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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第七章 変わり過ぎた日常

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私の思いと来訪者 

ダート視点

 二人が行った後レースとお義母様が帰って来るまでの間に必要な家具を集めようと外に出たのはいいけど、コーちゃんの雑貨屋は開いていない。

昨日の夜は明かりが着いていたから帰って来てはいると思うんだけど、もしかしてまだお店の方に関しては再開していないのかも?。

でも以前ここの合鍵を預かって、必要な物があったらお金を置いて持って行っていいと言っていたから入ってみると……


「お邪魔しますー、コーちゃんいるー?」


 一応声を掛けてはみるけど返事がなかった。

もしかしてだけど、ジラルドさんの所に朝食を届けに言ってるのかも。

冒険者のギルド長となると泊まり込みが多くて、滅多に家に帰れないって聞いたことがあるからしょうがないんだと思うけど、私だったらレースが暫く家に帰って来れないってなったら耐えられそうにない。

実際にレースがストラフィリアに連れて行かれた後、彼が近くにいないというだけで不安で夜もちゃんと眠れなくなってしまったという事があって、カエデちゃんから眠れるようになるという睡眠改善薬を貰ってやっと眠れるようになった位だし……


「その不安の蓄積のせいかなぁ……、最近色々と自分の中の気持ちに抑えが効かなくなって来た気がするの」


 取り合えず私が知っているダリアの好みそうな物を空間収納の中に入れていくけど、あの子の事は最近やっと自分の娘として何となく自覚出来るようになって来た気がする。

まぁ一ヶ月も彼女から【母さん】と呼ばれ続けてたらそうなってもしょうがないけど、何よりも自分のお腹から産んだ分けじゃなくても、私とレースの血を分けて産まれた子だと思うとそれが暗示の魔術から生まれたもう一人の自分だとしても、愛しいという気持ちが出て来てしまうという事なのかも。


「ダリアは私と違って必要最低限の家具以外はいらないって言う子だから、服をしまう用のクローゼットと簡単なテーブル、後はベッドがあればいいけど、服装の方はあの子の身長とかが分からないから本人にお金を渡して、マローネさんの所に自分で買いに行って貰おうかな、あの人の所なら色んなお洋服があるから大丈夫だと思うし……」


 ただカエデちゃんの事となると話は別だ、義妹になるミュラッカちゃんから王族である以上複数の妻を持つ事はおかしく無いとは言われて、当時は必要な事なら受け入れるとは言ったけど、いざ実際にそうなる可能性があると思うと、理性ではしょうがない事だと分かっても気持ちの方ではそうはいかないみたいで……、だって他に奥さんになる人がいるかもしれないという事は、私が彼の中の一番じゃなくなるという事だから、そんな事耐えられそうにない。

出来るならレースの中で私が一番で合って欲しいという我が儘な気持ちがあるし、その気持ちのせいで昨日は嫉妬と不安な感情が抑えられなくなってあんな事をしてしまった。

結果的にお義母様にバレてそこから彼に怒られたけど、初めて怒られた時に私の事をちゃんと見てくれているんだという気持ちもあって嬉しくなってしまった自分が恥ずかしいというか、本当に反省出来ているのか自分で自分が分からなくなりそう。


「とりあえずお金は置いたからこのまま帰るけど、んー、何を持って行ったのか軽く書いてコーちゃんにお礼も残しておこ」


 コーちゃんにクローゼットとテーブルを購入した事と、結婚おめでとうと近くに置いてある紙とペンを使って書き置きを残すとそのまま家へと帰っていく。

多分だけど普段は気にしない飲食店の店員さんとのやり取りも、色々と溜まっていた思いが原因だと思うから、レースの言うようにこれからはちゃんと自分の気持ちを察して欲しい、言わなくても分かって欲しいってならずにもっとちゃんと言うようにした方がいいと思う。

以前コーちゃんやマローネさんと集まってお茶を飲んでいる時も二人に言われて直さないとって思ってはいたけど、実際に問題が起きてしまうまで心の何処かではそんな私でも近くにいて私を支えてくれると思い込んでいた部分がある。


「……診療所の方はそういえば今日はお休みの日だったね」

 

 家に着いたついでに下の診療所がどうなってるのかと中を覗き込もうとしたけど、【本日定休日】と書かれたプレートが入り口に下がっていたのを見て、休みである事を思い出した。

取り合えず引き返して外にある二階へと続く階段を昇りながら再び心の中で呟くけど、将来的にレースと夫婦の関係になる以上そういう思い込みは良くないと思うし、お互いの長所と短所を理解した上で足りない部分は補い合わなきゃいけない筈。

そういう意味でもレースが言ってくれたように、これから先もずっと一緒にいるんだからちゃんと思いやして欲しい事を伝えられるようになりたいと思う。

じゃないとまた、色んな感情が積み重なった結果爆発してしまうだろうしそんな事何度も繰り返したくない、それが一度や二度なら彼も軽く怒る位だろうけど、繰り返し続けてしまったらそれこそ彼に愛愛想を尽かれてしまってもおかしくない。


「何だろう今日は気持ちが後ろ向きだなぁ……、こういうの良く無いから前向きにならないといけないのにどうしよう、ダリアの部屋に荷物を置いたら久しぶりにマローネさんのとこに相談に行こうかなって、あれ?」


 二階の玄関前に紫色の髪をして同じ色の瞳をした耳の長い少女が思い悩んだような顔をして扉を見つめている。

もしかして下の診療所が閉まっていたから、直接診て貰おうと尋ねに来た人だろうか。

そうなら今治癒術が出来る人がいないから診てあげる事は出来ないし、かといってそのまま帰す訳にも行かないから、取り合えず家の中に入って貰ってレースが帰ってくるまで待って貰った方がいいかもしれない。


「あの……、もしかして患者の方ですか?」

「患者?、いえ違うけどあなたは誰?」

「……すいません、私はこの家に住んでいるダートです、あのぉあなたは?」

「私?私はフィリア、フィリア・フィリスって言うの、ここで診療所を経営している義弟のレースに会いに来たのだけれど、あなたは彼の何?」

「私ですか?、私は彼と近いうちに夫婦になる関係です」


……私がレースと近いうちに夫婦になると言ったその時だった。

何かが落ちるような音がして、何だろうとそちらに顔を向けると【マーシェンス首都スチームフォレスト銘菓:黄金カステラ】と書かれた明らかにお土産が入った袋と思われるものが落ちていた。

思わず『あの、何か落ちましたよ?』と口に出してしまったけど、彼女からは『ちょっと話したい事があるから家に入れて貰っていい?』と真剣な顔をして私を見るので、思わず言われた通りにしてしまうのだった。

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