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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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34話 造られた命の危険性

 ミオラームの説明が続くけど、異常種が大量に森に放たれた理由がとても自分勝手な理由だった。

先代の賢王の時に、魔道具を使う事で異なる生物同士を胎児の状態で結合させ、繋ぎ目に魔道具を取り付けることで、拒絶反応を起こすこと無く成長していく。

そして世界に生まれ落ちた後は刷り込みにより、製作者を親として認識させる。

ここまではマスカレイドも順調に行っていたらしいけど、その後に起きた問題が大きすぎたらしい、単純な話生物を育てると言う事は食料等の必要なコストが掛かるけど、作られた存在達は一つの体なのに二匹分や三匹分と、大量の餌を求め、作り出す手間の割に管理コストが大きすぎるという理由だけで、この森に解き放ったらしい。


「……ぼくやダートも以前とトカゲと蛇が一緒になった異常種に出会った事があるんだけど」

「間違いなくマスカレイドの生み出した生物兵器ですわ、そのモンスターはどうしたんですの?」

「当時、開拓を行っていた一人の男性の腕が犠牲になったけど、ぼく達で何とか討伐したよ」

「そうですの、……、腕を無くしてしまった方は今はどちらにいらっしゃるの?謝罪をしたいですわ」

「その人ならここを出て何処かに行ってしまったから分からないかな」


 ただ……これに関してはミオラームの問題では無いと思う。

どちらかと言うと先王がマスカレイドの生み出す魔導具や魔科学に心酔し、国の産業然り全てを彼に委ねつつあったのが原因だ。

まともな思考の持ち主だったらそんな事をしないだろうし、そんな状況を変えようと手段に関しては褒められた物ではないけど、先王を暗殺して王位を継いだ覚悟は本物だと感じる。

ただ……、成人もしていない小さな女の子にそんな思いを抱かせる国に対して正直良い感情が浮かばない、彼女の兄姉が同じように危機感を抱いていたのなら、こんな事にならなかったろうにと思うけど、これに関してはぼくがとやかく言っていい物じゃない。


「そう……ですの、たまたまこの辺境の都市にある森がマーシェンスに近かったばかりに……」

「ミオラームが気に病む事じゃないよ、これに関しては先王とマスカレイドの問題だから」

「でも、私が兄様や姉様よりも先に産まれていたらこんな事に何てならなかったと思いますわ」

「……そういう話を今されても、本題からずれるだけだから止めてくれない?私達はあなたの護衛依頼を受けに来ているの、後悔した話を聞きに来たわけじゃないわ」

「うぅ……」


 ミオラームが涙目になってぼくの方を見るけど、これに関しては話を逸らしてしまった原因がぼくにあるからちゃんと謝った方がいいだろう。


「これに関してはぼくが、関係ない事を言ってしまったせいだと思うから……ごめんなさい、次から気を付けるよ」

「レース様……」

「あのぉ、喧嘩をするのはええんけど、依頼のお話しを続けてもええんかな……」

「エレノアさん、お願いします……、このままだと何度も脱線してしまうと思うから質疑応答は全部話終わってからにしよう?」

「ですね、では続きなのですが、ミオラーム様の説明通りであるのならSランク冒険者【黎明】マスカレイドの手によって生み出された生物が森に放たれた事で、周囲の野生動物やモンスター等と交配した結果、常識ではありえない異常な種族が産まれた可能性があります」


 ……エレノアの言う事が事実であるとしたら、マスカレイドのせいで崩れた生態系のせいで何が起きるのか予測も付かない事態になっているのかもしれない。

ただ……そんな事が起きるのだろうか、遺伝子的な意味でも不可能だと思うし……


「レース様、言いたい事がありそうな顔をしてますが後にしてくださいね」

「大丈夫、分かってるよ」

「ありがとうございます、続けさせて頂くのやけどこの推測は外れてる可能性があります、ですがあらゆる可能性を踏まえた上で、護衛対象であるミオラーム様の命を最優先にして頂けますよう宜しくお願いします」

「その必要は無い、ミオの事は私が責任を持って守るからあなた達は周囲の警戒とモンスターが現れた時の対処をお願いする、だからあなた達は私の指揮下に入って命令を聞いてくれていればいい、行くわよミオ……、取り合えず今から2時間後に現地集合でお願い」

「ま、待ってよフィーっ!私までレース様とお話ししたりないのにぃっ!」


 膝の上に座っていたミオラームを降ろして立ち上がると、フィリアが彼女の手を引いて会議室から出て行く。

何とも慌ただしい退室に引き留める事も出来なかったけど、いったい何をそんなにフィリアは不機嫌になっているのだろうか……。

特にミオラームがぼくに好意があると言った時から、何だか睨みつけられていたような気がするし、何か失礼な事をしてしまったのなら何処かのタイミングでちゃんと謝っといた方がいいだろう。


「何あの女、私嫌いだわ……、何だか偉そうと言うか私達の事雑魚だと思って見下してるのが態度で見えるし……、こんな依頼受けるんじゃなかったわ」

「ごめんなさいなんよ……、この都市に滞在している冒険者の中で成功確率が高いと判断出来る人物がスイ様しかおらんかって……」

「別にあなたに怒ってるわけじゃないから大丈夫よ?、依頼は依頼でちゃんとやるから安心してちょうだい?」

「私も……、フィリアさんに対して苦手意識あるけど、久しぶりの依頼頑張るから大丈夫だよ?」

「ぼくはちょっとフィリアを追いかけて先に現地に行ってくるよ、何であんな態度を取ってるのか気になるから……」


……ぼくがそう言うとエレノアがこっちを見て『申し訳ないんけど、お願いするんよぉ……』と申し訳なさそうにしている。

ダートをこの場に残して大丈夫だろうかと、立ち上がって隣を見ると『うん、レースが決めたならそれでいいと思うから頑張って?』と送り出してくれてくれるのだった。

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