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私のおウチ様がチートすぎる!!  作者: トール


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21.魚を獲ろう






「カナデお母さん、これってどうやって獲るんですか?」

「池に入って、獲る?」


草むしりが終わり池を覗き込む子供達に、私もどうするかと考える。


「そういえば、虫取り網にしては大きな網が出てきたから、物置に入れておいたんだけど。あれって魚を獲る網なんじゃ……っ」



何に使うんだというような物が現れたら、一旦物置に放り込んでいるのだが、成る程。そういう事だったのかと一人納得する。


「二人とも、ミミリィちゃんと皆で魚獲ろっか!」

「「はい(うん)っ」」


双子にはミミリィちゃんを呼びに行ってもらい、私は物置へ網を取りに行く。


この物置の中には、赤ちゃん用オムツとか、ベビー用品も入ってるんだよね……。


今世こそは、これを使用する事があるといいんだけど、今のところその兆しはないよなぁ。


「お、あった! 魚用の網っ」


さて、鮭を穫って焼き鮭にするぞ!!




「あっ カナデお姉ちゃん!!」

「ミミリィちゃん」

「お魚穫るって本当!?」


池に向かっている途中ばったり出くわしたミミリィちゃんに、本当だと頷けば、ミミリィちゃんは完全にリッチモンドさんの獲ってくる巨大魚の事だと思っているようで、


「カナデお姉ちゃん、あんな大きなお魚穫るんだぁ! すごーい!!」


と目を輝かせていた。


違うからね!?

私があんな巨大魚に出会ったら、その瞬間死んでるよ。


「ミミリィちゃん、あんな巨大魚村の外にしかいないんだよ。今日穫るのは、裏の畑の奥に出来た、池にいる魚なの」

「池? 池があるの?」

「そうだよ。今日出来たの」

「すごーい!!」


このひと月で慣れたのか、ミミリィちゃんもそう簡単には驚かなくなってきた。


やっぱり子供は順応力が高いなぁ。


「───……でね、ルイとアーサーってば、呼びに来たと思ったらすぐ駆けて行っちゃうんだよ。女の子置いて行くなんて酷いよね!」


裏の畑に向かっている最中、ルイ達の行動に唇を尖らせているミミリィちゃんは、お父さん似の垂れた犬耳が可愛すぎて、怒っていてもまったく迫力がない。


「あ、もしかしたらヒューゴさんの所に行ったのかもよ」

「先生の所に?」

「魚を穫るから、ヒューゴさんにも見せたいんじゃないかなぁ。ほら、ヒューゴさんも色んな事に興味津々だし」

「そっか~! だからあんなに急いでたんだぁ。ミミリィ何も知らずに怒っちゃった……二人に謝らなきゃっ」


ミミリィちゃん良い子だねぇ。犬耳もぷるぷるして可愛いし。


「ミミリィちゃんはそのまま素直に育ってね」

「??」


そんな話をしながら池に戻ってくれば、やはり双子はヒューゴさんと一緒に待っていた。


「ルイ、アーサー、ヒューゴ先生っ」


ミミリィちゃんが3人に駆けていき、ルイとアーサーにさっき自分が怒っていた事を謝っている。

双子はミミリィちゃんが怒っていた事すら知らなかったので、自分たちこそごめんと謝り合っていてほっこりとした。


「はい。謝罪合戦はそこまで! さぁ皆、魚を穫るの手伝ってね」

「「「はーい!」」」


良いお返事です。


「女神さ……カナデ様、これが今日現れた池ですか」

「そうです。本来は川にいる魚が泳いでるみたいなんですよね」

「なるほど。とても透明度の高い池ですね……ふむ。もしかしたら地下から水が湧いているのでしょうか」

「確かに、綺麗な水ですもんね」


ヒューゴさんが池に顔を近付けまじまじと観察している。その横で、私は持ってきた網を子供達に見せ、これで魚を掬うんだよと説明する。


まずは私がやってみるね! と網を手に池を覗き込んだ。


これだけ魚がいるんだから、一匹ぐらいは穫れるはず!


「せいっ」


結構大きくて重い網だから、気合いを入れて網の先をドボンッと水の中に突っ込む。

当たり前だが、その瞬間魚が散り散りに逃げていった。


「あ……」

「魚、いなくなった」

「逃げちゃったねぇ」

「カナデお母さん、えっと……あの、そ、そんな事もありますよね」


ルイ、慰める言葉が見つからないなら何も言わなくていいからね。


「今度は、オレ、やる」


アーサーがそう言って私から網を取り上げ、自分の情けなさに肩を落とす。


私には、魔法の才能なしだけでなく、魚を穫る才能もないみたいだ。


アーサーはというと、重い網を軽々操り、先ずは鮎を掬ってみせた。


「アーサーすごいね!」


ミミリィちゃんが拍手をし、ルイは「次は僕にやらせて下さい」とワクワクしているような顔で手を差し出していた。網を渡せという事だろう。


「カナデお母さん、これ、なんて名前?」


ルイに網を渡したアーサーは、ビチビチと尾びれを動かしている鮎を手掴みで持って来ると私に見せてくれた。


「この魚は鮎っていうの。そのまま串に刺して、焼いて食べると美味しいんだよ。あ、その鮎はこのバケツに入れてね」


さっき池の水をすこし掬っておいたバケツを、アーサーの前に出すと、頷いて鮎を離す。


アーサーの手から抜け出した鮎はチャプンと音をたててバケツの中にダイブした。


「アーサーすぐに穫れたね。上手だったよ!」

「カナデお母さん、下手なだけ」

「う゛……そうだよね」

「大丈夫。オレ、カナデお母さんの分も、穫る」


アーサー、なんて頼もしい!


この日は結局、鮎が5匹と鮭が2匹という子供達に感謝の大収穫であった。



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