでくださって構いませんわよ?」

「んー、じゃあミオちゃんでいい?」

「ミオちゃん……、恥ずかしいですけれどそれで問題ありませんわ?って……あら?マスカレイドの様子を見てくださいまし、何かおかしいですわ」 


 ミオラームがマスカレイドを指差すと、血だまりに沈んで死体になった筈なのにゆっくりと起き上がる。

そしてフィリアの方をゆっくりと見ると、彼女の視界が変わりぼく達の姿が映像に映し出され……


「……ミオの家族は仕留められたけど他の二人は無理だった、父を相手にするのは分が悪い」

「いえ、構いませんわ、フィーは出来る範囲の事を頑張ってくれましたもの」

「ありがとう……、まさか自分の心臓を魔導具に作り替えてるなんて調べようがない、確かに貫いて破壊したのに自己修復するのは反則」

「……ミュカレーの方はどうなったの?」

「あれは無理、殺しても死なない化物を仕留めろ何て不可能」


 殺しても死なない?何を言ってるのだろう。

ぼくの知ってる範囲ではそんな生き物がいる訳がない……、理解が出来ない発言に言葉が出なくなってしまった。


「フィー、それはどういう事ですね?」

「ミオは私の心器の能力の一つを知ってるから二人に説明するけど……、命ある存在を確実に仕留められるように、討った弾が確実に相手の急所を貫くようになっている、これは対象の魔力に反応して必ず当たるようになっているのだけれど、ミュカレーからは魔力が生成される際に動く筈の心臓が止まっている、そして恐ろしい事に頭の中に何かがいた」

「……何かが居たって、フィリアさんは何を見たの?」

「頭の中から本来の魔力とは別に小さい心臓の鼓動と違う魔力が生成され続けていて、それがミュカレーの魔力に変換されて巧妙に変換されている、最初は正直敢えて逃がして彼女に依頼した人物を洗い出そうとしていたけど予想以上の化物が釣れてしまった、これに関して私が出来る事は現状無い勿論念入りに準備をすれば確実に仕留める自信はあるけど、今は陽が暮れて来て夜が近付いてくる以上、森に残るのは危険だから冒険者ギルドに撤退する」


……フィリアがそう言うとダートに向かって【空間跳躍】を使うように指示をする。

それに従い冒険者ギルドの会議室に直接空間同士を繋げると、全員で辺境都市クイストに戻るのだった。

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