相手を信じる事と彼女の過去
逃げ出したダリアを見て、何ていうかドレスを着てるのに両手でスカートを持ち上げて器用に走りながら階段を上がるなぁって思ったけど……
「あっ……いってぇ!」
姿が見えなくなった後に転んだのかダリアの痛がる声がした後に、ドアを開けて勢い良く閉める音がする。
……もしかしてだけど、大きな音を出す事で転んだのを隠そうとした?
「ねぇレース、ダリアの言ってた事ってほんとなの?」
「違うと言ったら嘘になるけど……」
「へぇ、ふぅん……」
ダートの視線が冷たい。
これは何ていうか何を言っても言い訳にしかならない気がする。
「ダート様、そんな怒らないであげてください」
「でも……」
「私は見た目でそのように見られるのは慣れてますし、それにダート様も家に帰る道中、私の胸を見ていたでしょう?」
「あ……」
「中には見られて嫌がる人もいますが、私はしょうがないと思っています、実際大きい物があったら私もつい見てしまいますし、それに……」
それにって何だろうか……。
サリッサは無言になると、暫くダートの顔を見て口を開く。
「そんなに自信が無いのですか?」
「……え?」
「ダート様がレース様を選んだように、レース様もあなたを選んだのですよ?そんなレース様があそこまでしっかりと自分の意見を言うって事は、どう見てもあなたの事しか見てないじゃないですか」
「あ、えっと……」
「確かにダート様は幼い容姿をしておりますし、体付きも大人の女性というよりは少女みたいですが、レース様はあなたの何処を見て好きになったのか分かりますか?」
ダートの何処を好きになったって言われても、正直一緒に居る間に何時の間にか意識していたというか。
側にいて欲しいと感じたり、一緒にいると気持ちが落ち着くようになった。
そういう意味では彼女に会ってからぼくの日常は大きく変わり始めたんだと思う。
「何処にかぁ……、ダートと一緒にいる間に何時の間にか大切な人になっていた感じかな」
「分かりますか?ダート様、レース様はあなたを知る中で好意を持ち一緒に居たいと感じるようになったのです」
「あの……、うぅ」
「レース様が信じて好きになってくれた、あなたを信じてあげてください、そしてレース様の事をちゃんと見てあげてください、あなたの旦那様は私の胸等の見た目で離れる人に見えますか?」
「見え……ないです」
サリッサはやっぱりしっかりとした人だと思う。
年齢なんて者よりも、考え方と言うか人としての在り方がぼくやダートと比べてしっかりしていると思うし、自分よりも立場が上の人にこうやってしっかりと自分の意見が言えるのは凄い事だ。
「なら、信じてあげてくださいね?、そうしないと何時かレ―ス様に嫌気が差して何処かへ行ってしまうかもしれませんよ?」
「ぼくは何があってもダートを置いて行く気はないよ?」
「レ―ス様、これは例え話なので……、私も先程のレース様の発言を聞いたらそんな人では無いと分かります」
「それなら良いんだけど、これ以上はダートが泣いてしまうかもだから終わりにして貰っていいかな」
「それは失礼致しました、言い過ぎてしまったようです……、ダート様申し訳ございませんでした」
そう言ってダートに向かって頭を下げるが、彼女の方は何ていうか眼を真っ赤にして今にも泣きそうだ。
「ダート大丈夫?」
「……うん、サリッサさんから言われた事で色々と思う事があったけど、私は大丈夫」
「ならいいけど、無理はしないようにね」
「ありがとう……、大好き、サリッサさんも私達の関係に対して思う所があったからこうやって言ってくれたんですよね?」
「はい、お二人から良くないと思う所があったら遠慮なく教えて欲しいと言われましたので、内心いつお怒りを買ってしまうのかとびくびくしながら言わせて頂きました、ですがこの行動は侍女と言う立場からしたら余りにも出過ぎた態度ですので、何らかの処罰を受ける事になったとしても私はそれを受け入れます」
身体を震わせながら処罰って言われても、彼女がぼく達の事を思ってやってくれた事に関して、どうしてそんな事が出来るのか。
むしろサリッサにここまでの事を言わせてしまったぼく達の責任だし、反省するべきはこちら側だ。
「いや、処罰何てしないよ、むしろぼく達の方が謝らないといけない立場で……、早速ぼく達に寄り添ってくれてありがとう、そして怖い思いをさせてごめんね?」
「私も、迷惑をかけてごめんなさい……サリッサさん」
「そんな、レース様とダート様から謝罪なんて……って言いたいのですが、お二人はストラフィリアで育った分けでは無いですものね……、あの国でしたら戦う力のない私のような侍女がこのような発言をするとどうなるか分かりませんでしたから、良くして貰う事に凄い違和感がありますね」
「違和感があるって……、ルミィ達とは仲良くしてたよね?、とてもそんな扱いされてるようには見えなかったけど」
「それは……とても言いづらいのですが、私はストラフィリアの王都で小さい商家の一人娘として産まれ、今から三年ほど前の事なのですがいきなり賊が家に押し入り、家族の命を奪われ家の財産は全て家督事奪われてしまい、路頭に迷う事になってしまった時にたまたま近くを通った先王ヴォルフガング様とルミィ様に声を掛けられ、ルミィ様が私を必要としてるという事で侍女として雇われ住む場所を与えられたのです……、それ以降王族の皆様にはとても良くして頂けて、でも王城内の騎士や貴族様達からは良く思われていなかったので……」
……父さんと過去にそんな事があったのかと思うけど……、ルミィが必要としてるという事の意味が今一分からない。
一応ミュラッカからはルミィの能力についてある程度説明を受けてはいる。
自身の特性の力で未来を視る事が出来るらしいが、当時のあの子にはどのような物を見てそう思ったのだろうか……。
そんな事を思いながら彼女の話を聞くのだった。




