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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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生物兵器

 武器を構えて異形のモンスター、ミオラームが言うには生物兵器の前に立つと分かるけど、それぞれの口の周りに大量の血が付いていて、しかもそれが乾ききっていないのを見るに、未開拓地域にいた人達を襲い喰らったんだと思う。 

それに人の上半身の上についている頭も良く見ると何らかの生物の頭蓋骨を被っていて顔が良く見えず、両右には護衛に着いていたのであろう冒険者達が持っていたと思われる剣や槍が途中で折れた状態で突き刺さり血が流れている。

良く見ると背中に羽の用に生えている物も矢だし、誰かが必至に戦ったけど倒すこと出来ずに食われてしまったんだと思う。

それよりも……


「レースっ!下がって!」

「大丈夫、フィリアはぼくが武器の使い方を教えて貰ってるのを知ってるでしょ?信じて欲しい」

「教えて貰った事と実戦は別っ!」


 フィリアの発言に反応したかのように、前脚を振り上げてこちらに叩きつけて来る。

それに合わせて大剣の刃を使い攻撃を受け流そうとすると、背後の方から聞いた事のない耳が痛くなるような音と共に何かが隣を通過して、モンスターの鱗に覆われた前脚に突き刺さり……、ぼくの目の前まで迫っていた腕が後ろに弾かれた。

何が起きたのか確認する為に後ろを見ると……、ミオラームが持っていた銃とは違い、長い弾が通るだろう部品、そして肩に当てるだろう銃の後ろの幅が広くなってる所を体に当てて、片膝をついて見た事の無い装置を覗き込んでるけど、ぼくは銃に詳しくないからこれが何か分からない。


「……宵闇は暗殺にライフルを使用するとは噂では聞いていたけど本当だったのね」

「本来なら安全を確保してから使う物、でも今はしょうがない、私の指示に従わずに前に出たレースを守るには必要」

「フィリアさん、レースが迷惑かけてごめんなさい……」

「本当、あなたレースと夫婦になるんでしょ?、ならこういう時手綱を握らないとダメじゃない、減点、次は頑張ってね、ここは私が何とかするから動けなくなってるミオをお願い」

「減点?……分かりました、ミオラーム様の事は任せてください」


 フィリアの言うようにミオラームはその場に座り込んでしまって動けなくなってしまっている。

これは戻ってあの子を守りに行った方がいいのかもしれないと迷ってしまうけど、前衛に立っているぼくに狙いを定めたのか、モンスターが左右の顔で噛み付こうとしてきたり、前脚を使って引っ掻こうとしてくるのは、自動迎撃で防ぐのに魔力を集中してしまっているせいで動けない。


「スイ、あなたの事はマーシェンスで聞いた事あるけど、毒を使った近接戦闘が得意ではなかった?どうして後ろに下がったの?」

「出来ないわけでは無いけど、私は戦闘が得意ではないのよ……、護衛依頼の成功率が高いのも魔術で作り出した毒を霧状に散布する事で予め危険な生物を眠らせたり、痺れさせて動きが鈍くなった所を短剣で差して殺す位しか出来ない、だから期待はしない方がいい」

「これは私の判断ミスね……、レースっ!作戦変更、あなたはこのまま前衛をお願いっ!スイは……」

「今私の毒が効かなくなる薬を魔力に変換して皆の身体に送ってるから、準備が出来たタイミングで動くわ」

「ならそれでお願い、ミオは……、完全に恐怖から動けなくなってるからダートの力量次第か……」


 そんな会話が後ろで聞こえるけど、防ぎきれないとフィリアが判断したのかもしれない攻撃は全て銃によって狙撃されて弾かれている。

この前ソフィアに、ライフルと言われる超遠距離からの狙撃用の武器を使うとは言ってたけど、スイの発言と合わせると、これがその武器なのだろう。

ただ、最初は耳が痛くなる音がしたのに今では無音でぼくの後ろを通り過ぎて行く鉄の弾丸に対して、もし当たってしまったらどうしようかと心配になりながら、攻撃を自動迎撃で精製された雪の壁で防いでは地面を白く染め上げて行く。


「ダート、あなたは確か空間魔術と呪術が使えるAランク冒険者だったよね、この状況で出来る事はなに?」

「……空間魔術を使って、もしこっちに攻撃が来た時に空間を相手の後ろに繋いで自傷させるとかなら?」

「なら、それを応用して私の銃身の先の空間を上に生えてる人の上半身に繋げる事は?」

「出来ると思いますけど……」

「ならやって、下の獣の部分だとあの獅子の身体に生えてる毛の下に硬い鱗が生えてるみたいで決定打にならない、さっきから狙ってる前脚とかもそうだけど本来なら一度でも当たれば使えなくなってもいい筈なのに、弾が体に突き刺さってから暫くして傷が塞がっている、それらの状況から見て判断すると、体内に入っている魔導具の力により治癒術が発動していると判断出来る……、多分だけどあの人型の部分に治癒術が発動出来る魔導具を埋め込んでいるのかもしれない」


 人の上半身に魔導具が?、それなら周囲に散らばった雪を使えば狙えるかもしれない。

自動迎撃を解くと指輪と心器の長杖の能力を使って魔術の発動を加速させ、無数の【スノースパイク】を展開すると人型の頭部に向けて撃ち出す。

そして……


「……なんだあれ」

「レース良くやったわ……、でもこれは」

「フィリア、私の方は準備でき、こんな生物を作る何て正気を疑うわね……」

「うそ、何あれ……」


……頭に被っている頭蓋骨を吹き飛ばすとそこには、今迄見えなかった部分が全て魔導具に変えられていて、下の獣の身体から魔力を吸い上げているのか、脈動しながら白く輝いているのだった。

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