第44話 ご飯
「さて、無事に米を購入できたな」
「それにしてもさすがに買い過ぎではないのか? キッチンカーの下の棚の部分が一杯じゃぞ」
「確かに少し買いすぎたかもしれない。でも米は結構保存が利くから大丈夫だよ」
『明らかにマスターのテンションはおかしかったですからね』
それくらい米を見つけた時の衝撃が大きかったのだ。まあご飯は頻繁に消費するだろうし、大丈夫だろう。
「冷蔵庫と冷凍庫にはブラックコンドルの肉ばかりだからある程度消費したいところだ」
「うむ、屋台で販売するのじゃな。前に食べた唐揚げとやらにするのかのう?」
「この街は3日ごとに屋台を借りることができるから、とりあえず商業ギルドで屋台の場所を借りたけれどどうしようかな」
キッチンカーの冷蔵庫はかなり大きなものだが、今は解体したブラックコンドルの肉でいっぱいだ。冷蔵庫に入れているとはいえ、それほど長くはもたないだろうし、冷凍庫はそこまで容量がない。この街で屋台を開いて消費するとしよう。俺たちを襲ってきた魔物とはいえ、倒した命はできるだけありがたくいただく。そして生活していくためにはお金も必要だからな。
ピーピー。
そんな話をしていると、キッチンカーの中に電子音が鳴り響く。今日は米を購入したあとはキッチンカーで保存しておくため、一度街の外へ出てノアに変形してもらった。
早速購入したお米を研いでキッチンカーに付属している炊飯器でご飯を炊いているところだ。お店の人に聞いたところ、ご飯の炊き方は元の世界と同じらしい。
「ほう、よい香りじゃな」
「ああ。炊き立てのご飯の香りは最高だよな!」
炊飯器の蓋を開けると懐かしき炊き立てのご飯の香りがキッチンカーの中に広がっていく。精米が元の世界よりも荒いのか、そこまで真っ白というわけではないけれど、それでもおいしそうなご飯だ。
炊飯器がキッチンカーに常備されているのもありがたいな。鍋で炊くと地味に大変なんだよ。
「ご飯に合う料理だとなんだろうな……。いや、むしろここはご飯が主役のあれでいこう」
「ソウタがそこまで楽しみにしている米を使った料理は楽しみなのじゃ」
「よし、完成だ。これが俺の世界での焼き飯だよ。チャーハンとも言う料理だ」
「ほう、先ほどの屋台の焼き飯とはだいぶ違う料理じゃな」
『どちらもご飯を焼いた料理ですが、マスターの料理は様々な具材が入っておりますね』
「野菜と卵とせっかくだからブラックコンドルの肉をたっぷりと入れてみたよ」
焼き飯とチャーハンはほぼ同じだけれど、西日本が焼き飯で東日本はチャーハンと呼ぶことが多いんだっけ。あるいは溶き卵を入れるタイミングでも違うんだっけ。
一応ご飯があるということで卵も購入しておいたが、さすがにこちらの世界の卵を生で食べる勇気は俺にないから、ちゃんと火は通して食べる。日本の生卵はしっかりと管理されているからこそ安全に食べられるのだ。
「うおっ、これはうまいな! ブラックコンドルから出る鳥の油がご飯と絡んでたまらないぞ!」
「おおっ、屋台で食べた焼き飯とは全然違うのう! ご飯はパラパラとしていて、味はしっかりとついており、具材と一緒に食べるととんでもなくおいしいのじゃ!」
チャーハンは元の世界でもよく作っていたけれど、久しぶりに食べたのと、ブラックコンドルの肉は油が多くてご飯と合わせると本当においしい。
最初にニンニクとブラックコンドルの肉をしっかりと炒め、そこから出た油で野菜とご飯を炒めて、最後に溶き卵を投入して完成だ。ブラックコンドルの油の多い皮付近の肉を使ったのがよかったのかもしれない。お手軽な割に想像以上にうまい料理だ。
「味が付くだけでこれほどうまくなるとは驚きじゃ。お代わりを頼む!」
「ああ。俺ももう一杯食べよう。コショウや醤油、ガラスープの素なんかはご飯とよく合うからな」
塩を使ったおにぎりとかもおいしいけれど限界はあるからな。やはりご飯にはしっかりとした味付けをつけるとおいしい。あるいは白米に味の濃いおかずなんかが最適だ。
「屋台で出す料理はこれでよいのではないか?」
「ああ、俺もそう思っていたところだ。ご飯の方は予め炊いておけば、ある程度の量を確保することができるし、キッチンカーの鉄板で炒めればお手軽にできるからな」
『ブラックコンドルの肉を焼いたものを上に載せてもいいですね』
「おっ、それもいいな。細かく切った肉をチャーハンに入れて、大きく切って焼いた肉を載せて出すか」
このチャーハンの上に照り焼き風なブラックコンドルの肉を載せたらまちがいなくうまいだろうし、見た目もいい。マーテルも満足してくれているようだし、今回もハンバーガーと一緒で売れることは間違いないだろう。
明日は朝から食材を購入したりご飯を炊いて準備をして、お昼ごろから営業ができればいいところか。




