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石田三成異世界転生第二章(おとか外伝第二部)  作者: 水渕成分


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第二章「敵は己自身?」の陸


 「……」

 まあそうじゃろうな。わしは思った。己が面子が潰れるくらいなら、家を滅ぼした方がましと考える奴は前の世でもいた。何より己が面子が大事なのじゃろう。

 「すまぬがまた見守ってくれるか」


 「あいよ」


 「じゃが、無理はしてくれるな」


 「しないよ。あたしが死んだり、傷を負ったら、大変だものね。佐吉は」


 「なっ」

 わしは絶句した。こやつは全く。

 「そうじゃ。そうじゃ。多くは言わせるな」


 「ふふふ」

 おとかは笑いながら出て行った。ふう。


 ◇◇◇


 そして、三月(みつき)が経たんとした頃、わしはまた、おとかやヨク殿、ヒョーゴ殿、シンを集め、評定を持った。


 目の前の立つのは真剣な表情をしたサコとウタの兄妹だ。


 「で、そなたたちの願いというのは?」


 わしの問いにサコはわしの目を強く見つめ、訴え出る。

 「佐吉兄ちゃん。もうすぐ三月(みつき)が経つけど、今ヒナイの村に行っている者たちをもうしばらく置いておいてほしいんだ」


 「あたしからもお願い」

 ウタも頭を下げる。


 「うーん」

 わしは驚いた。ヒナイの村長(むらおさ)ゴンザ殿から同じような話があったが、サコとウタの兄妹からこのような話があるとは。しかし……

 「サコ。そなたも知っておるであろう。ヒナイの村のことを聞いて、他の村からも同じように砦の者を貸してほしいという話が来ている。この後は他の村に人を送り出さねばならんことは」


 「分かっている。でも……」

 口ごもりながらもサコは続ける。

 「ヒナイの村の人たちから、もっといてほしいと強く言われているんだ。もっと共に学びたいって」


 「いやそれは……」

 わしも続けて、返す。

 「そのことは最初にゴンザ殿に伝えてある筈じゃ。もっと学びたいという村人がおれば、逆にこちらに送り出してもらいたいと」


 「そうなんだけど……」

 更に口ごもるサコにヨク殿が言葉をかける。

 「ゴンザ殿が村人が(こちら)に来ることを認めないのじゃな」


 サコは頷く。何とそんなことが。いや、あり得ないことではない。前の世でも太閤殿下の商業(あきない)を重く見る施策に反感を持った者たちはいた。


 そやつらは農業(なりはひ)を重く見る土着型の内府(だいふ)(家康)に心を寄せていた。


 怖いのだ。変わることが……


 だが、ヒナイの村にだけ砦の者を長く置くことも出来ない。そして、ヒナイの村長(むらおさ)ゴンザ殿に村人が(こちら)に来ることを認めてもらうよう頼むことは出来ても、従わせることは出来ない。


 戦う力も兵糧を作り出す力も(こちら)の方がヒナイの村よりはるかに上だが、あくまで対等な同盟関係だ。


 (こちら)がヒナイの村を従属させている訳ではない。今は微妙な時期だ。今、力技でゴンザ殿を従わせても遺恨が残る。


 「では、ヒナイの村で学びたい奴は勝手に(こっち)に来ちまえば、いいのではないのか。ゴンザ殿が何を言おうが、そのまま(こっち)に住んでしまえばいいのじゃ」

 こういう過激な物言いをするのは、もちろんヒョーゴ殿しかいない。


 「いやヒョーゴ殿。それは……」

 制止にかかるヨク殿にサコがかぶせる。

 「実はそれはもう言い申した」


 「サコ。おまえ」

 さすがにヨク殿は驚く。


 「ゴンザ殿(村長)が分からんことを言い続けるようなら、(こっち)に来ちまえばいい。村人たちにそう言った」


 サコの言葉にヨク殿は慌てる。

 「そういうことを佐吉殿に断りなしに言うのではないぞ」


 「でも……」

 サコは続ける。

 「この三月(みつき)でわしらとヒナイの村人は随分心を通わせた。村も随分良くなった。でもまだ足りない。このままでは早晩立ち行かなくなる。だから……」


 ここでシンがニヤリと笑う。ふふ。分かっておるわ。そなたの見通し通りだったな。


 わしはサコに向き直った。

 「サコ。(こちら)に来たがっていた者たちに取りまとめ役はおるのか?」


 「いる。ヘイザとヨミの兄妹だ。ゴンザ殿の息子と娘なんだ」


 親子で意見が割れておるのか。これも前の世でもあった。だがまあ。取りまとめ役がおるのであれば……


 わしは全員を見回すと、声をかけた。

 「ちょっと集まってくれぬか」

 わしはシンの提案をみなに話す。


 サコとウタは複雑な表情を見せていたが、最後は頷いた。

 「思っていたことと少し違うけど、出来る限りのことではそれが一番いいかなあ」


 サコの言葉にわしとシンは安堵した。


 「受け入れてくれてありがたい。わしが今夜のうちに書状を書く故、サコとウタはヘイザとヨミに届けてくれ。既に気心は知れておるのであろう」


 「佐吉兄ちゃんには何でも分かってしまうんだな」


 「わし一人で何でも分かる訳ではない。ただ、わしには知恵を出してくれる仲間がいるということじゃよ。あ、おとか、護衛について行ってくれるか?」


 「分かった。サコはともかくウタもいるからね。守ってあげないと」


 サコとウタは書状を無事ヘイザとヨミに届けた。当然のごとくヒナイの村は揉めた。それはヒナイの村の存続と村人が砦に行かないというゴンザ殿の望みをかなえてはいた。だが……という代物だったからだ。


 それでもヒナイの村は新しい道を歩み出した。サコとおとかは折に触れ、訪ねて行って、様子を伺った。順調に進んでいる……ようだ。



 

次回第7話は7/3(土)21時に更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うーん続きが気になりますね! 村長はどう出る!?
[一言] >怖いのだ。変わることが…… 特に日本人は、変化を嫌う傾向にある気がします( ˘ω˘ )
[一言] あの村長が、まだ……要注意人物ですね。 村人と仲良くなったが……。どうなるんですかね〜。 今後が気になるところです。
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