第41話 キャンピングカー
「おおっ、とっても柔らかいのじゃ!」
「うん、宿のベッドよりも柔らかいな。これならぐっすりと眠れそうだ」
マーテルは後ろにあるベッドで横になって身体を弾ませている。後ろだけでなく、ソファを組み立てるとベッドに変わるらしい。
これならキッチンカーの時とは違い、手足をしっかりと伸ばして広々と寝ることができそうだ。……前後が逆とはいえ、マーテルの隣で寝るのも少しあれだからな。
「ノア、このキャンピングカーの能力はなんなんだ?」
『エンジンを切っている間だけですが、車両の表面を硬化させるようですね。夜中に魔物に襲われても他の車両より安全に防げるようです』
「なるほど、野営するのに最適な能力というわけか。キッチンカーよりも安全に野営することができそうだな」
「それはすごいのう!」
この乗り物に能力が追加されるのもありがたい。エンジンを停車している間ということは移動をしている時は駄目で、休んでいる時だけということか。
ただキャンピングカーに定番のキッチンはついていないようだ。これはキャンピングカーとは別にキッチンカーがあるからかな。むしろキッチンがない分、スペースのあるこちらのほうがいいかもしれない。
「よし、今日はここで野営をするか」
「賛成なのじゃ!」
一応キャンピングカーを手に入れるまでは村か街の宿に泊まる予定だったこともあってここは街の近くでもあるが、思ったよりもキャンピングカーでの野営が快適そうなので野営をするとしよう。
「おお、魔法を使ってもいないのに、温かいお湯が出てくるのじゃ!」
「……出て来る時はちゃんと教えてね」
シャワーの流れる音が車内に鳴り響く。先に俺がシャワーを浴び、問題がないことを確認してからシャワーの使い方をマーテルに教えた。キッチンカーの水道の仕組みにも驚いていたけれど、シャワーはそれ以上に驚いていたな。
しかしひとつだけ問題があって、キャンピングカーのシャワーの前には着替えるための空間などはなく、扉を開けるとすぐに車内となる。そのため、お互いがシャワー室に入る時と出る時はもうひとりが運転席の方へ行くように決めた。
そしてシャワーを浴びる音もかなり聞こえてしまうんだよ。いくらマーテルのことを普段女性として意識していないとはいえ、すぐそばでシャワーを浴びている音を聞くのは童貞の俺には刺激が強すぎるぞ……。
この異世界では男女混合の冒険者パーティも普通らしいけれど、みんなすごい精神力だ。まあ、俺よりもマーテルのほうが強いから、間違いは起こりようがないがな。
「ふう~さっぱりしたのじゃ。本当にあのシャワーとやらは便利じゃのう」
「ああ、これから毎日シャワーを浴びられるのは嬉しいところだな。たぶんキッチンカーと同じで、電気や水も毎日補充されるのかな?」
『はい、日付が変わると同時に補充されるようですね』
これもありがたい能力だ。あとはトイレの中にあるトイレットペーパーも補充されてくれるのはありがたい。これであの固い草でお尻を拭くことからも解放されるな。
これで旅がこれまで以上に快適になることだろう。
「さて、それじゃあ試してみるけれど、危険がありそうだったらすぐに変形を止めてくれ」
『承知しました、マスター』
キャンピングカーの機能をいろいろと検証したあと、一応試しておきたいことがあるので、これから実験を行う。
すでに俺だけで試してみてそちらはうまくいったけれど、マーテルが一緒にいる時でも使えないとあまり意味がない。
「よし、キッチンカーに変形を頼む」
『了解です。【キッチンカー】に変形します』
ノアの声と同時にキャンピングカーが輝いていく。そして内部の形が変形していく。
『変形が完了しました』
「マーテル、大丈夫そうか?」
「うむ、壁に押し出されるような感じじゃったが、怪我などはないぞ」
「問題なさそうだな。これなら走りながらでも変形して大丈夫そうだ」
『はい、よかったです』
ノアの変形している乗り物に乗っている最中に他の乗り物に変形するとどうなるのかを試してみた。以前お試しチケットで戦車に変形してもらった時は戦車の中にそのまま入っていたけれど、マーテルがいる時にどうなるのか気になった。
ノアは大丈夫だと言っていたが念のためだな。これでもしもキッチンカーで走っている時に走行距離の限界が来てしまっても、そのまま別の乗り物に変形できることが確認できた。魔物に襲われている際は一度降りて変形できるわけではないからな。
あとはキッチンカーで料理したものをそのままキャンピングカーの中で食べられるかも確認してみるとしよう。キッチンカーはキャンピングカーと比べると棚や冷蔵庫があって狭いし、キャンピングカーの能力のおかげで安全に食べることができる。変形できる車が2つになると確認しておかなければいけないこともいろいろとあるな。




