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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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仲直りとミオラームからの説得

 これはいったい何が起きたのだろうか……、目の前にいきなり表れた三人を見て状況が理解出来ないし、それにこの依頼に同行して仲直りする予定だった師匠は驚いた顔をして固まっている。

そしてフィリアに関しては、気まずそうな顔をしたかと思うと踵を返して何処かに行こうとするが……


「フィー?何処に行くのかしら?」

「何処って……、その」

「確かフィー、この国にお母様がいらっしゃると言ってましたわね……、つまりこの方がそうなのではなくて?」

「……はい」

「ならフィー、あなたはここで逃げずに待ってなさい、これは賢王としての命令ではなく親友としてのお願いですわよ?聞いてくださいましね」


 逃げようとしていたフィリアを引き留めたミオラームは、未だに状況が呑み込めていないぼく達を他所に師匠に向かっていく。


「あなたですわねっ!?私のフィーの母親と言うSランク冒険者の【叡智】カルディアというのはっ!」

「……えぇ、そうだけどあなたは誰かしら?」

「私は南東の大国、マーシェンスの賢王ミオラーム・マーシェンスですわっ!それにしてもあなた、凄くお若いのですわね……」

「ふふ、若い何て照れるわねぇ、で何の用かしら?」

「は、一瞬若さに気を取られて忘れてましたわっ!……、あなたとマスカレイドの間に産まれたフィーが今迄どれだけ苦しんで来たか分かっておりまして?、人族にも受け入れて貰えず純血派が大多数なエルフ族に限っては迫害され、生きる為に暗殺に手を染める事になったのですのよっ!?」


 二人が話している間にダートに近づて起き上がらせて、スイの方は大丈夫なのか心配になってそっちを見ると……既に起き上がってフィリアと何か話している。

しかもそこには、先程集落の代表と話していたサリアが騒ぎを聞きつけたみたいで、会話を止めて合流しているが……、耳を澄ましても何も聞こえない辺り何らかの方法で周囲に声が漏れないようになっているのかもしれない。


「……それをマーシェンスの賢王様が言ってどうするの?」

「どうするのって、今の彼女は私の姉であり親友ですのよっ!家族を支えるのは当然だと思いますわよ?」

「そう……、でもこれは私達親子の問題、幾ら親しいとはいえ放っといて貰えないかしらぁ?」

「そんな訳には行きませんわね……、私は先王の依頼を受けたフィーに暗殺されかけたのですわよ?、その後私に色々と質問してきて……答えてる間に、『私はあなたを殺せない、殺したくない』って言いだして、何事かとお話しを聞いたら両親の実験の為に造り出されたって言うではありませんか、あなた達は人の命を何だと思っていますの?」

「……それに関してフィリアとしっかりと話し合いをしたかったからここに来たのよ、だから娘の元へ行かせてちょうだい」


 ミオラームはまだ色々と言いたそうな顔をしているけど、ここに来るまでの間のやり取りで何となく分かったけど年齢以上に頭の回転が速いし賢い子だ。

自身の身体に封じられている神の影響を受けて居た時は、何だこの子はって思ったり……、正直ぼくに好意があると行って凄い言い寄って来るのは苦手だけど、これで八歳と言われると疑ってしまいそうになる。


「出来ませんわ、フィーの事は私が守るのですわ」

「……お願いよ、産まれた経緯は確かに私達の興味本位による実験だったけど、それでもあの子は私の娘なの、だから無理かもしれないけどちゃんと話し合いをして可能であるなら仲直りをしたいのよ」

「ちょっ!おやめになってっ!頭を上げてくださいましっ!」


 真剣な顔をしてミオラームに対して頭を下げる師匠の姿をダートと二人で黙って見ているけど……、この状況ではしょうがないと思う。

ここでぼく達が口を挟むわけにも行かないし……、それに向こうから話が終わったのかフィリアだけミオラーム達の方へと歩いて来ている。


「あなたが許可をしてくれるまで下げた頭を上げる気は無いわ……、だからお願い」

「あ、あぅ……、えっとどうしたらいいのかしら」

「ミオ、母の気持ちは分かったから大丈夫、後は私が話す」

「フィーっ!でも、私っ!」

「いいの、ミオが私を必死に守ろうとしてくれてるのは分かったし、それは凄い嬉しい、でも……二人のやりとりを聞いていて思った、何時までも逃げるわけには行かない、だから任せて、私はもう大丈夫、だって私にはミオがいるから」


 それを聞いたミオラームは、師匠に向かって頭を下げると小走りで何故かぼく達の方にやって来る。


「……ミオラーム?」

「私頑張ったから頭を撫でて褒めて欲しいですわ?」

「えっとミオラーム?」

「……レース?、私は大丈夫だからミオラーム様を甘やかしてあげて?、いくらしっかりしてると言ってもまだ子供だもの、甘えたい時には甘えさせてあげないと」

「あら?ダート様でしたわね……、良くお分かりですわねぇ、さすが私の愛しているレース様が選んだ方ですわね、将来立派な母親になりそうですわっ!」


 私の愛しているレースとミオラームが言った瞬間に、ダートの笑顔が一瞬引き攣った気がするけど、気付かなかった事にしておいたいい気がする。

それに師匠とフィリアの会話が急にこっちに聞こえなくなり、遠くにいるサリアとスイの会話が何となくだけど耳に入って来る辺り、多分だけど彼女の能力か何かなのかもしれない。


「ダート様?顔が一瞬引き攣った気が致しましたけど、大丈夫ですの?」

「大丈夫だよ?だって誰に愛されてるとか囁かれたとしても、私のレースが他の人の所に行く事が無いって信じてるもの」

「あら?レース様は王族ですのよ?、これから先ダート様との間以外にも血を残さなければいけない責務がありますし難しいのではなくて?、例えば釣り合う相手で栄花のキリサキ家のご令嬢で、栄花騎士団副団長のカエデ様とかどう見てもレース様に惹かれておりますし……、あのままにしてるのは酷だと思いますわよ?」

「カエデちゃんなら別に……、我慢できるからいいかな」

「えっと、ぼくの事を勝手に進められても……」


 ぼくはダート意外とそういう関係になる気は無いし、他の人と結婚する姿が想像出来ない。

王族としては確かに沢山の血を残すべきだとは思うんだけど……


「レース様?これは大事な事ですのよ、正妻の許可なくして第二婦人、第三婦人と新たに増やす事は出来ませんの、仮に正妻の気持ちを無視して強引に契りを結ぼうものなら、女同士のドロドロとした嫌な戦いが起きても文句は言えませんのよ?」

「でもぼくは、ダートさえいればいいし」

「それでも別にいいでしょうけど、もしストラフィリアの王である覇王ミュラッカ様が子宝に

恵まれなかった場合、自然とレース様達の内の誰かに神が宿り戻らざる負えなくなるので、しっかりと考えないとダメなのですわよ?」

「レース?私はカエデちゃんなら大丈夫だから一度話してみたら?」

「……考えとくよ」


 ぼく達が話してる間にも声は聞こえないが二人のやりとりは続いて行く。

そして会話が一区切りついたのか声が聞こえるようになったかと思うと……、フィリアが手を上げると勢いを付けて師匠の顔をビンタする。


「……あなたの気持ちは分かったし、今迄金銭面で二人が助けてくれてたのは分かった、でも今迄私が辛い時に助けてくれなかった両親の事は許したくないけど、私が未来をミオと生きる為にこの一発で許してあげる」

「……ありがとうフィリアちゃん」

「ふんっ!これからは毎月一回は少なくても顔を出すから、母が言った家族としてやり直したいが本気なら態度で見せて貰う……、これで用件が済んだでしょ?さっさとレースの診療所に帰ったら?魔王ソフィアと栄花騎士団副団長のカエデ様に任せて来たんでしょ、さっさと戻って手伝って来て、そうしないともう口を聞いてあげない」

「えぇ……、分かったらフィリアちゃん、これから毎月帰って来るの楽しみにしてるからね」


……そう言うと同時に師匠の姿が消えて何とも言えない雰囲気になる。

まさか目の前であんな勢いのあるビンタをフィリアがするとは思わなかったから、思わず会話を止めて黙ってしまったけど、取り合えず仲直りが出来るきっかけで出来たならそれで良かったと思いながら、照れくさそうな顔をしている義姉がこっちに歩いてくる姿を見守るのだった。

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