第52話 おいしいお酒
「この唐揚げという料理はおいしいです。ソウタさんは料理がお上手ですね」
「……ふん、料理の腕は認めよう。だがマーテルはやらん!」
マーテルの両親も満足してくれたらしい。
……父親のバーロルさんはまだあんなことを言っている。
「おおっ、このお酒は酒精が強くておいしいですね」
「ほう、ソウタ殿もいけるクチであるな。うちの里で作っている酒は蒸留という手法を使っているゆえ、里の外の酒よりも酒精が強いのでゆっくりと飲むといい」
「はい、ありがとうございます」
こちらの世界で飲んだエールもおいしかったけれど、どれも酒精がそれほど強くないお酒ばかりだった。だけどエルフの里では蒸留酒も作っているらしい。確かお酒と水の沸点の違いを利用してアルコール度数を高める技術だったかな。
料理もおいしいし、お酒もおいしいし、言うことなしだ。
「おお、すごい! 本当に空を飛んでいるぞ!」
「うわあ~とっても素敵! ノアちゃんはすごいわね!」
『あまり動くと危ないのでお気を付けください』
俺の目の前では気球に変形したノアがエルフの里のみんなを順番に乗せて空を飛んでいる。さっきのキッチンカーにも驚いていたけれど、やはり空を飛べる気球の方が驚きは強そうだな。
あまり高く飛ぶと危ないので、その場で上昇と下降をするだけである。
「ふ~む、ソウタ殿の故郷にはすごい乗り物があるものだな。先ほど見せてもらったマウンテンバイクとやらも面白い仕組みであった」
「ソウタとノアはすごいのじゃ!」
「どちらもうまくいけば再現できると思いますよ。さすがにキッチンカーは難しいと思いますが」
エルフの里の人たちは基本的に里の外の人たちと交流はないようだし、マウンテンバイクと気球の知識くらいなら教えても大丈夫だろう。火魔法が使えれば気球を作ることができるかもしれない。
キッチンカーやキャンピングカーについては俺すらも仕組みはまったくわからないからな。
「マーテルも本当に面白い友人を連れてきてくれたものじゃ。もっとソウタ殿の故郷の話を聞かせてくだされ」
「ええ、俺もこの国や皆さんのことをぜひ教えてください」
おいしい料理とおいしいお酒があるということで、いつもよりも酔ってきたようだ。マーテルはあまりお酒を飲まないようなので、誰かとじっくり飲むというのは久しい。マーテルの故郷ということもあって、久しぶりに安心して飲みあかせそうである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「うう~ん」
『おはようございます、マスター』
「おはよう、ノア」
目を覚ますと、そこには今まで見たことがない木製の天井が見えた。
そうか、昨日はエルフの里のみんなと宴会を楽しんだんだっけ。
「あいたた……やっぱり昨日は飲み過ぎたか……」
上半身を起こすと頭にズキズキとした痛みが走る。前世では何度も経験した二日酔いだ。
『大丈夫ですか、マスター?』
「ああ、少し大人しくしていれば治るよ」
こればかりは時間が経つのを待つしかない。エルフの里でしばらくはのんびり過ごさせてもらえることになったし、たまにはのんびりと過ごすのもいいだろう。
「ソウタ、ノア、起きておるか?」
「ああ、マーテル。ちょうど今起きたところだよ」
家の扉がノックされ、マーテルの声が聞こえた。
「昨日はだいぶ酒を飲んでいたようじゃからな。二日酔いによく効くお茶を持ってきたのじゃ」
「おおっ、助かるよ」
マーテルが持ってきてくれた茶色くて温かい飲み物を飲み干す。少し味は苦かったけれど、その分効果に期待するとしよう。
「まったく、皆昨日ははしゃぎすぎなのじゃ。長老や他の者も酔いつぶれておったぞ」
「ごめん、つい楽しくてさ。みんな里の外から来た俺にも普通に接してくれたし、料理やお酒もすごくおいしかったよ。ここは本当にいい里だね」
「……みなもソウタとノアのような客人が来てくれて嬉しかったのじゃろうな」
マーテルは自分の里が褒められて嬉しそうにしている。でもお世辞なしにいい村だよ。
「朝ご飯……というより、昼ご飯の準備ができておるのじゃ。今日は里を案内するつもりじゃったが、体調が悪いようならもう少しあとにしたほうがよいかのう?」
「いや、大丈夫だよ。さっきのお茶のおかげで少し体調もよくなってきたみたいだ」
「ふむ、それならよいが、無理はするでないぞ」
先ほどのお茶は早速効果があったようで、少し頭の痛みが治まってきた。今日はこの里を案内してもらえることになっているので楽しみだ。
おいしい昼食をいただき、そのあとはマーテルに里を案内してもらった。
大きな樹の前には大きくて澄んだ泉があり、とても幻想的な景色であった。他にも魔法を使って作物を収穫したり、里のいたるところにある魔道具などを見せてもらい、とても楽しむことができた。




