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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第五章 囚われの姫と紅の槍

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第一王子として

 ダート達が解放されるとその場で横になる。

冷たい床の上に寝かせるのは良くないと思うんだけど……、


「ジラルドよ、貴公はまずは下級貴族の男爵から始めて貰うと言いたいのだが……、儂が貴族とすると言った以上は低くても上級貴族の伯爵から始めねばならぬし、ミントを娶る以上はそれくらいの地位が無ければ周囲は納得しないだろうが、それで良いな?」

「おぅ、それが良いよ」

「良かろう、ならば後日王城内で会議を行ない詳しい事を決める故、しばし城内にて滞在する事を許そう、場所はそうだなミントよ、お主と同じ部屋で構わんな?」

「ちょっと、何でそうなるん!?」

「既に同棲しておるのだろう?それに婚約している以上は同室でも不都合はあるまいて、何かあったとしても儂が許そうではないか、そうすればこの国の貴族も文句は言えぬからな……、という事で、だ儂はそこの者達と話があるからお主らは部屋に行って休んでおれ」

「何を話すか心配やけど、ここは言われた通りにせんとね……」


 コルクとジラルドはそのまま謁見の間を出て行くと、クラウズ王は雲で大きな腕を作り出しダート達を包み込むように持ち上げてこちらへと歩いてくる。


「さて貴公らなのだが、儂が招いた客人として城内に迎えたい気持ちがあるのだが、現在首都内で起きている騒ぎのせいで全員を滞在させる余裕が無いものでな……、代表者と護衛の者以外は城外で待機して欲しいのだが」

「それなら白髪のレースくんと、クラウズ王の腕の中で寝ている栄花騎士団副団長のカエデちゃんと俺の妹の猫の獣人族に、ゴールドアッシュの髪色の女性とプラチナ色の髪をした女の子に……、後は狼の獣人族の彼に残って貰うよー、俺はスイを連れて栄花騎士団本部に行って団長にお話しをしなきゃいけないからねー」

「六人か……、思いの外多いが何とかしようではないか」

「王様ありがとー、じゃあ銀髪の女性の方は俺が連れて行くねー、何かあったら目を覚ましたらこっちから説明しとくからー、じゃあ失礼するねー」

「……ん?まて貴公、先程この娘が栄花騎士団の副団長と言ったがそれはどういう事だ?」


 クラウズ王が呼び止める声が聞こえなかったのか、ソラとスイの姿が幻影の中に消えると雲の手の中からヒジリの姿もいつの間にか見え無くなったかと思うと謁見の間の扉がゆっくりと開いて行った。

多分、そのまま出て行ってしまったのだろう。


「なんなのだあやつは……、儂以外の者がおったら今頃大きな騒ぎになっておるぞ」

「えっと……」

「まぁ良い今は儂以外の者は全員眠らされておるみたいだからな、細かい事を気にする必要もなかろう」


 クラウズ王は残されたぼく達の方を見ると、雲の牢屋の近くにいるダリアとダートを見て複雑そうな顔をする。


「確か貴公はレースと言うのだったな、あそこにいる娘が何となく似ているように見えるのだがもしや……」

「……、ぼくの娘ですけど」

「娘という事はあちらのお嬢さんは妻という事か……、それは何とも困った事になりそうだな」

「困った事だ?レ……、父さんに娘がいて何の問題があるってんだよ」

「先の男といい、この娘といい一国の王を何だと思っておるのだ、言葉遣いがなっておらん……。まぁ良いそれよりもだ、レースがストラフィリアの王である【覇王 ヴォルフガング・ストラフィリア】の若い頃に雰囲気が似ておるし、見た目は亡き王妃【スノーホワイト・ヴォルフガング】に似ているのを見ると母親似なのだろうな」


 懐かしい姿を見るような顔をしてぼくを見るけど、いったいその人達とクラウズ王の間に何があったのだろうかと心配になる。


「王位を継ぐ前からヴォルフガングを知っておるからな、血と魔力を登録せんでも分かるものよ……、ただ娘がいるとなるとストラフィリアが荒れるかもしれんな」

「ぼくに娘がいる事がどうしてそうなるんですか?」

「そこは貴公らが滞在する部屋に向かいながら話そうでは無いか、そこの狼の獣人族の青年もいつまで獣化しているつもりなのか知らんが付いてくるが良い」


 クラウズ王は謁見の間の扉を開けるとダート達を連れて通路へと出て行く。

ぼく達もその後ろに続いて行くけど……、いったい何を話されるのかと不安になって来る。


「貴公は既にストラフィリアでは死んだ筈の人間だが、実は生きていたという事実はヴィーニ王子の行動により国中に直ぐに広がるだろう……、あの国で覇王を継げる者は一部例外を除いて男のみなのだ、そこで第一王子の生存が判明したとなると国が大きく揺れるだろう」

「それとダリアとダートがいる事がに何の繋がりがあるの?」

「ストラフィリアの国の王は血の濃さも第一とする、近親は起りはしないが遠い血の繋がりのある者同士で婚姻する事が多いのだ、余りに血が濃くなりそうになる場合のみ外の国の王族や自国の貴族を血族に取り入れるが……、それは必ず力のある者でなければならない、平民は認められないのだよ」

「……母さんが平民で、その間に出来た娘の俺がいるせいで問題が起きるっていうのかよ!」

「うむ、そうなるな、妻がいるだけなら大金を握らせる事で強引に分かれさせる事が出来るが……、娘がいるとなると既にその者は王族に連なる血族だが、国に認められはしないだろう」


……認められなかったらいったいどうなるというのか気になるけど聞いていいのだろうかと思うけど、聞いてどうなるのか分からなくて言葉にするのが難しくなる。

でも必要とあればぼくは相手がストラフィリアと言う国だろうと、仮に会った事の無い家族でもダート達を守る為に戦うと思う。

その為にもっと強くなりたいと思うのだった。

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