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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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その日の終わりに……

 あの後飲食店での食事を終えたぼく達は特に寄り道する事無く皆でぼくの家に帰った。

とは言えその間に何があったのかというと、届いた珈琲がドロドロになる位に大量の角砂糖を入れて美味しいと飲むアキラさんに、それを見てドン引きするジラルドがいたり、店員さんが覚えたという食器を使った曲芸は凄いとは思ったけど……、お皿を器用に指に挟んで4枚持とうとしてそのまま床に落として割った時は残念だった。


「やっぱ久しぶりにこの三人で夕飯食べに行くのはいいなぁ、気を遣わなくていいから楽だわ」

「楽なのは分かるが、貴様はもう少しっかりとした方がいいと思うぞ?、レースの家に来て直ぐリビングのソファーで横になるのはだらしが無さ過ぎる……」

「ぼくは気にしないからいいけど……」

「レースがそう言ってるんだからいいだろ?」

「……ならいい」


 アキラさんも空いてるソファに座ったのを見て、キッチンから何か飲み物を持ってこようと思ったけど……、そういえば買い出しに行ってないから何も入ってなかった事を思い出す。

急いで買いに行こうと思っても外はもう夜だから、さすがにお店はもう閉まっている。


「気持ちは嬉しいが気を遣わなくて良い、急に押し掛けて食事に誘った後にこうやって家に上がらせて貰っているのは私達の方なのだからな……」

「でも……」

「今回気を遣うべきなのは私達の方だ、まぁジラルドは気にせずソファーで寝てるがな……」

「あ、ほんとだ」


 何時の間に寝てしまったのだろうか……、ソファーの上で寝息をたてている。

泊まり込みの仕事で疲れが溜まっているのかもしれないから今はそのまま寝かして置いてあげよう。

でも、こんなに疲れてるならコルクも家で休ませてあげれば良かったのに……


「……何でコルクは疲れてるジラルドを家から出したのかな」

「心を休ませる為だと思うが?」

「心?好きな人と一緒にいたらそういうの大丈夫じゃない?」

「それは貴様の場合だ、皆がそうであるわけではない……、中には一人の時間が必要な者や、定期的に騒いで溜まっている心労を発散させる必要がある、特にジラルドの場合は後者だな」

「じゃあアキラさんは?」


 多分だけどアキラさんの場合は一人の時間が必要な方だと思う。

そういう意味ではぼくはどっちなんだろうか、以前は一人でも問題無かったけど今は何ていうか、ダートが近くにいないと落ち着かないというか側にいる事がぼくの中で当然のようになっている……、特にストラフィリアに連れ去られて再開するまでの間はずっと彼女の事が心配だった位だ。


「……そうだな、私はどっちでもないが敢えてどちらかと言うのならジラルドと同じタイプだ、そういう意味ではこのアホとは気が合うのだろうな」

「アキラさんは一人の時間が必要な方だと思ってた……」

「良く言われるが、私は一人だと生活能力が低すぎるし食事も偏り過ぎる、しかもそれを自分で治す気もないという意味では、アンに迷惑をかけているが……、彼女に管理されている位が丁度良いし、あれもそれで満足しているみたいだからこれでいいのだろう」

「……なるほど?」

「そういう意味では私の秘密を知って尚、傍にいてくれる事に感謝してばかりだ」


 アキラさんの秘密?それって何だろうか……、もしかしてぼくが聞いては行けない事か、それとも聞いていい事なのか分からない。

でも、この話の流れ的に聞かない方が不自然だと思うし……


「それってぼくが聞いても大丈夫なの?」

「問題無いから話している、それ位貴様の事を弟子として信頼しているのだからな、まぁ秘密と言っても私が人族では無く天族と言う事なのだが、レースは私の妹と会っているから知っているだろう?」

「えぇ……、でもアキラさん初対面の頃から隠す気は無かったよね?背中に氷の翼を生やして飛んで来てたしさ」

「あの時は初対面だったからな、かっこつけて印象を残そうとしたのだが……」

「むしろその後に起きた事の方が色んな意味で濃すぎてどうでも良くなってたかな」


 ただこの出会いが無かったら今のぼくはいなかったと思うし、いつまでも独りよがりなままだったと思う。

ジラルドもそうだ、この二人には感謝の気持ちが尽きないし、友人になってくれた事も素直に嬉しいんだ。


「あぁ、確かにあの後ミュカレーの襲撃とかあったからな……、そうなるのもしょうがないか」

「他にも色々とあったけどね……、でも今は良い思い出だよ」

「そうか……、そうなのかもしれないな」


 二人でジラルドを起こさないように静かに笑う。

そういえばふと思ったのだけれどアキラさんは今日何処に泊まるのかな……


「あの……」

「どうした?」

「アキラさんは今日は何処で休むの?」

「……そうだな、特に考えてはいなかったが既に夜も遅い、今日は久しぶりに寮の部屋を使わせて貰おうと思う」

「そっか、でも暫くの間マーシェンスから来た【賢王ミオラーム】がカエデの部屋に滞在するみたいだけど大丈夫?」


 カエデの部屋に滞在する事に関して凄い文句を言っていたミオラームの事だ。

目を覚ましたらまた騒ぐだろうし、そうなったらアキラさんが休めないと思う。


「あぁ、そういえばそのような話があったな……、まぁ大丈夫だろう、そこらへんは姫が何とかする筈だ」

「それならいいけど……」

「姫は姫で、最近心境の変化があったようで様々な面で強くなろうと必死だからな……、信じてあげたいという気持ちの方が多い、だから貴様が何を心配しているのかは分からないが問題無いが……、そうだな念の為暫くは寮に滞在するか、自宅からよりも寮からの方が冒険者ギルドへ行く距離が近いからな……それにレースの心配も減るだろう?」


 ……どちらかと言うと今のカエデは精神的な疲労を溜めているように見えるから、信じすぎて負担をかけてしまうのは良くないと思うけど……、アキラさんが滞在してくれるなら大丈夫だろう。

それに暫くいてくれるという事はその間に武器の扱い方を教えて貰ったりも出来るし、色々と新しく覚えた雪の魔術について相談もしたいからありがたい。


「ありがとうアキラさん、それならちょっとお願いがあるんだけどいいかな」

「……お願いだと?、貴様がそんな事を言うとは珍しいな?内容次第だが取り合えず言ってみろ」

「ぼくに、武器の使い方をちゃんと教えて欲しい……、以前は才能が無いと言われたけど限界に至る為にどうしても必要なんだ」

「……限界に至る、その意味を分かって言ってるのか?」

「うん、どうしてもぼくの大事な人を守る為に力が欲しいし限界に至りたいんだ、だからお願いします」


……ぼくの言葉を聞いたアキラさんが暫く何かを考え込んだかと思うと、『そこまで言うなら、その願いを聞いてやろう……、明日から厳しく教える覚悟をしておけ』と言ってソファーから立ち上がり一階へと続く階段へと歩いて行く。

多分寮に帰るのかなと思って見送ろうとすると『……貴様は早めに休んで明日に備えておけ』と楽し気に笑う、その姿を見ていったいどうなるのだろうかと思ったけど翌日以降、今迄以上に厳しい修行をつけられたのだった。

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