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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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大事な話

 ソフィアがどうしてここにいるのか、そしてフィリアも何でここが分かったのかと色々と思う事や言いたい事が沢山あるけど……、今はどうするのが良いのだろうか。

そう思いながら周囲を見渡すけど、スイは寮の中に帰ってしまったのか姿が見えないし、カエデは先程起きた事で腰が抜けてしまったのか、その場で尻餅をついてしまっている。


「レースさん、大丈夫ですか?」

「うん……、でもどうしてここに?」

「遠くからでも分かる位に、不自然な赤い光が都市の上空を飛んで行くのが領主館から見えたら調べに来ますよね」

「被害は無かったの?」

「都市で一番高い建物って言っても、教会なんですけどそこの屋根を吹き飛ばした位です」


 ここから都市までかなりの距離がある筈なのに、そこまで攻撃が届いていたという事に驚きを隠せない。

それに屋根を吹き飛ばしたという事は、教会に滞在しているらしいSランク冒険者【教皇 ミコト】は無事だろうか。

どんなに強くても不意を突かれたら危ないと思う、それに何かあったらアキラさんが悲しむと思うから、無事でいて欲しいけど……。


「教会って事はミコトは無事なの?」

「あの人のおかげで屋根が吹き飛ぶだけで済んだのだと思いますし、カルディア様と同じくらいに強い方ですから無事だと思います」

「なら良かったけど……、ミオラームの様子が急におかしくなったんだけどいったい何が起きたのか分かる?」

「それに関しては後日改めて説明させて頂きます……、今はフィリアさんに対してお話しなければいけない事があるので」


 ソフィアは心器の杖槍を顕現させると右手に持ってフィリアへと向ける。

それに反応したのかフィリアはミオラームを抱えながら、器用に片手で腰のベルトから短剣を抜いて無言で構えて……


「……聞きたい事って何?」

「賢王ミオラーム様の事だけど……、レースさんの所に滞在するようにと許可を出しましたけど誰もこんな大きな喧嘩をしろとは言ってませんよ?」

「それは私が知りたいわよ、何で冒険者ギルドにいた栄花騎士団の副団長様にミオの事を任せたらこうなったのか説明して貰いたいくらいよ」


 二人の視線がカエデに向かう。

どうしてこうなったのか説明して欲しいという事だろうけど、未だに立ち上がれないでいるカエデをそのままにしておくわけにも行かないから、彼女を抱き上げるようにしてゆっくりと立ち上がらせる。


「カエデ、大丈夫?」

「あ、あの、いえ、ありがとうございます」

「カエデ様、出来れば可能な範囲で良いので話して貰えますか?」

「……はい、ミオラーム様を私の部屋に案内したら、この部屋じゃ嫌だと大声で叫び始めちゃいまして、その声を聞いて駆けつけてくれたレースさんと口論になってしまい、決闘する事になってしまって」

「ミオがそんな事を?、嘘を言わないでって言いたいけど……」


 フィリアは何か思う所があるのか、短剣を鞘に戻すと黙ってしまう。

彼女はミオラームの護衛としてこの国に来たみたいだし、そういう意味ではぼく達よりも良く知っている筈だ。


「何か思い当たる事でもあるの?」

「レース、ミオは賢王になってから時折人が変わったかのように我が儘になったりするようになって不安定な事が増えてたから、その事も含めてこの国に来たらあなたの元を訪ねて診て貰おうと思ってたんだけど、幸いな事に君の所に滞在させて貰える事になったから頼もうと思ってお土産を持って行ったらいないし……」

「あぁ、うん取り合えず何を言いたいのかは分かったけど……」

「レースさんに診せても、ミオラーム様の事は何も分かりませんよ?逆に王族同士で、悪い影響が出る可能性があります」

「……じゃあ私の行動は無駄だって事?、それにレースが王族って何?」


 ……フィリアはぼくがストラフィリアの王族である事を知らなかったのか。

師匠やマスカレイドなら必要があれば教えると思うけど、多分言う必要が無かったのかもしれない。


「そういえばフィリアさんは知らないのでしたね、彼はストラフィリアの前王ヴォルフガング・ストラフィリアのご子息の一人です」

「……母さんが急に拾って来た時は何でかと思っていたけどそんな事があったんだ?」

「えぇ、詳しくは王族の方にしか話す事は出来ないのですが……」

「話せないならそれでいい、聞いたところで何も出来ないでしょ?」

「残念ながら……」


 ただ悪い影響が出るって言う言葉の意味が何となくだけど分かる気がする。

あの時ミオラームに魔力の波長を合わせた時に頭の中に浮かんできた物が、ぼくの考えが間違えでなければ彼女の中に封じられている神なんだと思う。


「でしょ?だから聞く必要は無い、あの時は咄嗟に麻酔を撃って眠らせたからいいけど、あのままだったら危険だった位しか私じゃ分からない」

「えぇ、それで良かったと思います、フィリアさんがそうしなければ私がミオラーム様の意識を奪っていましたから」

「……なら良かった、親友を他の人に傷つけられる何て許せないから」


 あの時フィリアがミオラームを眠らせていなかったら、彼女は『神器解放』と口にして封じられている神を解放してしまっていたのかもしれない。

もしそうなっていた場合、父であるヴォルフガングのように自分の命を犠牲にして理性の無い化物と化してしまっていたのかもと思うと、彼女が生きていてくれて良かった。


「とりあえず私がフィリアさんに聞きたい事に関してはもうないですね」

「なら休ませてあげたいんだけど、何処に寝かせてあげたらいい?」

「それなら私の部屋を使ってください、広さ的に三人位なら寝れるのでっ!」

「そう?なら使わせて貰うね、栄花騎士団の副団長さん?」


……そう言ってぼくに顔を真っ赤にして身体を預けていたカエデが自分の脚で立ち上がると、ミオラームを背中に担いだフィリアが彼女に続いて寮の中に入って行く。

そして暫くして『うっそでしょ!、あの流れで入って来るの!?』とスイの驚いたような声が聞こえて来たけど、こればっかりは諦めて貰うしかない。

そう思っていると、ソフィアがぼくの方を見て『レースさんにはお話しをしたい事があるので、場所を移させて貰いますね?』と言うと、一瞬で周囲の風景が変わり見た事の無い部屋に転移させられるのだった。

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