第49話 エルフの里
「むっ、誰だ?」
「久しいのう、ベルダ。妾じゃ、マーテルじゃ」
「ああ、マーテルか。確か20年ほど前に帰って来たばかりじゃなかったか?」
「10年ほど前じゃ。まあ、近くを通ったついでじゃな」
「………………」
畑の方へ進んでいくと、一人のエルフの青年が現れた。マーテルと同じ綺麗な金髪で長い髪、もちろん耳は長くて尖っている。年頃は10代後半でとても整った顔立ちをした美青年だ。
そしてエルフの時間感覚だけはさっぱりわからんな……。
「そっちの人族と、それはいったい……」
「妾の友人のソウタとノアじゃ」
「はじめまして、ソウタと申します」
『はじめまして、ノアと申します』
「うわっ、喋った!?」
ベルダという青年にノアと一緒に挨拶をする。俺の方はともかく、ふわふわと浮いているノアを見て驚いたような表情を浮かべるベルダさん。
マーテルとノアと事前に話したが、ノアのことはそのまま打ち明けることにした。マーテルを信頼していることは今更だし、このエルフの里は他の人族とはほとんど交流がないため、俺の秘密が外にバレることはないと聞いた。
そもそもエルフという種族自体が珍しく、場所によっては狙われたりもするらしい。エルフの里という重大な秘密を打ち明けてくれたマーテルに対しての信頼の証という意味もある。
「あ、ああ。はじめまして、ベルダだ。ええ~とソウタ殿は人族ということはわかるが、ノア殿はいったい……」
「ノアは俺の能力で、いろいろな形に変形することができる相棒なんです。ノア、マウンテンバイクに変形を頼む」
『はい、マスター』
俺がそう伝えると、ノアの身体が光り輝き、マウンテンバイクへと変形した。
「おおっ、これはすごい! 魔力を全然感じなかったぞ! 魔道具とも異なるようだし、どういう仕組みなんだ!?」
ベルダさんは目を輝かせながら、マウンテンバイクに変形したノアをあちこちから見ている。マーテルもそうだったけれど、魔力を感知できるみたいだ。魔力もなしに形を変えたノアが不思議らしい。
「詳しい説明はあとでするのじゃ。長老や父上と母上は息災かのう?」
「ああ、長老はいつものように家にいるよ。マーナさんは家にいると思うけれど、バーロルさんは狩りに出ていると思うぞ」
「うむ、元気そうならなによりじゃ」
どうやらマーナさんとバーロルさんがマーテルの両親のようだ。なんとなく親のことには触れていなかったけれど、元気そうならよかった。マーテルもほっとしている。
自虐になってしまうが、人間いつ死ぬかなど誰にもわからないものだ。……俺も前日までは元気だったんだけれどなあ。
「すごい、本当に触れられない! 姿も消せるし、形も変えられるなんてソウタ殿とノア殿はすごいな!」
俺とノアに許可を得てからベルダさんがサイコロ状態のノアに触れようとするけれど、その手は空を切る。
先ほどの畑の収穫を行っていたのはベルダさんだったようで、竜巻で収穫した野菜を置いて俺たちについて来てくれている。
「道はわかるからついて来なくてもよいのじゃがな」
「なにを言っているんだ、マーテル! せっかくの客人だぞ、精一杯もてなさなくてどうする!」
「そんなことを言って、ソウタやノアに興味があることはバレバレじゃぞ」
「うぐっ……」
「まあ久しぶりの客人をもてなそうという気持ちやこの里にいると刺激が少ないという気持ちはわかるがのう」
先ほどから久しぶりに帰ってきたマーテルではなく、目を輝かせながら俺やノアに質問をしていたから、バレバレだったが。
どうやら俺が人族だからといって、特にどうこうはないみたいだな。そして森の中を通っているとあちこちから視線が飛んでくる。この里を訪れる人が少ないというのは本当らしい。それにしてもこの里に住んでいるエルフの人たちはみんな美形で若い人ばかりだな。もしかしたらエルフはそういうチート種族なのかもしれない。
自然溢れる木々の中を通り、木造の階段を昇って大きな木の家の前へ到着する。木の上にある家はなんだか神秘的だよな。……ただ結構高いところに建ててあるからちょっと怖いぞ。エルフの人たちは魔法を使えるからいいけれど、俺はこんな高さから落ちたらイチコロだ。
「村長、失礼します。マーテルが帰ってきましたよ」
ベルダさんがドアをノックして家の中へと入る。




