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石田三成異世界転生第二章(おとか外伝第二部)  作者: 水渕成分


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第二章「敵は己自身?」の拾壱


 「だけど、佐吉兄ちゃん」

 サコはさすがに真面目に言う。

 「向こうも二十人だけとなると相当の精鋭を連れて来るよね。こっちも対抗出来るので行かないと」


 「そうじゃな」

 わしも頷いた。

 「『突撃隊』の精鋭を頼む。それから、おとか」


 「うん」

 おとかは既に分かっているようだ。

 「『遊撃隊』を伏せて万一に備えとくよ。後、敵の伏兵に気付いたら、こっちの『突撃隊』に対応させる」


 「敵にも『遊撃隊』はいるのか?」


 わしの問いにおとかは(かぶり)を振った。

 「そういうのはいないみたい。ただ、護衛に凄いのはいるけどね」


 わしにもすぐ分かった。あの子狐のことを言っているのだ。


◇◇◇


 十日後、わしはいよいよ「ミツナリ」と対面することになった。


 場所は砦から少し離れた場所に「ミツナリ」が設営した陣営である。さすがに「ミツナリ」も二十人で砦に入る蛮勇は持ち合わせていなかった。わしだって砦内部は見せたくない。


 おとかと「遊撃隊」の事前調査で「ミツナリ」は本当に二十人だけで来ることが分かったので、わしも敬意を表し、二十人で対面することにした。


 もちろん、相手方も周囲に伏兵は置いていたので、こちらも対応させてもらった。


 陣幕をめくり、中に入ると……


 すぐに分かった。あいつが「ミツナリ」だ。なるほど、二十代の頃のわしに生き写しだ。


 「ミツナリ」も一瞬表情が固まった。だが、すぐに苦笑してから、真顔に戻った。やはり、ひとかどの将の風格がある。


 「『ミツナリ』だ。この郡の郡司(ぐんじ)を勤めておる」


 「佐吉でござる。ここの砦の領主をしておりまする」


 「佐吉? 佐吉と申すのか? 聞いてはいたが若いな」


 「さようでござる。齢は十四といったところでござる」


 「ミツナリ」はふんと鼻を鳴らすと、眼光鋭くこちらを見つめた。


 だが、悪いが、それで動揺するわしではない。こちらは自然体で見つめ返した。


 次の瞬間、「ミツナリ」の脇に控える小さな女児から声が飛んだ。

 「『サキチ』は郡司(ぐんじ)である『ミツナリ』の幼名だ。おまえは何者なのじゃ? 不敬ではないか。名を改めたらどうじゃ?」


 ◇◇◇


 おとかの反応も早かった。

 「『佐吉』はこの地に来る前から『佐吉』だ。そなたに言われて、名を改めるつもりはない」


 言い返すおとかに女児も反応した。

 「おまえ、(あやかし)だな。尊き者である『ミツナリ』に敬意を表さんか」


 「言ってるおまえも(あやかし)だな。相手が郡司(ぐんじ)だろうが、国守(こくしゅ)だろうが、『佐吉』は『佐吉』。名は改めん」


 おとかの言葉に興奮したのか、女児の口は大きく裂け、上あごからは二本の牙がのぞいた。陣中にどよめきが走る。


 ◇◇◇


 「『やこ』。いつもすまぬ。じゃが、今日は名を改めさせるために来たのではない。ここはわしの顔を立てて、収めてくれんか」


 「……『ミツナリ』がそう言うなら」


 「やこ」と呼ばれた女児はすぐに元の姿に戻った。おとかはふんと鼻を鳴らした。姿を変えなかっただけ、おとかの方が大人だったのじゃろう。


 「時間が惜しい。郡府(ぐんぷ)からそちあてに書状を認めてきた。中をあらためられたい」


 「ミツナリ」の言葉にわしは頷き、書状を開く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

 一 砦はこれを破却する。但し、中の田畑はそのまま残すものとする


 一 砦に住まいし者は速やかに元の村に戻る。但し、戻れる村が無い者はとどまることとする


 一 上記の二か条に関わらず、砦内で役職にあった者は郡府(ぐんぷ)に住まうものとする


 一 武具は全て納めること。盗賊及び害獣の退治は郡府(ぐんぷ)が請け負う故、安心して農のことだ

   け考えておればよい


 一 年貢及び諸役は郡内の他の村と同一とする


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 わしは小さく息を吐くと、淡々と問うた。

 「この書状の内容。受けかねると言ったら?」


 「ミツナリ」はやはり淡々と返した。

 「そのようなことはあり得ない。この国全てを見ても、この砦のようなものは他にはない。これを改めないこと。それは謀反である」


 「それでも受けかねると言ったら?」


 「惜しいが死んでもらうしかないな。わしに従えば、官人になれたかも知れぬがな」


 「ミツナリ」の護衛も、わしの護衛もその言葉と共に武器を構えた。


 じゃが、ここで小競り合いは好ましくない。下手にここから大戦(おおいくさ)に繋がると先行きが読めなくなるし、他の村人を大きく巻き込むことにもなりかねない。「ミツナリ」もそう思っている筈だ。わしは護衛に武器を下げるよう伝えた。だが……


 ◇◇◇


 「おいっ、貴様っ!」

 一歩前に出て来たのは「やこ」だ。

 「何故、『ミツナリ』の言に従わない? 郡司(ぐんじ)である『ミツナリ』がわざわざここまで足を運んでいるのだぞ。何故、従わない」


 わしもわしの護衛もあっけに取られた。なるほど、強い気配を帯びてはいる。だが、齢十(よわいとお)になるかならないかの女児が何故ここまで前に出てくる?


 だが、今回もすぐに受けて立ったのはおとかだった。

 「おまえの(あるじ)が道に外れたことをするからだ」


 やこは激昂し、更に前に出た。

 「道に外れているのは、おまえの(あるじ)の方じゃろうが。郡司(ぐんじ)の命に逆らい、こんな砦を構えおって」



次回第12話は7/8(木)21時に更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「やこ」の正体が気になるところですね。 まだ、幼さが残っていて、つい動いてしまう、と言う感じなんでしょうね〜。ミツナリ大好きっ子であるのは伝わってきますけど。
[一言] ……お? 佐吉さんがいっぱい? どうなっていくのだろう (。´・ω・)?
[一言] マジのミツナリでしたか……!? パラレルワールドのミツナリ……?
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