31.プロポーズ?
「死んでしまうって……?」
何で……?
「そうか。カナデは知らなかったな」
リッチモンドさんを見上げれば、頭を撫でられる。
「この世界の者には大なり小なり魔力があるのだ。夫婦、もしくは恋人となった者同士の魔力に差がありすぎると、交わった時に、魔力が少ない方は魔力酔いを起こしてしまう」
ま、交わるって、つまり、そういう事だよね。
「何で魔力酔いっていうのが起こるんですか??」
「うむ。粘膜の接触はお互いの魔力を交換する事とイコールだ。接触した箇所から魔力が流れていき、差があればあるほど、魔力酔いを起こしてしまう。いつも飲んでいる酒よりも、より多くの酒を飲むと酔ってしまうだろう。それと同じ事が起きるのだ」
「なるほど。じゃあ、リッチモンドさんはその魔力が普通よりも多いから、相手は魔力酔いどころじゃ済まなくて、死んでしまうと?」
その通りだ。と頷く彼は、それならばドラゴンの国でずっと、独りぼっちだった事になる。
「何千年も、ずっと独りだったんですか?」
「いや、それは違うぞカナデ」
違うの?
「確かに家族は居なかったが、わしには支えてくれる臣下も居たし、守らねばならない民達も居た。決して一人ではなかったのだよ」
そう語るリッチモンドさんの瞳は、とても穏やかな色をしていた。
「そっか……」
でもきっと、リッチモンドさんは、自分の子供が欲しかったんじゃないかな……。
子供達に接してる彼は、本当に子供が好きなんだなぁって感じるから。
「まぁ、それもこの年になれば、不要だと捨てられたがな」
ハハハッと笑うが、やっぱりさっき見せたみたいに寂しげな瞳をしてるよ。
「不要じゃないよ」
「カナデ……?」
「リッチモンドさんは不要じゃない! 私はリッチモンドさんが必要だし、この先もずーっとずーっと必要です!!」
絶対捨てたりしない!
「私のそばに、ずっと居て下さい!!」
ぎゅうっと抱きつくと、リッチモンドさんは暫く固まっていて、でも、そのうち、ククッとくぐもった笑いをもらし、抱きしめ返してくれたのだ。
「……カナデはいつもわしの欲しい言葉をくれるな」
抱き合ったまま、そう呟いたリッチモンドさんは、突然私を抱き上げ、自分の膝の上に降ろすと、もう一度抱きしめてくれた。
「カナデに初めて会った時、言ってくれた言葉に、わしはドラゴンの国に捨てられて良かったと思ったんだよ」
「え……?」
「わしを家族だと言ってくれただろう」
「はい」
頷けば、イケメンが極上の笑みを見せる。
「家族を持てないわしが、初めて家族を持てたんだ。こんな嬉しい事はない」
「そ、そっか……。ヘヘっ 私も嬉しい。……実は私も、子供が産めない体だったから」
「!? まさか、カナデも魔力が多いのか!?」
あれ? リッチモンドさん勘違いして…………いや、私の魔力1000000だったよ。多いよね!?
じゃあ、今世も子供作れないって事ぉぉぉ!!!?
「……私の魔力量、1000000あるんです……」
「なんだと!!!? わしが600000いや、いまはもっと……800000はあるか。まだまだ上がりそうだが……」
「そうなんですか! じゃあ、リッチモンドさんと私は魔力多くて子供作れない仲間ですね~」
今世も子供が産めないとか、どんな呪いだと思ったけど、リッチモンドさんが居るから寂しくないや。
「いや、カナデ……。わしらがつがえば子は出来るぞ」
「へ……?」
「わしの魔力もまだ上がっているからな。もう少し待っていてくれれば、カナデとつがえる」
つがう?? つがうって、け、結婚するって事……?
「こんなジジイでは嫌か?」
「へぅ!? いや、そんなっ あの、でもっ 私美人でもないですし、リッチモンドさんに釣り合うかなぁって!? いや、リッチモンドさんの事は大好きだし、問題があるわけじゃないですよ!? 嬉しいし!! けど、リッチモンドさんが私だと嫌かなぁとか思って……たり…………」
だんだんと語尾が小さくなっていき、最後にはかき消えた私の声に、リッチモンドさんが黙って目を閉じてしまった。
「うむ。つまりカナデを口説き落とせば、わしとつがってくれるという事だな」
何でそんな話になるの!?
「こんなジジイだが、これは頑張らねばならんな!!」
「り、リッチモンドさん?」
「カナデ、今日からわしは、この若い姿のままで居る事にしよう」
「何でですか??」
「若いお前からすれば、ジジイは恋愛対象外になるのであろう? 」
「は!?」
「だから、この姿のまま口説く事にする」
膝に乗せられたまま、そんな事言われたら……………、
そんなの、惚れちゃうでしょうがーーーーーーー!!!!!




