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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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我が儘王女と鉄の弾丸

 ぼく達が外に出るとそこにはミオラームと困った顔をしているカエデの姿があった。

正直しょうがないという思う、カエデからしたら友達を寮に連れて来たと思ったらいきなり決闘騒ぎだ。

これで困るなという方が無理がある。


「出て来ましたわねっ!ではそこの大きなお家に当たらないように気を付けてぶっ飛ばして差し上げますわ!」

「えっとミオラーム様、本当にやるのですか?」

「えぇっ!私に対して失礼な発言をしたのですもの眼に物を見せて差し上げますわ」

「ここはマーシェンスではないんですよ?、他国で決闘するだけでも問題なのに……、ここは王室属領ですよ?本当にやってる事の意味を理解して――」

「それ位わかっておりますし、魔王様に迷惑をかけたら私がちゃんと謝りますわ、だから問題ありません事よ?」


 謝って済むならそれでいいと思うけど、カエデは言いたいことはそういう事では無いと思う。

それにソフィアに謝ると言っても彼女の場合、謝罪されたら受け入れてしまうだろうけどその後ストレスで暫く胃が荒れてしまう気がする。

以前師匠の家に住んでいた時に頼まれて胃薬を作った事があったから、出来れば色んな物を溜め込みやすいソフィアの精神には負担を掛けさせたくはない。

でも決闘と言う事態になってしまった以上はそれ無理だろうから心の中で謝るしかない、ごめんね。


「それにあちらにいるのは我が国の冒険者【死滅の霧】スイでしょう?、出来ればでいいのだけれどこちらに帰って来てくださらないかしら?、マーシェンスでは治癒術を使える者が滅多にいないからあなたの存在は貴重なの」

「……いやよ、誰があなたみたいな王様がいる国に帰るものですか、それに私はここでレースから治癒術を教わって治癒術師の資格を得る為にいるのよ?、言うのなあ今の私はこの人の弟子なのだから、幾ら賢王ミオラーム・マーシェンス様からのお願いとは言え聞くわけにはいかないわね」

「あ、あなたもレース!?、カエデ様もだし、それに私の一番の親友もメセリーに行くってなったら、『久しぶりにレースに会えるかも』って嬉しそうな顔をするし、あなたって本当に何なんですの!?、ほんとに頭に来ますわっ!皆、皆私を見てくれないのだわぁっ!」

「……私を見てくれない?」

「何でもないのだわっ!、さぁこれは真剣勝負なのだから名乗りを上げさせて頂きますわ?『私は、マーシェンスの賢王ミオラーム・マーシェンスっ!、英知を極め、己が我欲のままに全てを滅ぼそうとした神を封じた人柱なのだわっ!、私を愚弄した愚か者をぶっ飛ばしますのよっ!!』」


 何ていう頭の悪い名乗りだろうか……、それに何となくだけどこの子の名乗りと、見てくれないという言葉で彼女がどうてこうなってしまったのか分かった気がする。

この子は多分、大声で騒いで我が儘を言う事で自分の事を見て欲しいのだと思う。

これは想像でしかないのだけど、そうでもしないと誰もミオラームを見てくれなかったし、構ってもくれなかったのかもしれない、行動からそう感じさせてくれるし、今の彼女はまるで駄々を捏ねる子供そのものだ。

一応それ以外にも確信を至った理由はある、【己が我欲のままに】、そう今のミオラームの行動そのままだし、こちらに関しては多分や想像では無く、間違いなく身体に封じられた神の影響を受けてしまって歪んでしまっていると判断出来た。

ただ、これに関してはあの時ぼくの心の中で、マリステラが王族の事に関して教えてくれなかったら気付く事すら不可能だったと思う……、今はまだ身体を奪われてはいないみたいだけど、このままだと何れはそうなってしまうのかもしれない。


「さぁっ!あなたも名乗りなさいっ!」

「……レース、君を取り合えず落ち着かせる為に倒す事にした、南西の大国メセリーの辺境に住む治癒術師だよ」

「あなた……、立派な親を持ちながらふざけてますわっ!、カエデ様はもしもどちらかが致命傷を与える一撃を加えようとしたら止めるようにっ!」

「はい……、もうそれでいいですし、何かあったら責任取って下さいね?」

「勿論ですわっ!マーシェンスの名において責任は取らせて頂きますわっ!では、レース様お覚悟をっ!」


 ミオラームはコートから複数の小さな鉄の塊を取り出すと、それを宙にばら撒くと身体から青白い雷を放ちその場に停滞させる。

いったい何をしているのか分からないけど、いつ攻撃が来てもいいようにと心器の長杖を顕現させて【自動迎撃】の能力を発動させるが……、何もないぼくの隣を眼に見えない速度で飛来して来た何かが生成された雪の壁を貫通して小さな穴を空けた。


「……えっ!?、自動迎撃が!?」

「やはりあなたも王族故に心器を使えるみたいですわね?、それにその驚いたお顔っ!どうやら防御よりの能力ですのね?、ふふ、とてもいい事を教えて差し上げますわ?、私の特性は【貫通】、如何なる防御や障害物でさえ私の前では意味を成しません事よ?、まぁ心器で受けられたら意味が無いですが、この速度で飛んで来る弾丸をあなたが眼で追えるわけがありませんです事よっ!」


 あの飛来して来た物は彼女の周囲に固定されている小さな鉄の塊だったのか……、もしあれがぼくに当たっていたら間違いなく一瞬で致命傷レベルの傷を受けていたかもしれない。

とは言え本気でぼくに当てる気がないのか、それとも命中率が低くて当てられないのか雪の壁が周囲に現れては貫かれては砕かれて行き、地面に雪の花を咲かせて行く。


「ほらほら、降参するなら今のうちですわよ?私は心が広いですものっ!謝罪さえすれば終わらせて差し上げますわっ!」

「……するわけない、それに最初は確かに君の行動に対してイラっと来たけど今は、君を見て止めてあげなきゃって思ってるから、絶対にぼくからは退かないっ」

「生意気な事を仰るのね……、私を止めるとは何処から目線ですの!?」

「ぼく目線からだよ……、現にほらこっちを狙ってる筈の攻撃は未だに全部当たらないし、本当はミオラームって戦闘経験浅いよね?それとも今迄戦った事無かった?」

「う、うるさいですわっ!こんなの当てようと思えばっ!心器を顕現させれば出来るんだからっ!」


……ミオラームの手元に青白い雷が集まって行き見た事の無い武器が現れる。

先端に丸い穴が開いていて、握る部分があって、指を入れるだろう丸い所には押し込むものなのだろうか、見た事が無い部品が付いていた。

これはいったい何だろうと思っていると、彼女はコートの中から再び小さな鉄の塊を取り出し小さな箱のような物の中に入れていくと心器の握りの下の部分にそれを押し込んだ。

理解が出来ない何だこの武器は……、そう思いつついつでも避けれるように警戒していると『今すぐ横に跳びなさいっ!早くっ!』というスイの焦ったような声が聞こえて来るのだった。

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