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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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戦いの終わりと禁忌の治癒術

 打ち出された弾が魔導具の頭ではなく、狙いが外れたのか首を貫いて頭を吹き飛ばすとそのまま何処かへと飛んでいく。

そして……泡を吹いて苦しんでいた獅子と山羊の頭を持つ獣の身体の方は、ビクンと身体を大きく跳ね上げ地面に横たわるとそのまま痙攣を始め動かなくなる。

どうやら人の頭部が無いと魔術や治癒術を使えない個体みたいだったようだけど、正直この状態で問題無く動いて来たら、フィリア以外は間違いなく全滅していただろう。

それに護衛対象であるミオラームを戦闘に参加させてしまったのは、必要だった事だとはいえ依頼の内容としてはどうなのだろうか、そんな疑問が浮かんでしまうけど今はモンスターを倒す事が出来た事を素直に喜びたい。

本当に誰も犠牲にならなくて良かった……。


「……ごめんなさい、狙いを外してしまいましたわ」

「大丈夫、慣れない実戦で相手に当てる事が出来たのは優秀よ、それよりもダートは大丈夫?ミオの電流を直接浴びてたけど」

「……なんとか、お義母様から頂いた魔導具の指輪が無かったら危なかった気がするけど」

「魔導具の指輪?それってただの婚約指輪じゃなかったの……、良かったわねあなたは私の母から贈り物を貰えて、私は今迄何も貰った事何て無かった」

「フィリアさん、あなた何を言ってるの?貰ってるじゃない、二人から大事な命と自分で物を考えて動く為に必要な教養、そして誰かを大事に思える感情、こういうのってお義母様とマスカレイドから不器用な愛情を受け取って来たからだと思うよ?」


 ダートが無事で良かった……、とは言え着ている服は所々黒く焦げていたり、破けてしまっていたし、魔導具を通して発動させた治癒術が上手く発動出来なかったのか、肌には痛々しい火傷痕が残っている。

……これは今は魔力が殆んど残っていないから無理だけど、明日になったらちゃんと傷一つ残らないように治そうと思う。

ただ……ミオラームの切り札の電磁砲、あれの威力の反動だけでこんな状態になり、当たった相手は一撃で即死する威力、正直決闘の時に当たらなくて良かった。

あの時避ける事が出来なかったら、ぼくは今ここにいなかったろうし、こうやってまともに戦う事は出来なかったけど皆の壁役になる事が出来なかった筈だ。

それに……ダートの言っていた二人の事に関してだけど、母さんはともかく、マスカレイドにそんな感情があったのかと疑問に思うけど、二人は今迄フィリアに隠して金銭的な補助を行っていたのを考えると、確かにそこには彼なりの愛情があったのかもしれない。

取り合えずあっちは大丈夫そうだし、ぼくはスイの方を見に行くかな……傷の事も気になるし


「スイ……傷の方は大丈夫?、それにあのモンスターを一瞬で身動き出来なくさせる程の毒っていったいどんな物を使ったの?」

「ギルドで話した切り札よ、例の身体が焼け爛れて溶ける奴、あれを直接相手に飲ませて体の内側から内臓と筋肉を溶かしたんだけど、まさか自分の手を犠牲にする事になる何て思わなかったわね……、今迄霧にして周囲に散布していたから問題無かったけど、原液だとこうなるのね……良い経験になったわ、とはいえこれじゃあ冒険者を続ける事何て無理そうだし、復帰して早々引退かしらね」

「それ位なら明日になったら戻してあげるから大丈夫だよ」

「え……、あなた何を言ってるの?Sランク冒険者の【教皇】ミコト様が使うような奇跡があなたに出来るわけないじゃない」

「ぼくなら治せるけど……?」


 スイが信じられない物を見るような顔をして見て来るけど、そう言えば彼女には行ってなかった気がする。

部位欠損すら治す事が出来る禁術指定された治癒術が使える事を、まぁ……数カ月前にミュカレーと戦った際に両足を切断されて、戦う為に自分に使った時は気が触れそうな程な痛みのせいでまともに動けなくなってしまったから、あれから改良をし対象の意識を深い眠りに落としてから再生を行なうという形に組み替えたから、次こそは問題無く治せるはずだ。

……まだ誰にも試した事無いけど


「改めて思うけど、カルディア様といい、あなたといい、控えめに言っておかしいんじゃないの?」

「……おかしいって、控えめに言わなかったらどうなるの?」

「そんなの簡単よ、倫理観おかしいんじゃないの?、何をどう考えたら失った物を再生出来る治癒術を使えるって言えるのよ、人の失った部分は義肢等で補う事は出来るけど、完全に元に戻す事は出来ないの、……もし出来るとしたらそれこそ今迄の常識が覆るわよ」

「……そのせいで色々とあって、禁術指定されたんだけどね」

「禁術って、あなた本当に正気なの?指定されるって事は本当に危険な術って事じゃない、嫌よ私はそんな危ない物に頼る位なら元に戻らない方がましよって断った方が良いと思うんだけど……」


 スイは何やら思い悩んだような顔をしてからぼくに眼を合わせて来る。

……もしかして怒らせるような事をしてしまったのではないかと不安になるけど、いったい何を言おうとしているのだろうか。

こういう時、ぼくに察する力があればと思うけど……、性格的に言葉にされないと分からない事が多いからどうしようもない。


「例え禁術であれど治るなら私は喜んで使って貰うわ、私はまだ終わるわけには行かないもの……、栄花騎士団の元に預けて面倒を見て貰っている父を元に戻すまでは止まれない」

「分かった、それならぼくが責任を持ってスイの手を元に戻すよ」

「ありがとう、私は良い師匠を持ったものね、ところでもう治癒術で痛みを抑えて意識を保っていなくていいかしら?、出血も完全に止まったしこれ以上起きていて余計な体力を使うよりは意識を落として回復に移りたいのだけど……、あ、一応だけど意識のない私に変な事をしたら許さないから」

「変な事が何かは分からないけど、そういう事なら休んでいいよ……、スイの事はぼくが運んだらダートが嫌な顔をすると思うからフィリアに運んでもらうから」

「……あぁ、うんまぁ、後でダートに恨み言を言われるよりは……、その方がいっ……、じゃ後よろし、く」


……スイが意識を失ってぼくの方に倒れて来る。

咄嗟に抱き留めてフィリア達の方を見ると……、ダートが驚いた顔をしてミュラッカを支えている手を放してしまい、膝を地面に強打して『んぎぃっ!?』と言う凄い悲鳴をあげる少女の姿と、こっちを見て何やってんだこいつと言いたげな視線を送る義姉の姿があるのだった。

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