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治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―  作者: 物部 妖狐
第五章 囚われの姫と紅の槍

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あなたは誰の子?

ダート視点

 これから同じベッドで寝るのかと思うと緊張する。

新米冒険者の時は宿代を浮かせる為に男女複数人で一つの部屋を取り床等で寝る事とかはあったから慣れている筈なのに、彼と一緒だと思うと緊張してしまう。


「……少しくらいなら手を出してくれても良いのに」


 そう無意識に呟きながら、ベッドの上で寝息を立てて静かに眠る彼を見る。

慣れない外の国できっと普段以上に疲れたんだろうなって思うからしょうがないのかもしれないけど、こう先に寝られると寂しい。

でもこうやって無防備な姿を見られるのは私だけだと思うと思わず口角が上がってしまう。


「ちょっとくらい、私の方から悪戯してもいいよね?」


 勇気を出してベッドの中に入って彼の横に行くと、腕を両腕で抱きしめてみる。

アキラさんに鍛えて貰う事になってから体付きが良くなったなぁって思ってたけど、思っていた以上に引き締まっていて触り心地が良い。

あ、これはやばいかもしれない、つい変な想像をしてしまいそうになるけど……、レースが隣にいるからか安心して眠くなってしまう……


「……寂しい」


 私も疲れていたみたいで、気が付いたら寝てしまい朝になっていた。

……寝る前に彼の腕を抱いて寝た筈なのに隣にレースが居なくて寂しいと感じてしまう。


「だぁかぁらぁっ!おめぇが俺の父親であいつが母親として登録されたって事だよっ!」

「あぁそっか……、そうなるのか……」


 知らない人の声がしたと思ったら……、おめぇは俺の父親であいつが母親っていう不穏な言葉が聞こえた。

誰が誰の子だって……?、もしかしてレースに子供が?、彼はそろそろ二十才になるしこの世界では短命の種族達の事もあって十歳から成人らしいから……、年齢的には居てもおかしくはない。

でも、私に隠し事をしていた事が許せないから問いたださないとっ、急いでベッドから下りると早足で声がした方へ向かう。


「レース?その子、あなたの子供って言ってたけどどういうことなの?ねぇ?」 


 彼の後ろに立ってそう言うと、初めて見る女の子は顔を引きつらせてこちらをじっと見る。

それにしてもこの子のプラチナブロンドの髪色に青いリボンを結んでポニーテールにしている髪型、そして腰回りを露出している恥ずかしい服装……、いったいどこから来たのかな。

けど……、レースと雰囲気が何処となく似ている、特に瞳の色と口元の感じが……


「いつ作った子なの?どうして私に隠していたの?相手は誰……?ねぇレース?私が初めて付き合った人じゃないの?」

「ダート、ちゃんと話をしたいから落ち着こうか」

「答えてよ」

「今から話すから落ち着いてよ、ぼくが大事な事で君に嘘を付いた事がある?」

「……わかった」


 何か隠し事してるなーって感じる時はあるけど、大事な事は最近しっかりと伝える努力をしてくれてるから今は信じないと……、でも少しでも嘘があるなら許せない。

別に過去に何があってもいいし、子供が居たとしても将来私も親になる筈だし、それが多少早くなっただけだ。

彼の子供なら愛せる自信があるけど……、それは私の気持ちであってこの可愛らしい子の気持ちではない。

だからここはちゃんと話し合いをしなきゃいけない……、そこで嘘を付くような人だったら私はレースの元から去って何処かへ行ってもおかしくないと思う。


「おめぇが説明するとややこしい事になるから俺が説明するっ!……取り合えずダートは落ち着けよ、おめぇがダリア様の母親だ、まずはだな……」

「ダリア……、ダリ、ア、ダリア!?……あなたあのダリアなの!?なんでここにいるの!?それに私があなたの母親ってどういう事なの!?」

「ちゃんと説明すっから落ち着けやっ!そんなぐいぐい来られると話も出来ねぇだろうがっ!」

「……うん」

「これじゃどっちが親か分からなくなっちまうぜ、じゃあ話すけどよ……」


 話を聞いてみて納得する……、確かにそういう理由ならダリアは私の子供なんだろうけど、自分が産んだ分けじゃないのにいきなり今日からあなたがこの子の母親ですって言われるのは変な感じだ。

……でも、昨日お義母様が私とレースの遺伝子が入った別人だから気にしなくていいって言ってた記憶があるけど、冷静に考えたらそれってどう考えても私達の子だよね。

あの時は頭が混乱してたせいで正常な判断が出来なかったけど、これは……お義母様にやられた気がする。

まさか結婚する前に自分の子供を持つことになる何て……、心の準備が追い付かない。


「って事何だがよ……、ぶっちゃけて聞くぞ?お前ら俺の事子供として見れるか?」

「んー、時間を掛ければ出来るだろうから頑張っては見るけど今は何とも言えないかな、ダートは?」

「私は……わからないよ、でもダリアが望んでくれるなら頑張っては見る」

「そっか……、じゃあ今日からおめぇらの事お父様とお母様って呼ぶから宜しくなっ!」

「……そんな畏まった言い方だと、何処かの貴族と間違われそうだから変えた方がいいと私は思うよ?」


 お父様とお母様って私が元の世界に居た時に両親を呼んでいた時の言い方で、彼女がそれに引っ張られる必要はないと思う。

親という自覚はまだ無いけど、彼女は私とは違うのだから……


「じゃあ……、父さんと母さんにするわ、これから宜しくなっ!」

「うん、レース、コーちゃんとジラルドさんの事が終わって町に帰ったら、家を更に改築しないとね」

「改築?なんで……?」

「家族が増えたんだから、ダリアのお部屋が必要でしょ?取り合えず将来の事を考えて三階を作ろうね」

「三階って……、おめぇらいったい将来何人作るつもりだよ」


……何人って特に考えて無かったから思わず想像してしまい赤面してしまう。

将来の事はまだ分からないから難しくは考えられないけど……、その時に彼と決めればいいかなぁ。

そんな風に考えていると扉が『コンコン』っとノックされる。

レースが『起きてますので入って大丈夫ですよ』と応えながら立ち上がり部屋の鍵を開けると……、微かに輝いて見える青白い髪を持った猫耳の少女がドアを開けて入って来て『姫ちゃんからお話しがあるから呼んで来てって言われたの……、私に付いてくるのって、何か人増えてない……?、どうすればいいか分からないからおにぃと姫ちゃんに聞いてくるのっ!』と言って勢いよく扉を閉めて何処かへと行ってしまったのだった。

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