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石田三成異世界転生第二章(おとか外伝第二部)  作者: 水渕成分


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第二章「敵は己自身?」の拾参


 「で、敵方は兵糧はどうしてる?」

 これがわしの一番聞きたかったところだ。


 「持って来ている分は前と同じところに積んでるみたい。でも、前と違って、ほとんど全部を持って来ていることでもない。結構な量を郡府(ぐんぷ)に残している」


 前回、「(こっち)」が敵方の兵糧を焼こうとしたことを知っていたか。万一、「(こっち)」に兵糧を焼かれても、郡府(ぐんぷ)に行けば兵糧がある。そう来たか。これは前と同じ手は使えないな。同じ手は。


 ◇◇◇


 (こっち)も前回に加えて三の丸が広がっているが、敵も増えた。やはり緊張感がある。心地よい緊張感とは言い難い。わしについてきてくれた者たちを守りたい。だが、守れるじゃろうか。


 そんなわしにおとかが声をかけてくれた。

 「佐吉。佐吉は一人じゃないよ。私もサコもウタもヨク殿もヒョーゴ殿もいる」


 そうか。そうだったな。いよいよとなったら皆で北に逃げればいいだけのことじゃ。「ミツナリ」は残された民を殺しはしまい。敵味方に分かれてもわかる。「ミツナリ」はそういう奴じゃ。


 改めて見回すと、「ミツナリ」め、「兵士」「文官」「村人」を各部隊にほぼ同じように割り振ったようじゃ。


 くそっ、戦意の低い「文官」や「村人」だけの部隊を組めば、そこから調略をかけるつもりだったが、お見通しか。


 おまけに「長梯子」も予め用意していやがる。前回は一度総攻撃が失敗してから用意したが、今回は初めからだ。どうやら、敵の敗残兵が知恵をつけているらしい。


 だが、舐めるなよ。(こっち)だって、新兵器はあるのだ。


 そうこうしているうちに敵が揃った翌朝にはもう総攻撃を始めおった。サコと相談して、前回のように(こっち)が攻撃してこないと高をくくっておるようなら、「突撃隊」に奇襲をかけさせるつもりじゃったが、この手も使えないか。


 (とりで)の周りじゅうの敵から鬨の声が上がる。敵の戦意は高いようだ。将としての「ミツナリ」の才は前回の将より数段優れている。認めざるを得まい。


 敵は次々外堀の空堀に「長梯子」をかける。前回のように馬鹿正直に正面口を攻めてくることはない。ただ牽制のための矢は撃ってくる。だから、こっちも正面口の守りに人を割かざるを得ない。ここも前回より手強さを感じさせる。


 それでもやられっぱなしという訳にはいかない。


 「煮えた油をかけろっ!」


 わしの命令一下、前線の兵たちは「長梯子」を伝って、突入を図る敵に次々煮えた油を浴びせた。


 油を浴びた敵兵は悲鳴を上げて、空堀の底に落ちて行く。さすがに敵が「長梯子」を伝って来るのを躊躇しだした頃、わしは次の命令を下した。


 「油が十分にかかった『長梯子』に向けて『火矢』を放てっ!」


 次々、「火矢」が放たれ、木製の「長梯子」が燃え、焼け落ちて行く。


 ははは。見たかっ! 「ミツナリ」! そちらについた村の連中は「菜種」を食糧にすることは知っていても、油にすることは知るまい。(こちら)はその「油」がたっぷり用意してあるのじゃ。


 ドーンドーン


 敵の引き太鼓が打ち鳴らされる。ふん。思ったより冷静じゃないか。無理な攻めは続けぬか。続けても戦意が落ちるだけじゃしな。


 じゃが、「ミツナリ」。貴様はこれで諦めるような男じゃないはずじゃ。


 ◇◇◇


 夜半過ぎ、敵陣でオウオウオーウと声が上がった。戦意が上がるようなことが行われたらしい。


 情報はすぐ入った。おとか率いる「遊撃隊」が調べてきてくれたのだ。


 「この戦が勝利で終わった暁には、『ミツナリ』の軍で余った兵糧とここの(とりで)で備蓄していた兵糧は全て全参加兵士に均等に分配する。受け取った兵糧を未払いの年貢に充てることも認める」

 そういったお達しが「ミツナリ」から出たそうだ。


 敵陣の戦意は否が応でも上がり、隙を見せないので、内応や攪乱を狙うのは難しいとのこと。


 わしは内心溜息を吐いた。もちろん外には出さないが。


 やるなんてもんじゃないな。脅すだけ脅して、恩賞のことなぞ全く言わなかった前回の将とはえらい違いだ。


 手強い。わしは自分の心の片隅に湧いて来た焦りを必死で潰した。


 ◇◇◇


 明朝には早くも敵の総攻撃が再開された。


 昨日との違いは「長梯子」の数が倍くらいに増えた。


 数で圧倒する気か? こちらとしては手数が多くなりきついが、昨日と同じ煮た油を浴びせる戦法でいくしかない。


 そこまで考えたわしの眼に映ったのは、「長梯子」を伝って突入しようとする兵たちの後ろに控える「弓隊」だ。



 まさか「督戦隊」か? 怖気づいて突入を嫌がる兵を射殺す気か?


 そうでないことはすぐに分かった。敵の「弓隊」の放った矢は、こちらの煮た油を浴びせようとした兵を狙って来たのだ。


 「ミツナリ」め。やりおる。これではこちらの煮た油を浴びせようとする兵は動きが取れぬ。


 それでも自らの命を捨てても、敵に油を浴びせんとする味方の兵をわしは止めた。


 「いかん。己が命を一番大切にしろっ! 油を浴びせるのは矢の飛んでない時だけでいいっ!」


 敵の数は味方の十倍だ。戦えなくなる者は極力出ないようにしなくてはならない。相討ちが堪えるのはこちらの方だ。



次回第14話は7/10(土)21時に更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 新しい策の出し合いですね。 どっちがうわまるかぁ〜。
[一言] 戦意の高い敵は厄介ですね! どうやって追い払うんだろう (。´・ω・)?
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